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2025.12.09
知財ニュース
イギリス政府、動物実験を段階的に廃止する計画を発表―2030年までに犬や霊長類での薬物試験削減を目指す

英国政府が、段階的に動物実験を廃止へ向けて削減していく計画(ロードマップ)を発表した。2030年までに犬や霊長類での薬物試験の依存度を下げる方針が示されており、皮膚刺激性の可能性がある物質の動物実験は来年末までに停止される。
2027年までにマウスを使ったボトックスの強度試験の終了が期待されているほか、犬や非ヒト霊長類での薬物試験においては、2030年までに大幅な削減を達成することが目標とされている。
これまで動物は、数千年にわたって科学研究に使用されており、動物愛護団体は長年実験廃止を求めてきたものの、代替手段が不足していることから実現は困難だった。
今回の計画の発表の背景には、昨今、人体をモデル化し潜在的治療法の効果を試験できる新技術が飛躍的に進歩していることがあげられる。
例えば臓器チップやAI技術は、動物実験に代わる新たな研究手法として、研究利用が広がりつつあり実用化が進展していると言える。
臓器チップは、小さなプラスチック容器の中にヒトの臓器のミニチュア版を作成するもの。複数の研究チームが肝臓、腸、心臓、腎臓、さらには脳のモデルを開発しており、すでに研究に活用されている。
また、AI技術は、膨大なデータベースを解析し、たとえば遺伝子、タンパク質、疾患の関連性を発見するためのツールとして、研究者が積極的に利用している。
米国や欧州諸国では、すでに動物研究を規制し、科学者に複数の許可証の取得や、動物の飼育・管理に関する規則の遵守を義務づけている。動物実験で成功した薬の95%が人間では失敗するというデータもあり、新技術への期待は今後も高まっていくだろう。
ただ、規制の壁や技術がまだ完璧ではないという懸念点もあり、2030年までに動物実験を完全に廃止することは現時点では難しいとみられる。とは言え動物実験のない未来への第一歩として、今後の動きに注目だ。
Top Image : © イギリス政府


