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2021.03.04

知財ニュース

政府が日本の未来を担う研究者のため、10兆円規模の大学基金を創設

東京大学 安田講堂
引用元: https://stock.adobe.com/jp/

みなさんは「THE世界大学ランキング」における日本の大学の順位をご存知でしょうか。同ランキングは英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が世界の大学を研究の影響力や国際性などの基準で順位付けしたもの。2020年度の「THE世界大学ランキング」でトップ200にランクインしたのは、36位の東京大学と、65位の京都大学の2校のみ。2013年に政府から発表された、「今後10年で世界の大学トップ100に日本の大学を10校以上入れる」という目標には届かない結果となりました。

日本の大学の国際競争力強化が求められている一方で、若手研究者たちの置かれている環境は海外諸国と比較しても厳しく、経済的負担やキャリアパスへの不安などから、博士課程へ進む人は年々減っています。研究力を強化するためには、研究環境の改善が必要と考えられます。

このような状況の中で、日本政府は、国際競争力の低下が指摘される日本の大学の研究力を底上げするために、10兆円規模の大学基金を創設することを発表しました。運用益は大学の施設整備や若手人材の育成に充てられます。早ければ2021年度にも運用が開始される予定です。

大学の研究環境を抜本的に強化するため、政府は、
●学術研究・基礎研究の分野に、これまでにない手法により「人材」、「研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携基盤の整備」などへの大胆な投資を実行するために、10兆円規模の大学ファンドを創設すること
●大学ファンドによる支援に先駆ける形での15,000人規模の博士学生への経済支援を実現するための支援を行うこと

 を決定しました。
 加えて、競争的研究費の各種事務手続きの簡素化・デジタル化など事務負担を軽減させる取組を本年度内に推進し、来年度以降に実施する事業から適用できるようにすることで、研究者の皆さまの研究時間をより多く確保いたします。
(内閣府HPより)

財源は、硬貨製造のために備蓄していた金を売却することで確保するとのこと。モデルとしたハーバード大学では寄付金など自己資金で基金を運用していますが、日本では政府主導で基金を創設し、将来的には大学が自らの資金で運用することを目標としています。

新型コロナウイルスの感染拡大で財政が逼迫している中で、経済対策として研究力の抜本強化を図る取り組みが行われるという素晴らしいニュース。具体的な運用方法や大学の参画要件など、まだ明らかになっていない部分もありますが、この国内初の取り組みが日本の知財業界にとって大きな変革をもたらすことが期待されます。

内閣府HP「日本の未来を担う研究者の皆さまへ」全文はこちら

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