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2023.10.23
知財ニュース
東大発の「水エンジン」ベンチャーPale Blue、シリーズB投資ラウンドで10億円の資金調達─生産拠点を立ち上げへ
東京大学発宇宙ベンチャーの株式会社Pale Blueは2023年10月5日、シリーズBラウンド・ファーストクローズの資金調達を実施し、直近の銀行借入を含めた調達総額として約10億円の資金を調達したことを発表した。シリーズBラウンド・ファーストクローズでは、三井住友海上キャピタル、及びインキュベイトファンドを引受先とする第三者割当増資を実施。
Pale Blueは、水を推進剤として使う小型衛星向けの水蒸気式推進機(水エンジン)の開発に取り組む、東大発の宇宙ベンチャー企業。同社の推進機は、キセノンやヒドラジンといった従来の推進剤とは異なり、取り扱いが容易で、コストを抑えられるのが特徴。ソニーの人工衛星「EYE」にもPale Blue製の水エンジンが搭載されている。
また、Pale BlueのKIR-X(水を推進剤とする超小型統合推進システム)は、JAXA「革新的衛星技術実証4号機」実証テーマの一つとして採択された。
KIR-Xは、従来の水統合式エンジンと比較して性能を飛躍的に向上させた次世代型水エンジン。2024年度の打上げを予定されている「革新的衛星技術実証4号機」におけるKIR-Xの運用では、水プラズマ式および水蒸気式の2種類のエンジンを統合したエンジンの軌道上作動を行い、衛星の姿勢・軌道情報から軌道上でのエンジン性能を評価することで、「軌道上作動実績」「軌道上作動時に評価された製品スペック」という付加価値を獲得し、事業化・実用化を目指す。
KIR-Xは、水を燃料とする高性能な統合式エンジン(水プラズマ式および水蒸気式の統合型)の世界に先駆けた宇宙実証となり、世界中の超小型衛星の利用方法に革新的な変化をもたらすことが期待されている。
同社では、人工衛星向け推進機(エンジン)の研究開発を加速させるとともに、2023年3月の水蒸気式推進機(水蒸気式エンジン)の軌道上作動成功を受け、製造部門の人員を増強し生産拠点を立ち上げる予定としている。
また、同社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」(DTSU事業)の量産化実証(DMP)フェーズに採択されたことも発表。
同事業は、ディープテックスタートアップ企業への投資や事業化、社会実装を促進する事業として知られており、今回の採択により、安全無毒な水を推進剤とする小型推進機の供給能力が増強されるという。
なお、セカンドクローズは2023年秋頃を予定。同社代表取締役の浅川純氏は、「今後も技術開発を進め、宇宙空間における新たなモビリティインフラの構築に貢献する」とコメントを寄せている。
Top Image : © 株式会社 Pale Blue