News
2024.10.04
知財ニュース
新田ゼラチン株式会社、北海道大と共同研究で、コラーゲンマイクロファイバーを高速で紡糸する技術を世界に先駆け開発
ゼラチン・コラーゲンペプチドの製造販売を行う新田ゼラチン株式会社は、北海道大学との共同研究により、生体組織の骨組みとなっているコラーゲン繊維と類似したナノ構造を持つコラーゲンマイクロファイバーを高速で紡糸する技術を世界に先駆けて開発したと発表した。
また、コラーゲンマイクロファイバーの束が人工腱としての利用に十分な硬度と強度を有していることも明らかにした。
乾燥コラーゲンマイクロファイバーの拡大写真
コラーゲンは繊維となって主に組織・器官を支える骨格として機能している。同社は、コラーゲン繊維と類似したナノ構造を持つコラーゲンマイクロファイバーの開発や、その紡糸技術に関する研究を続けてきた。
今回開発された技術では、コラーゲンマイクロファイバーの紡糸技術として長年研究されてきた「湿式紡糸」(紡糸原液をノズルに通して凝固液中に送り、繊維として巻き取る紡糸法)に、材料が固まる間に引っ張って伸ばす(延伸する)樹脂成型のような工程を組み込んだ。
従来の紡糸技術では凝固過程のコラーゲンを延伸しようとすると切れてしまう問題があった。同社は、独自に開発した延伸可能なコラーゲン水溶液を、細い流路からエタノール浴へと押し出し、これにより形成される紐状コラーゲンゲルを乾燥してマイクロファイバー化する工程で、押し出し速度よりも高速で巻き取ることで、エタノール浴内での延伸を実現した。
また、従来の紡糸技術では、数十m/時の紡糸速度が上限であり、更に凝固液に含まれる薬剤を除去する必要があるため、工業的な連続生産には向いていなかった。一方、この技術では、繊維を引っ張る度合いである延伸倍率を高くすると紡糸速度も向上し、実延伸倍率が4.4倍になると200m/時に達するのだという。
未延伸時に47マイクロメートルであったコラーゲンマイクロファイバーの直径は、実延伸倍率が4.4倍になると22マイクロメートルまで縮小し、生体内コラーゲン繊維にとても似た細さになる。
コラーゲンマイクロファイバーの横断面の電子顕微鏡
延伸によって整列したコラーゲン分子がそのまま線維化するため、表層から内部までコラーゲン線維が一方向に整列する。このような整列は生体内繊維に特徴的なナノ構造であり、従来の湿式紡糸では生じなかった現象だ。
コラーゲンマイクロファイバーの縦断面の電子顕微鏡写真
弾性率と破断強度(丈夫さ)も向上し、数百本のコラーゲンマイクロファイバーを束にしたテスト人工腱では、適切な化学処理を施すことで、ヒトの膝前十字靭帯の3分の1から2分の1に達する弾性率と破断強度を示し、臨床応用にとって十分な強度を有することが分かったのだという。
コラーゲンマイクロファイバーを束化して作製したテスト人工腱の構造と弾性率及び破断強度
同社は今後、医学機関と連携した実証研究を精力的に進めるとともに、同社のコラーゲンから製造されたコラーゲンマイクロファイバーの普及と、コラーゲンマイクロファイバーを基材とした医療機器の開発を推進していくとしている。
Top Image : © 新田ゼラチン 株式会社