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2025.01.20
知財ニュース
JAL国際線で “サメ肌” 塗膜の機体を運航、世界初―JAXAらと共同で燃費向上を推進
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日本航空(JAL)は、国際線の運航にリブレット塗膜を施した機体を導入する。水の抵抗を抑える“サメ肌”を模した微細な溝構造を、ボーイング787-9型機外側の塗膜上に形成。飛行時の空気抵抗を抑えて、燃費向上と二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す。
航空機の脱炭素化に向けたプロジェクトの一環で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、塗装事業を手がけるオーウエルと共同で進めている。国際線の運航開始は、2025年1月中旬を予定。リブレット形状塗膜を施した国際線機体の運航は世界初という。
航空機のリブレット技術はこれまでも国内外で開発が進められてきた。ただ従来の技術は、貼り付け式のフィルムやデカール(転写シール)が主流で、重量の増加や落下・剥離などの課題があった。
本技術は塗膜の表面上にリブレットを形成する。サメ肌形状の凹凸をつけた水で溶けるモールド(型)をつくり、そこに塗料を塗布。塗料が乾く前に機体に圧着させ、モールドを水で洗い流す。それにより表面に溝を持つ塗装を施す。
塗膜上にリブレットを形成する「Paint-to-Paint Method」は、JAXAの研究・知見を活用しながら、オーウエルが構築した特許技術(特許第6511612号)。フィルムやデカールによるリブレットと比べ、重量の軽減や耐久性の向上が見込まれている。
JAL、JAXA、オーウエルの3社はこれまで、国内線の機体で実証実験を行ってきた。2022年7月からボーイング737-800型機の胴体下部へ部分的な施工を開始。範囲を拡げながら、耐久性や燃費効果などの検証を進めてきた。
取り組みの中で、JAXAが風洞試験や数値解析により国際線機材での空気抵抗の低減効果を確認。またオーウエルが、機体の大きい国際線に対応できるリブレット塗膜施工システムを開発したことから、国際線への導入に至った。ボーイング787-9型機では、胴体下部に加え、上部まで施工範囲を拡げた。
施行した機体の巡航時の抵抗低減率は0.24%となり、年間約119トンの燃料消費量と、約381トンのCO2排出量の削減を想定。スギの木約27,000本の年間CO2吸収量に相当する量という。3社は今後、リブレット形状塗膜の耐久性や長距離国際線での燃費向上効果の検証を進め、施工範囲の拡大を目指す。
Top Image : © 日本航空 株式会社