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2025.02.14
知財ニュース
ソフトバンクグループとOpenAIが提携、自律的に動く企業専用AIを日本から展開―合弁会社も設立
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ソフトバンクグループとOpenAIは2月3日、企業ごとにカスタマイズした最先端のAI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」の開発・販売に関するパートナーシップを結んだ。自律的にタスクを実行する多数のAIエージェントから成る各企業専用のAIを構築し、企業内のシステムやデータを統合・自動化して課題解決や効率化につなげるという。
発表は、経営者を集めて東京で開催したイベント内で実施。同日、合弁会社「SB OpenAI Japan」の設立を合意したことも明らかにした。両社が50%ずつ出資して立ち上げ、「クリスタル・インテリジェンス」を日本国内の企業向けに独占的に提供する。
AI開発はOpenAIが米国で進めるが、企業への導入時は、セキュリティ面などを考慮し日本国内のデータセンターでの運用を予定。第一弾として、ソフトバンクやLINEヤフー、ZOZOなどグループ各社に導入する。導入費用として年間30億米ドル(約4,500億円相当)をOpenAIに支払うという。
イベントにはソフトバンクグループの孫正義CEO、OpenAIのサム・アルトマンCEOらが登壇。孫CEOは、AGI(汎用人工知能)の登場は予測していた「2~3年以内」よりもさらに早まるとした上で、「AGI革命は企業から始まる」と説明。長年に渡って構築した多数のシステムが稼働しており、良質なデータが蓄積されている大企業こそAGIを活用する環境が整っているとした。
「クリスタル・インテリジェンス」では例えば、システムのバージョンアップを自動化できるという。AIが全ソースコードを読み込み、どういう意味・機能を持っているかを解析して、最新のプログラミング言語に置き換える。開発者が引退していてソースコードの解析が困難・時間がかかるケースでも、人手を一切使わずにシステム更新できる。
メール返信などのタスク自動化やコールセンターの応対代行などの利用も想定。また、会議にAIが参加して意見交換や情報提供をする、顧客との交渉に同席してアドバイスを提示するなども可能。過去のやり取りの流れも記憶し、「あの件どうなった?」といった曖昧な問いにも対応できるという。
その上で、孫CEOは「AIエージェントの次の鍵は長期記憶にある」と説明。数年前の記録や交渉経緯などの長期記録が、企業の意思決定や効率化を実現する重要な役割を果たすとして、その開発に必要な特許をすでに取得していると述べた。
イベント後半には約50分に及ぶ対談も実施。孫CEOは、1億件以上の顧客アカウントを持つグループ各社への導入の際には「数十億のAIエージェント」を作る考えがあるとした。
今年1月に米国で5,000億ドル(約77兆円)を投資すると発表した「Stargate」にも言及した。AGIの実現に向けて容量は「大きければ大きいほどいい」と話し、アルトマンCEOが強く同意。そのほか、AIに「健全な規制」が必要との共通認識も示した。
「クリスタル・インテリジェンス」の展開を担う「SB OpenAI Japan」は、ソフトバンクの連結子会社になる予定。今後、ソフトバンクからエンジニアと営業を担う社員を1,000名規模で配置する予定で、日本を皮切りに事業化を進める。その先に日本発のAIの世界展開を目指す。
Top Image : © ソフトバンクグループ 株式会社