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2025.05.02

知財ニュース

NTT、ドローンでの雷の誘発と誘導に世界で初めて成功

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日本電信電話株式会社(NTT)は、世界で初めて、ドローンを使用した雷の誘発・誘導に成功した。

電界変動を利用して、ドローンを使用した雷を誘発・誘導する実験に世界で初めて成功し、また、ドローンに雷が直撃しても誤作動・故障させない、かつ、市中のドローンに具備することができる耐雷ケージの設計手法を考案し、自然雷で実証した。

ntt 01 耐雷ドローン

落雷は人類社会に大きな被害をもたらす自然現象の1つだ。NTTグループの通信設備をはじめとする重要インフラにはさまざまな落雷対策が施されているが、今日においても落雷被害はなくなっておらず、その被害額は国内だけでも毎年1000億円から2000億円と推定されている。

従来の雷対策としては、避雷針を用いる手法が広く使われているが、避雷針によって雷を受ける範囲は限定的であり、また、風力発電の風車や屋外のイベント会場といった避雷針を設置すること自体が困難なケースも存在する。

NTTでは、近年発展著しいドローンを用い、雷雲の位置に合わせてドローンを移動させ、積極的に雷を誘発した上で、安全な場所に誘導する「ドローン誘雷」について研究を進めている。

ドローン誘雷を行うためには、雷が落ちてもドローンが飛行し続ける必要がある。さらに、雷雲下にドローンを飛行させるだけではドローンへ雷を落とすことは困難であるため、雷を積極的に誘発する必要があるのだという。

同社の耐雷ケージは、金属製のシールドで、ドローンに雷が直撃した際に流れる大電流を迂回させることでドローン本体に雷電流が流れることを防止する。また、雷電流を放射状に流すことで、大電流により発生する強磁界を互いに打ち消しあい、ドローンへの磁界影響を低下させる。

ntt 02 大電流・強磁界の耐雷化設計

さらに、耐雷ケージを具備したドローンについて、人工雷の印加試験を実施。その結果、自然落雷の98%以上をカバーし、自然落雷の平均値の5倍に相当する150kAの人工雷を印加した場合においても、ドローンに故障や誤作動が発生しないことを確認した。

雷の誘発は、飛行させたドローンと地上の間を導電性のワイヤで接続し、その地上側に高耐圧スイッチを取り付け、スイッチの操作によってドローン周囲の電界強度を変化させる手法を考案。スイッチによって最適なタイミングでドローンと地上を接続し、急激にドローン周囲の電界強度を上昇させることで、雷の誘発を促すことができる。

ntt 03 電界変動を利用した雷誘発技術の原理

2024年12月~2025年1月の期間、島根県浜田市山間部の標高900m地点で実証実験が実施され、実際の雷雲下でドローン誘雷実験を行った。フィールドミル(大気電界を測定する計測器)と呼ばれる装置を使用して地上電界を観測し、雷雲の接近に伴って付近の電界強度が高くなったタイミングで、独自の耐雷ケージを具備したドローンを飛行させ、雷の誘発を試みた。

雷雲接近時、フィールドミルで観測した電界強度が上昇したタイミングで、ワイヤをつけたドローンを高度300mまで飛行させ、地上に設置したスイッチで、ドローンと地上を導通させた。

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その結果、ワイヤに大電流が流れ、同時に周囲の電界強度が大きく変化することを確認。さらに、雷誘発の直前にはワイヤと地面の間に2000V以上の電圧が生じていることを確認しており、急激にドローン周囲の電界強度を変化させたことで、ドローンに雷が誘発された。

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また、誘雷と同時に、破裂音、ウインチ部の発光、ドローンの耐雷ケージの一部溶断を確認した。一方で、耐雷ケージを具備したドローンについては、誘雷後も安定して飛行を続けたことを確認した。

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今後は、今回実証したドローン誘雷の成功率を上げるため、高精度な発雷位置予測、および雷の発生メカニズムに関する研究開発を推進していく。さらに、誘雷した雷のエネルギーを蓄積・活用することもめざし、雷エネルギーの蓄積手法の研究開発にも取り組んでいくとしている。

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Top Image : © 日本電信電話 株式会社

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