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2024.03.06
知財ニュース
住友ゴム、次世代EVタイヤ開発でAI技術「タイヤ空力シミュレーション」を開発─タイヤ付近の空気抵抗を可視化
住友ゴム工業は、次世代EVタイヤ開発に向け、「タイヤ空力シミュレーション」と呼ばれるシミュレーション技術を開発した。
EVの燃費(電費)性能向上のためにはタイヤの転がり抵抗の低減に加えて、タイヤ周りの空気抵抗低減が非常に重要だ。同社は走行する車両のタイヤ付近の気流を、AIも活用した独自のシミュレーションにより可視化。これにより、空力性能を最適化するタイヤ形状の開発を進め、2027年発表予定の次世代EVタイヤではEVの電費性能向上にさらに貢献するタイヤの開発を目指していくのだという。
シミュレーション技術を用いてタイヤ付近の気流を可視化
タイヤのパターンおよび接地部分のタイヤ形状変化も含めて 回転するタイヤの空力を計算
EVタイヤには、航続距離を最大化するための低電費性能の向上が重要だ。これまでにも、同社は様々なアプローチでタイヤの転がり抵抗低減に取り組んできた。これに加えて、今回開発された「タイヤ空力シミュレーション」を活用し、EVタイヤの電費性能向上において重要となる空気抵抗低減にも取り組んでいくとのことだ。
今回開発した「タイヤ空力シミュレーション」は、タイヤ付近の空気抵抗を可視化するシミュレーション技術。実車両データを用いることや、タイヤのパターンを再現した上で、車重による接地部分のタイヤ形状変化も含めて結果の分析にAI技術を活用しながら、タイヤの回転による空力を計算できることが特徴だ。
さらにこれに加えて、タイヤのサイドウォールの文字や微細な凹凸がパターン同様に回転しながら変形するシミュレーション技術を開発した。
EVタイヤにおいてはサイドウォール部の凹凸を少なくし、空気抵抗を低減する事が重要だが、今回開発したシミュレーション技術を活用する事でデザインと空力性能をより高次元で両立させたタイヤ開発が可能となる。
シミュレーションの精度を確認するために実施した実車による風洞実験結果と比較して、タイヤ後方の気流の傾向やサイドウォール部の凹凸を少なくしたEVタイヤの方が標準タイヤよりも空気抵抗値が低くなり、その変化量も一致したことから有用性が確認できた。
また、AIも空気抵抗が大きい時はサイドウォール部がタイヤの空気抵抗に重要な位置であると示唆しており、本AI技術の有効性も確認ができている。この技術を活用し、空力特性の最適化によるタイヤ性能向上を図り、転がり抵抗低減と合わせてEVの電費性能向上に貢献していくとのことだ。
同社は2023年3月に、タイヤ事業における独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を発表。「TOWANOWA」はバリューチェーン上の5つのプロセスからなる「サステナブルリング」と各プロセスから収集したビッグデータを連携させる「データリング」で構成されており、二つのリング間でデータを共有・活用することで新たな価値提供を目指す。
「TOWANOWA」を通じ、ESG経営の推進を更に加速させ、2050年のカーボンニュートラルの実現と持続可能な社会の発展に貢献していくとしている。
Top Image : © 住友ゴム工業 株式会社