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2021.06.10
知財ニュース
NHK技研が「技研公開2021」をオンラインで開催─没入型VR・ARなど最新研究を紹介
NHK放送技術研究所(技研)は、最新の研究成果を一般に公開する「技研公開2021」をオンラインで開催する。1947年の初回以来、毎年開所記念日6月1日の前後に世田谷区砧で実施しているオープンハウスイベントだったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため今年は6月1日(火)~30日(水)でのオンライン開催となった。本特設サイトには、多くの動画や体験コンテンツを用意されている。
今年のテーマは「究める技術、高まる体感」。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)などの技術を活用したコンテンツで没入体験を提供する「イマーシブメディア」、あらゆる人々に様々なデバイスを活用してコンテンツを届ける「ユニバーサルサービス」、三次元映像などの未来に向けた基礎研究「フロンティアサイエンス」と、3つのカテゴリを軸に計17項目の研究開発成果を紹介する。
技研は、2030-2040年ごろのメディア環境を想定し、公共メディアNHKの研究所として目指す目標と方向性を未来ビジョンとして描き、それを「Future Vision 2030-2040」として発表。
主な見どころとしては、「空間共有コンテンツ視聴システム」「未来の没入型VRディスプレー」「メディア・アクセシビリティー技術」があげられている。
▼空間共有コンテンツ視聴システム
離れた場所にいる人と、あたかも同じ空間で同じコンテンツを視聴しているように感じられるシステム。VR・AR技術を活用したカメラ付きのヘッドマウントディスプレーを使い、文化財をテーマにしたコンテンツを離れた場所にいる2人が一緒に楽しんでいる様子を紹介する。
▼未来の没入型VRディスプレー
見ている人の前方約180度の視界を囲むフレキシブルディスプレーと、映像と音に合わせて振動する椅子を組み合わせ、コンテンツへの没入感をより体感できるVRディスプレー。オランダ・アムステルダムを走るトラムの運転席に座っているような体感を楽しむ様子を紹介する。
▼メディア・アクセシビリティー技術
あらゆる人々に多様な情報提示デバイスを活用してコンテンツを届ける技術研究。視覚や聴覚障がいがあっても情報が届けられる、情報番組のシーンに合わせて振動する触覚デバイスや、47都道府県に対応した気象情報手話CG自動生成システムなどを紹介する。
オンラインサイトには技研所長やBBCの技術責任者による将来の放送・メディア技術に関する基調講演や、技研職員による研究発表「ラボトーク」などの動画も掲載される。
技研公開はこれまで研究者・専門家や家族連れなど、毎年2万人超が来場。特に技術体験デモは行列ができる盛況ぶりで、現地を訪問してもその場で技術の全容を理解しづらい状況があった。今回、技研公開がオンライン開催となることで、期間中はいつでも誰でも最新技術にアクセスでき、世界への発信も可能となる。
背景には新型コロナウイルスの感染症対策があるが、オンラインでの技術公開は、日本の知財を世界へ伝え、技術発展を促すきっかけにもなる。今後の国内への波及・進展が期待される。
Top Image : ©NHK放送技術研究所