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2023.02.09

知財ニュース

史上初、レーザーで落雷を誘導する「レーザー誘雷技術」の実証実験が成功

FireShot Capture 278 - Fig. 2 Snapshots of the lightning event of 24 July 2021 (L2) recorde - www.nature.com

スイス・ジュネーブ大学、パリ工科大学、スイス連邦工科大学らによる欧州の共同研究チームは、落雷をレーザーによって誘導する技術の開発に成功した可能性があることを実証した。

本技術は、落雷しようとする雷をレーザーで誘導し安全な場所に落雷させるもの。毎秒1000パルスを発射する高出力レーザーによって大気中の分子を加熱・破壊することでプラズマを形成し、上向きリーダー放電(地面からの放電)を発生させることで「雷の道」を形成し、誘導するる。

FireShot Capture 281 - ダイセル様向け WSスペースリサーチ - Google スライド - docs.google.com

従来の避雷針は、コストも安く効果的なものの、実際には雷を誘引する構造になっている。そのため、建物への火災などの直接のダメージはなくても、建物内の電気設備にダメージがある場合があり、とりわけパソコンなどの精密機器へのダメージは深刻になりうる。こういった問題は避雷針では防げないため、「落雷事故ゼロ」を目指すには、そもそも落雷させない必要があった。

そこで共同研究チームはLaser Lightning Rod (LLR)プロジェクトを立ち上げ、スイス北東部のサンティス山の山頂で実験を実施。年間100回ほどの落雷に見舞われるという受雷設備付き通信塔のふもとにレーザー照射装置を設置し、2021年6月から9月にかけて観測を行った。

実験の結果、研究チームは6.3時間を超える実験で16の落雷を確認。そのうち、4つの落雷の誘導に成功したという。なお、雷撃事象は、ハイスピードカメラによって直接記録され、50メートル以上レーザー経路に追従することが示された。

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同チームによれば、今回の実験結果により、発電所、空港、発射台などの重要インフラを保護する避雷方法への道が開かれる可能性があるとのこと。今後の研究の進展に期待したい。

研究詳細はこちら

Top Image : © ジュネーブ 大学

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