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2025.02.27
知財ニュース
ダウン症の原因となる染色体を除去する手法を開発―三重大ら、iPS細胞で実証

三重大学らの研究グループは、ダウン症の人の細胞から、原因となる余分な染色体を除去する手法を開発した。研究成果は2025年2月18日、米学術誌「PNAS Nexus」に掲載された。
ダウン症は、通常23対46本ある染色体のうち、21番染色体の数が3本と1本多くなっていることが原因で発症する。現在でも、原因となる余分な染色体を取り除く治療法は確立されていない。
研究グループは、ダウン症の患者の皮膚から作り出したiPS細胞を用いて、ターゲットとなる21番染色体のゲノム配列を特定。その配列情報をもとに、iPS細胞内の余分な染色体の複数箇所を切断した。切断にあたっては、ゲノムを構成するDNA配列の特定部分のみを狙って操作できる「ゲノム編集」技術を用いた。
研究では、最大37.5%の確率で余分な染色体の消去に成功。染色体の切断数に消去率が比例すること、遺伝子修復の働きの一時的に抑制で消去率が上昇することを確認した。また、過剰な染色体が消去したiPS細胞について、細胞増殖速度や活性酸素処理能などの特性を調べたところ、正常な状態を示したという。
今回の研究では余分な染色体を100%除去できなかったこともあり、医療現場への応用には多くの課題がある。ただ、過剰な染色体の除去によるダウン症治療の可能性を示したといえる。今後の進展が期待される。
Top Image : © 国立大学法人 三重大学