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2023.12.07

知財ニュース

スマホをお腹に抱え8歩歩くだけで歩行姿勢や癖を見える化─花王、関節の動きを解析する「歩行メカニクスモニタリング技術」確立

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花王パーソナルヘルスケア研究所は、産業技術総合研究所(産総研)との共同研究により、歩行時の骨盤の3軸加速度データから、骨盤や下肢関節の動きや姿勢を可視化し、スコア化する歩行メカニクスモニタリング技術を確立した。さらに本技術を応用し、スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけで歩行の姿勢や癖を評価できる研究アプリ「Walk Coordinator」を開発した。

今回の研究成果は、第10回日本予防理学療法学会学術大会(2023年10月28~29日・北海道)にて発表された。花王は、この技術を歩行機能が低下する原因を明らかにするツールとして研究開発に応用していくとしている。

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花王は、歩きやすい紙おむつの開発や高齢者の歩行・健康支援などをめざして、10年以上にわたって歩行解析技術の開発を進めてきた。近年では、スマートフォンなどで動画を撮影するだけで歩行動作を詳細に解析できる技術を開発するなど、詳しい歩行の状態をより簡便に解析する技術の検討を行っている。

スマートフォンの多くには3軸加速度センサーが搭載されており、歩数や睡眠のデータなど、健康情報をまとめてアプリに記録することが可能だ。そこで同社は、産業技術総合研究所の研究チームと共同でスマートフォンを活用し、簡単に、かつ詳細に歩行時の姿勢や癖を視覚化する技術の開発と応用をめざした。

歩行動作には骨盤や下肢関節の動きが大きく関わることから、歩行解析にはその様子を推定することが必要。そこで、産業技術総合研究所が保有しているAIST歩行データベースの20~70代(274名)の1歩行周期データを用いて、骨盤の動きに関する加速度データから、骨盤および下肢関節角度データの推定を試みた。骨盤の動き(606変数/1名)と骨盤および下肢関節角度データ(2424変数/1名)をそれぞれ主成分分析し、歩行動作を推定するモデル(関係式)を構築した。

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この推定モデルを用いると、スマートフォンで計測された加速度データからでも、歩行時に骨盤や下肢関節が動く様子を連続的に再現し、詳細に視覚化することができたという。さらに、花王は約2万人の歩行データから作成した歩行の基準値と推定結果を照らし合わせ、歩行の姿勢を得点で評価することも可能にした。

本研究開発で得られた「歩行メカニクスモニタリング技術」を応用し、花王と産業技術総合研究所は、スマートフォン用のアプリ「Walk Coordinator」を開発。「Walk Coordinator」は、スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけという簡単な方法で、歩行速度や歩幅等の計測に加え、骨盤や股関節、膝関節、足関節等の動きの視覚化・得点化ができることが特徴だ。

花王は、このアプリを研究の場面で活用し、歩行時の姿勢や癖の悪化の原因を解析し、歩き方を改善する研究開発へ応用していくと発表している。

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Top Image : © 花王 株式会社

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