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2025.06.02

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関西学院大学、「視力回復を目的としたVRゲーム」研究開発を推進―6週間の検証で効果を確認

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「視力回復を目的としたVRゲーム」の研究が進んでいる。関西学院大学の河盛 真大氏(理工学研究科)と井村 誠孝教授が取り組んでいるもので、VRゲームを開発してその効果を検証。若年層の視力改善効果が見られたとして、情報処理学会「インタラクション2025」で発表した。

研究のターゲットにしたのは、PCやスマートフォンといったICT端末の使用で生じる「偽近視(調節緊張症)」による視力低下だ。端末の使用により、主に眼の毛様体筋肉が過度に疲労・緊張状態になることで起きる症状で、放置すると常態的な「真性近視」に進行する可能性がある。

研究では、毛様体筋肉の緊張をほぐす「遠近体操法」や「遠方凝視法」、「両眼立体視」の要素を盛り込んだVRゲームを開発。開発にはUnityを使い、VRゲームを実行するヘッドマウントディスプレイに「Meta Quest 2」を用いた。

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ゲームの基本ルールは、「時間経過で接近する複数のターゲットを、遠く離れた位置まで押し返し続ける」こと。視力検査に使われる「ランドルト環」が書かれた3つのターゲットが前に出てくるのを、コントローラーを操作して奥に押し返す。

ランドルト環の切れ目に合わせて方向入力操作ができると「Hit」「Combo」といったリアクションが得られ、ターゲットを押し返したり、スコアを獲得したりできる。

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ゲームの舞台は立体的な空間で、ターゲットは30mの距離を前後し、1つのターゲットを押し返している間に他の2つが前に進む。ゲームの中に、遠くの1点と近くの1点を交互に見る「遠近体操法」や、遠くの1点を凝視し続ける「遠方凝視法」の要素を含めており、毛様体筋肉のストレッチを促す仕組みにしている。

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開発後は、VRゲームの視力回復効果を検証するため、6週間に渡り「平均で3日に1回以上」プレイするなどのルールを定めて実験を行った。実験対象は22歳から36歳までの10名で、検証の結果、参加者全員の両眼で視力向上を確認した。中には、片目の視力が0.7から1.8に回復した人もいたという。

また、近視の程度が重い人たちは、ゲームのプレイ日数と回数が多いほど視力回復効果が高まった。逆に近視の程度が軽い場合では、類似の傾向は見られなかった。

研究チームは論文の中で、端末操作の機会が多い情報科の若年層の学生を対象にしたことで結果が得られやすかった可能性や、毛様体筋のストレッチ以外の要素が視力回復に影響した可能性があるとしている。異なる年齢層や環境に身を置く参加者なども含め、今後も継続的な実験や検証を進める予定だ。

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該当論文「視力回復を目的としたVRゲームの若年層に対する効果の検証」
「情報処理学会 インタラクション2025」該当の文献情報

Top Image : © 2025 情報処理学会

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