特許庁が選ぶ、スポーツ観戦にまつわる最新知財

現代スポーツは、知財によって進化し続けていると言っても過言ではないかもしれません。

2021年新年に開催された箱根駅伝では、区間賞受賞者全員がナイキのランニングスニーカー「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」を着用していたことも話題となりました。まさに、技術によるスポーツの進化、拡張と言えるでしょう。

とりわけ東京オリンピックの開催が予定されている2021年は、プレイヤー向けだけでなく、観戦など総合的な領域での最新技術に注目が集まりそうです。

そこで今回は特許行政年次報告書 2020 年版にコラムとして掲載された注目のスポーツ関連の知財情報を、「観戦」「計測」「体感」の3要素に分けてご紹介します。

 

第3の観戦スタイルを創造したアプリ「Player!」

1つ目は、「観戦」に関する技術です。

スポーツスタートアップ企業株式会社ookami が開発した、スポーツエンターテイメントアプリ「Player!」がスポー ツ観戦体験のスタイルに新たな風を吹き込んだ。「Player!」は、 試合のネットライブ映像を配信するわけでは ない。得点、ファインプレイ、勝敗など盛り上 がる瞬間をスマートフォンに通知し、テキスト による速報データによって実況中継する。そして、ライブチャットや絵文字スタンプで、ユーザー同士が臨場感と感動を共有できる機能も併せもつ。「いちばん鮮度がよいタイミングで、ユー ザーの方に入ってきて楽しんでもらう場」と、 ookami代表の尾形太陽氏は表現する。スタジアムに行けなくても、テレビ中継が見られなくても、スマートフォンさえあれば、スポーツ観戦の醍醐味を体験できるのだ。(省略)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000013627.html

「Player!」 に関しても、特許を1つ取得している。観戦し ながら画面にある絵文字を連打すると、他のユーザーの絵文字とぶつかり合う機能である。これにより「歓声を可視化して、盛り上がる瞬間を分かち合う」 という効果をもたらすことができる。文字情報での速報というデジタルの世界に、エモーショナルな臨場感を可視化して付加するという、尾形たちが仕掛けたユニークなスパイスであり、大事にしているところだ。今後は、「Player!」を利用してくれるチームの管理画面機能の 充実化をはじめ、数多くある試合のなかからユーザーにレコメン ドする機能など、パーソナライズできるような独自の技術を守りつ つ、優位性を高めていく計画だ。

超高臨場感通信技術「Kirari!」

2つ目は「体感」に関する技術です。

 2015年に開発が始まった「Kirari!」は、「メディア同期伝送」技術を軸に、「空間情報の収集・加工」「伝送先空間の演出・再現」 という3つの技術を組み合わせて実現する超高臨場感通信技術である。ネットワークを介してリアルタイムに競技空間の情報を丸ごと伝送し、遠隔地に高解像度でリアルな映像等を用い、空間を再現させることを目指している。(省略)

https://www.ntt.co.jp/activity/jp/innovation/kirari/

さらに、任意の音場を作り出す音響効果によって、観客の声援 を再現し、会場との一体感も演出できる。「一連の高度処理をすべてリアルタイムで完結しているところが、他社にはない我々の強み」と、同研究所、同プロジェクトの中村泰治氏は強調する。「仲間とともに試合に没入し、感動をシェアして盛り上がる。そこにリアルタイム性と通信技術をコラボさせたのです」(宮武)。NTTは、自社で開発したこれらの技術に対し、 幅広く特許を申請している。

 

ジャッジを次のステージへ「体操採点支援システム」

3つ目は「計測」に関する知財です。

 体操は、選手が繰り出すさまざまな技を、採点規則すべてを頭 に入れた審判が目視でジャッジし採点するという競技である。コンマ単位の僅差が勝敗を分けるがゆえ、ジャッジの公平・公正性がシビアに求められる。だが、その判定は非常に難しい。理由の1つは、男女全種目合わせて1,300を超える、その技の多 さにある。もう1つは、技の高度化、高速化、複雑化だ。世界のトップクラスの技は、その瞬間を人の目でとらえるには限界の域に入りつつある。熟練した審判員でさえ、曖昧になることもある。体操界にとって、採点は大きな課題であった。(省略)

https://sports-topics.jp.fujitsu.com/sports_digital_solution/gymnastics-scoring-support/

この採点支援システムを簡単に言うと、3DセンサーとAI技術 を用いて、人の動きをデジタルで数値化し、技の判定をサポートするというもの。3Dセンサーで選手の動きをあらゆる方向から測定し、手足の位置や関節の角度に至るまで、骨格の動きを正確に把握してリアルタイムで再現しデータ化する。審判は、目視に加え、画面に表示されるこれらのデータを参考に判定を下すことができる。判定の公正性はもちろん、判定までの時間短縮にもつながり、大会のスムーズな進行が実現できるのだ。

 

コラムでは最後に以下のようにまとめています。

 このプロジェクトにおいて、富士通が出願した特許数は国内外で100件以上にものぼる。それだけ多くの要素技術が詰まっているのだ。「この取り組みを通して、人の動きに関するデータを蓄積し、それをヘルステックの領域にフィードバックすれば、社会にも貢献できるのではないかと考えています」(佐々木)。新技術を開発することにより権利と膨大なデータを取得できた。 それをもとに、更なる新しい価値を生み出すことができる。

スポーツという共通のテーマを通して技術を発展させ、この先のより良い社会へ前進する。それこそが、今人類がスポーツに取り組む意義の一つなのだ、という開発者と取材者の熱い想いが伝わるコラムとなっています。

 

全文はこちらから

特許行政年次報告書2020年版

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2020/index.html

該当コラム

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2020/document/index/honpen0003.pdf