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2021.02.05
知財ニュース
長野県佐久市、自治体初のSlackを活用した移住オンラインサロン「リモート市役所」を開設
新型コロナウイルスの影響により、この1年で私たちの暮らしは大きく変わりました。そのひとつに、リモートワークの普及があります。半永久的にリモートワークを継続すると発表している企業も多く、東京都では転出者が急増するなど、都心から郊外へ移り住む流れが進んでいるそうです。
そんな中、長野県佐久市が、自治体として初となるSlackを活用した移住オンラインサロン「リモート市役所」を開設しました。移住の新しいプラットフォームとして、リアルな情報発信や市民との気軽な情報交換を行うことができます。
企画を考えたのはブルーパドルのアートディレクター・佐藤ねじさん。佐久市はこれまで、移住・定住者を増やすことを目的に、セミナーやツアーの実施、移住相談員の設置などに取り組んできましたが、コロナ禍で移住希望者が実際に佐久市に訪れることが難しい状況に。そこで、Slackという現代的なツールを活用して気軽にリアルな情報を受け取ることができ、市としても継続的に続けられる施策として「リモート市役所」が生まれたそうです。
2019年にはデジタル手続法が成立するなど、行政のデジタル化を進める動きはあるものの、現場での実行機能の不足などが課題となっていました。リモート市役所の開設には、「デジタル化が遅れている行政もできることから柔軟に対応したい」という思いがあったそうです。利用者の立場としても、問い合わせフォームの利用やツアー参加の前に気軽に情報収集できるのがうれしいですね。
リモート市役所には、「子育て課」「魅力はどこ課」「写真課」など様々なチャンネルがあります。この中でも特に素晴らしいのが「アイデア課」。このチャンネルでは佐久市や移住の課題に対してディスカッションを行い、課題解決に繋がるアイデアは実現に向けた取り組みが行われる予定です。
リモート市役所の開設には、移住・定住者を増やすことのほかに、シビックプライドの向上という目的があるそう。自治体と市民との意見交換の場に誰でも気軽にアクセスできることで、市民のまちづくりに参加する意義を見出すことに繋がりそうです。
コロナ禍では国や行政に国民の声を届けることの重要性を実感する場面が多く、自治体のあり方に関心を寄せるようになった人も多いのではないでしょうか。静岡県御殿場市は4月の緊急事態宣言の翌日にバーやスナックなど市内200店舗に市独自の補償とセットにした休業要請を行い、迅速な対応が注目を浴びました。ほかにも、千葉市による独自の「転院受入協力金」支給や、浦安市によるタブレット端末を活用した遠隔手話サービスの実施など、独自の取り組みをしている自治体が多くあります。
こうした中で、今後は「住みたい町」の条件も変わっていき、定住者を増やすためには自治体による取り組みやヴィジョンが多くの人に共有されることが重要になっていくのかもしれません。リモート市役所は、移住のプラットフォームとしてだけでなく、これからの社会で行政と市民とを繋ぐ重要な場所となりそうです。