【SXSW2021】 『EVERSTEEL』/東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」全6チームインタビュー

34年の歴史上、初の完全オンラインとなった世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Online 2021」。昨年の新型コロナウイルスによる中止を経て、今年は5日間に渡るオンライン開催によって画期的なXRコンテンツの数々を自宅から体験できるという異色の開催となりました。

東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」からも個性の異なる6つのチームが出展。それぞれのチームにオンラインにてインタビューを行い、プロジェクトの概要と技術の先に思い描く未来について聞きました。全6回に分けてお届けします。

今回ご紹介するのは「EVERSTEEL」チーム。Co-Founder/CEOの田島圭二郎さんにお話を伺いました。

●Profile
東大マテリアル工学のバックグラウンドを持つ、田島圭二郎(Co-Founder/CEO)と佐伯真(Co-Founder)の2名で創業。中高大を通じた10年以上に渡る同期でもあり、世界規模での環境課題解決を目指している。2018年に、スイス連邦工科大学にて研究開発をスタートし、これまでに本郷テックガレージや、未踏アドバンスト事業、東大IPC 1st roundといったプログラムを通じて、製品開発を行っている。

AIによる画像解析で鉄リサイクルを促進
「EVERSTEEL」

「EVERSTEEL」はAIを使用することで鉄スクラップを効率的に選別しリサイクルする技術を持つスタートアップ企業。画像解析で鉄以外の不純物を検知・除去することでリサイクルを促進し、鉄鋼製造から100%カーボンニュートラルを実現することを目指しています。

●このプロジェクトの開発の背景について教えてください
まず、この技術の活用を想定している顧客は鉄をリサイクルする鉄鋼メーカーです。鉄リサイクルの現場の課題として、毎日千トン単位で工場に運ばれてくるスクラップの中に銅や錫(すず)、アルミといった鉄以外の不純物が混入してしまっているという点があります。現状その不純物をどう取り除いているかというと、現場の作業員の方の目視による種類分けと手動による検品に頼っており、日本の鉄リサイクル率は全体生産量の25%、先進国の中でもかなり低めとなっています。EVERSTEELはその検品作業をAIの画像解析を用いることで代替しようというものです。鉄は金属の中でもっとも使用率が高いため、鉄のリサイクルが促進されるほどその製品に付随する銅やアルミなど他の素材のリサイクル率も向上します。

●この技術の特徴や強みについて教えてください
スクラップの中の不純物は質量比としては1%程度しか混じっていませんが、この1%がリサイクルの大きな妨げとなっています。EVERSTEELではAIの画像解析により、スクラップ内のエッジや丸みといった外観の形状から鉄以外の不純物を検知しています。この技術の利点は、検知するカメラの台数を増やせば増やすほど人員の削減・効率化につながるというところです。また、現場の作業員を完全に機械で代替するのではなく「人との協同」を目指すことで効率化と精度の両方を担保することができると考えています。例えば、現状4レーンのスクラップの荷下ろし場があったとして、今までは4人の作業員が現場に必要でしたが、レーン全ての画像検知を複数台カメラで同時に行い、モニターによる最終判断を人の目に任せれば、最小1人の人員で現場を進行することが可能です。こうした、人とAIによる連携の実証実験を現在も行いながら、画像解析の精度を高めています。

●今後、どのような領域のパートナーと協業したいですか?
ロボティクスの技術を持った企業です。AIにより異物を画像で検知した後、自動で除去してくれるロボットアームを実装したいです。また、鉄工場の現場でも強靭に対応するカメラがあるとより技術の耐久性が向上するかと思います。現場は粉塵が常に舞っており、雨の日でも操業が必要なので防塵・防水はもちろん、夜間でも機能する高感度と高解像度も必要です。AIの研究も重要ですが、そうしたハード面のスペックも改善の余地があると思っています。

●この技術を生かし、どのような未来をつくりたいですか?
一番の目標は、「CO2排出量ゼロ」の社会をつくることです。EVERSTEELでは主に鉄スクラップに着目していますが、リサイクル技術の向上が求められているのは鉄だけに限ったことではありません。今後、鉄以外にもこの技術が普及していき、社会に流通する全ての素材をAIで高効率にリサイクルできるようになれば、CO2の削減を世界的に促進していけるのではないかと考えています。

〈編集部コメント〉
あらゆる製品に組み込まれているがゆえに検出と分離が難しい「鉄」に着目し、そこを攻略することで付随する他の金属のリサイクルも促進させようという点が合理的かつパフォーマンスに優れていると感じました。完全な代替ではなく、熟練の作業員の目視も引き続き活かすという協同の姿勢も、未来の人と機械の働き方において理想の一つかもしれません。さらに進化して、ドローンのカメラで上空からの視点も補ったり、作業員がARグラスを用いたりするとさらなる効率化が望めそうです。

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