No.1046

2025.06.20

本物の地層を剥ぎ取り、飾るウィンドウアート

生きる地層

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概要

「生きる地層」とは、本物の地層を用いたウィンドウアートプロジェクト。実際の地層をマテリアルとして使用し、博物館で地層を保存する際に用いられる「接状剥離」という技術を取り入れて地層の表面を実際に剥ぎ取り活用。大地本来の姿を本物の地層を用いてウィンドウアートに落とし込んでいる。年月と大地の雄大さを地層を用いて表現し、使用されている本物の地層のマテリアルは、ウィンドウアートとしての役目を終えた後も廃棄されることなく、博物館の研究材料として大きな価値をもたらす。

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sub3 剥ぎ取りの現場の様子

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実現事例 実現プロジェクト

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生きる地層ーLiving Strataー

“生きる地層”は、資生堂の創業150 周年の節目を迎えた2022年に、資生堂の社名の意味を改めて考え、表現した作品。

「資生堂」という社名の由来である易経(えききょう)※の一節「至哉坤元 万物資生」(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる)という言葉に着想を得て、創業から積み重ねてきた年月と大地の雄大さを本物の地層を用いて表現している。地層を大地が生きてきた時間そのものと捉え、その生命力を表現することで、見る人の根源にある心を震わせるようなウィンドウアートにしたいと考えた。

「FRAME AWARDS」、「日本空間デザイン賞」などのアワードを受賞し、「力強いバックグラウンドがあるプロジェクト」「大地の美徳を賛美するブランドの価値観を反映している」など、審査員から背景にあるストーリーや、本物の地層で表現した大地の生命力などが高く評価されている。

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なぜできるのか?

地層の剥ぎ取り

地層に特殊な薬剤を散布し、そこにガラス繊維の布を貼りつけていく。一日待つと地層の表面が繊維に定着するので、それを一気に剥がし取る。本来は巨大で硬く、自由に操ることができない地層を、自然現象による亀裂や、表面の凹凸といった立体的な表情を保ちながら、絨毯のように薄くてしなやかな状態で採取することができる。

博物館で用いられる「原地再生」の手法

剥ぎ取った地層を、よりはっきりと層が確認できるように仕上げていく。余分に付着した土などを洗い流し、剥離しきれなかった部分を補修する。最後にコーティングを行うことで、劣化させることなく長期間保存することができる、博物館で用いられる手法を取っている。

湖成層が表現する大地の美しさ

地層には、日本有数の美しい地層として知られる那須塩原の要害公園の湖成層(湖底の堆積物を素因とする地層)を採用した。安定した環境の中で砂や泥が堆積することによってできる地層は、水平方向に延びる繊細なラインが特徴的で、美しい模様の中には亀裂や錆、生物や植物の化石といった大地の歴史がはっきりと刻まれている。

3Dスキャンを用いてのデザイン

大地の力強い美しさを表現するために、剥ぎ取った地層の土地の形状を3Dスキャンし、解析しながらデザインに落とし込んだ。時間をかけて形成された緩やかな形状や、急激な変化によるダイナミックな形状など、時の経過や雄大さを感じ取ることができる形状をピックアップし、ウィンドウディスプレイとして落とし込むためのスタディを重ねた。

相性のいい産業分野

アート・エンターテインメント

環境と人間の共生をテーマにしたインスタレーションアートに活用

教育・人材

生物多様性や地学の重要性を体感的に学べる教育プログラム

官公庁・自治体

県ごとの地層をそのまま展示したパブリックアート

資源・マテリアル

地層をデザインに活用したプロダクトやアパレルブランドの開発

住宅・不動産・建築

環境配慮型住宅や建築デザインのインスピレーションとして活用

金融・保険

切り出した地層のグラデーションの個性をNFT化

この知財の情報・出典