No.1045
大阪・関西万博
2025.06.18
大阪・関西万博のシンボルとなる世界最大の木造建築物
大屋根リング

概要
「大屋根リング」とは、大阪・関西万博会場のシンボルとなる建築物で、会場デザインプロデューサーで建築家の藤本壮介氏によりデザインされた、世界最大級の木造建築物。「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインの理念を表している。会場の主動線として円滑な交通空間であると同時に、雨風、日差し等を遮る快適な滞留空間として利用される。屋上からは会場全体をさまざまな場所から見渡すことができ、さらにリングの外に目を向ければ、瀬戸内海の自然や夕陽を浴びた光景など、海と空に囲まれた万博会場の魅力を楽しむことができる。日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)接合に、現代の工法を加えて建築されている。2025年3月4日に、世界最大の木造建築物として、ギネス世界記録に認定された。
なぜできるのか?
伝統的な貫接合に、現代の工法を加え、耐力と剛性を強化
京都・清水寺の本堂から張り出した「舞台」に見られるような伝統的な貫(ぬき)接合に、現代の工法を加え、剛性を高めている。各工区では、技術を結集させた接合部となっており、見え方も含めて違いを楽しめる。伝統的な貫工法では、柱と横架材の接合部の補強に木栓が使われるが、横架材を金物(鋼板とラグスクリューボルト)で補強している。
万博設備の再利用マッチングサービスによるサステナブルな万博運営
施設・建材・設備・備品等の需要と供給をマッチングさせるサービス「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」が開始。このサービスは、一度使ったものを再利用してもらうことを目的とした、需要と供給をマッチングさせるサービス。この取り組みで、万博閉会後に発生する建築物やアート、建材・設備、什器・備品等の資源の有効利用を図り、サステナブルな万博運営を実現する。大屋根リングも万博閉幕後、構造体を解体、再利用できるように、構造体をきれいな状態で解体する方法が検証され、組み立て前に、組み立て・解体の実大実験(モックアップ製作)を行い、「残す解体」を実践。これにより、「つくりやすく・転用しやすい工夫」を施した合理的な構造になっている。
建設現場の進捗状況をサイバー空間で可視化
大屋根リングを担当する大林組は、建設現場に同社が開発した建設現場のデジタルツインアプリ「CONNECTIA(コネクティア)」とビジュアルプロジェクト管理システム「プロミエ®」を利用。CONNECTIAで建設現場を、サイバー空間上に再現し、建設現場のデジタルツインを構築。リング大林組工区の進捗状況は、CONNECTIAとプロミエを連携することで、工事全体の進捗状況と出来高管理の状況をサイバー空間上に集約し再現している。
日本の林業、森林再生に貢献する国産材の活用
大林組工区では、国産材の活用を推進するため、柱材の約50%程度を四国産のヒノキ、梁材には福島産のスギを採用。それらの材木は、福島県双葉郡浪江町にある国内最先端の大規模集成材生産工場で、集成材に製造され、柱・梁に必要な加工が行われている。床材は、四国産のヒノキとスギを加工したCLT(直交集成板)を採用し、大林グループであるサイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)の日本最大級のCLT生産設備で製造している。
トヨタ自動車の「ジャスト・イン・タイム方式」を取り入れた建設現場と木材の劣化等を防ぐ工夫を実施
「大阪万博リング西工区」の大屋根リングを担当する竹中工務店は、効率よくものをつくる「トヨタ生産方式(ジャスト・イン・タイム方式)」の考え方を建設現場に取り入れた。この取り組みは、日本通運と協業して、実現。大阪府堺市の日本通運の大型倉庫に部品を集約し、可能な限りそこで部品を組み立てた。屋根がある全天候型の室内で安全かつ効率的に作業を行い、その部材をジャスト・イン・タイムで現場に持ち込み、世界最大級の木造建築の工事をスムーズに進めることを可能にした。また、一旦組み上げた部分の木材の劣化等を防ぐために様々な工夫として、木部材に傷をつけることにつながる足場を設置しない無足場工法を実現。次に木材は雨に弱いため、リングの主架構が出来上がると直ぐに膜屋根工事や樋工事をタイムリーに行い、雨から木材を守る配慮を行っている。
竹中新生産システムの活用
顧客ニーズに応える生産力及び建設サービスの提供をめざした建築生産変革の取組みである「竹中新生産システム」を活用。生産性向上効果の高い施工計画(最適構工法)の早期検討、特定のBIMソフトに依存しないオープンBIM方式での効果的な生産準備、現地工数の削減を目指したオフサイト化の推進(オフサイト ロジスティクス)、最先端の全自動デジタル加工技術の活用(デジタルファブリケーション)が柱となっている。着工前に実際に作業する鳶の意見を取り入れて考え出した工法を、竹中の機材センターで試験施工。具体的には施工上の安全性確保と品質確保を目的に、平地での組み立てを行った後に、クレーンで吊り上げるユニット化工法を検証した。また、木材加工工場との事前検討により、施工BIMデータを支給し、工場での加工機とデータ連携することで、間違いのない、かつスピーディーな木加工を実現。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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