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2022.06.27

知財ニュース

産総研、「静電気を肉眼で可視化」する新技術を開発

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国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)は、静電気の発生を発光で可視化する新しいセンシング技術を開発したことを発表した。

いつどこで発生するか分からない静電気の発生予測やリスク評価に役立つこの新たなモニタリング技術は、製造現場や次世代モビリティの静電気トラブルの回避に貢献するとして注目されている。

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静電気発光センシング技術は、電荷に反応して発光するセラミックス微粒子を活用し、目に見えない静電気を目視やカメラで可視化する世界初の静電気発光センシング技術。

対象物に静電気で緑色に発光するセラミックス微粒子を塗布したり、合成樹脂に添加したフィルムを接着したりすることで、静電気を目視観察できる。

現在、電子部品はさまざまな分野で使用されているが、静電気で放電やノイズが発生すると低電圧駆動の電子デバイスの誤作動を誘発することが知られている。静電気は、いつどこで発生するのか実態を把握することが困難なため、これらを感知するセンシング技術は、これらのトラブルの回避につながり必要な技術として、研究が進められていた。

これまでにもさまざまな静電気センサーが開発されてきたが、従来の静電気センサーでは、表面に凹凸のある対象物は正確には測定できない。また、移動している状態や、測定環境が変化する状態での測定には対応できなかった。

一方で発光材料は、さまざまな物理現象を観察するため、光を照射することによって発光するバイオマーカー蛍光材料、エレクトロルミネッセンス材料など、多くの研究分野で使用されてきたが、静電気によって発光する材料はなかった。

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今回、産総研では、電荷の移動で発光する既知物質の系統的調査や、発行条件の検証によって、静電気で発光するセラミックス微粒子を用いた肉眼でも静電気を観察できる可視化技術の開発に成功した。

開発により発見した静電気発光を示すセラミックス微粒子は、粒径数µmで電源を必要とせずに静電気に由来する電荷を検知して光を出力することが可能。世界最小の静電気センサーであるとも言えるこの粒子は、対象物に塗布することでセンサー機能を持たせることができるという。

今後は静電気発光のメカニズムの解明を行うとともに、さまざまな環境に柔軟に対応する静電気の可視化センシング技術の技術的基盤を確立するとし、エレクトロニクスや次世代モビリティ分野でさまざまな機器や製品を対象とした静電気発生のモニタリングおよび静電気対策の実証試験を行う予定だという。

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Top Image : ©︎ 国立研究開発法人 産業技術総合研究所

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