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2024.11.15

コラム | 地財図鑑

秋田に教育留学に行ったら、地元が見えてきた話。

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コラム「地財図鑑」は、それぞれの地域で独自に生まれ発展した有形無形の知財を“地財=地域の財産”と捉え、知財ハンターが現地に赴いて体験するシリーズです。不定期で各地の地財を紹介していきます。

当記事は知財ハンター、丑田 美奈子のnote(2024年2月掲載)より再編集されたものです。

Text:Minako Ushida(知財ハンター)


秋田県・五城目町での「教育留学」から神奈川県・逗子市に帰ってきて1週間。あれは夢だったんじゃないかと思うくらい、早くも現実に記憶が溶け始めている。

あぶない。
早く記録しておかないと何もかも溶けきってしまうので、考えたことを残しておくことにする。

いったい私たち家族が何をしていたのか、また教育留学の今後に向けた具体的なアイデアについては夫のnoteに詳しいので、興味のある方は覗いてほしい。

国内教育留学のすすめ

そしてもっと細かい3週間の日記的記録はこのnoteの最後に付けておくので、時間がある方はよかったら見て下さい(長いです…)。

1707740318373-efuxLjINoW 「よりによってこんな真冬に秋田?!」と皆に言われたけど、真冬で正解だった

五城目町は特別なのか?

留学先である「五城目小学校」は、住民や教育関係者とのワークショップを何度も重ねて、さまざまな常識・制約・場所を“越える”学校として生まれた学校。設立時の校長に学校を案内していただき、公立小学校でもここまでできるんだと感心するばかりだった。

※五目小学校の開校までの流れはこちら

そして五城目町のすごいところは、この教育留学を推進していることだけではない。

  • シェアの概念が広がる前から、茅葺の古民家を全国の“村民”とシェアして大きな話題になった「シェアビレッジ町村」

  • 廃校を活用して土着のベンチャー企業(通称ドチャベン)が有機的につながりながら地域を盛り上げる施設「BABAME BASE」

  • デジタルファブリケーションを活用して地元産木材で“現代の長屋”を作った「森山ビレッジ」

  • 500年以上続く地元の朝市をアップデート&拡張した「ごじょうめ朝市plus+」

  • コロナで廃業しかけた温泉を有志で再起させた、女子高生(当時)が代表を務める「湯の越温泉」

  • 自由度の高い子供の居場所として生まれ、朝市通りの活気作りに貢献した「ただの遊び場」

  • コミュニティライブラリーとして思い思いの棚を貸し出して交流を促す「貸し棚 おうみや」

ほかにも、老舗酒造が営む素敵なカフェ「hikobe」や、地域の交流の場になっている「いちカフェ」、絵本を扱い宿泊もできるギャラリー「ものかたり」などなど…

ハード面ばかり列挙したけれど、もちろんこれらの裏には書ききれないほどのソフト面の資源=人のつながりや無形の工夫がある。

でも。

滞在中ずっと頭を離れなかったことがひとつ。

それは
「これって五城目だからこそできたことなの?そんなに特別なことなの?」

ということ。

五城目で出会う人は本当に素敵な人ばかりで、出会って日も浅いのに「みんな大好き!」と言いたくなるほどの温かいコミュニティ。でも、疑り深く根っこがドライな私は(笑)、「いやいや、こうした有形無形の資源は実はほかの町にも転がっているはずだし、すでに芽を出していることだってたくさんあるはずなんじゃないの?!」と思ってしまったんだよね。

私たちは今回、五城目町について知りたい!学びたい!限られた期間の中でできるだけのことを吸収したい!という、かなり前のめりな気持ちで滞在した。

そんなスタンスでいたら、そりゃ町をよく理解するし(すべてを理解したとは到底思ってないけど)、リスペクトもするし、愛着もわくのも当然だ。

かたや自分の住む町はどうか?
住んでしまえば日常となり、向き合おう・関わろうとしなければ、地元とはただの景色に過ぎない。恥ずかしながら、私は3年住んだ自分の町のことを、3週間住んだ五城目よりも知らないかもしれない...と気づいたのだ。

だから、きっと“隣の芝生”が青く見えているのではない。私はただ、“自分の芝生=地元”を知らないだけなのだ。また、何かを起こしている、もしくはこれから起こすであろうキーマンやイシューに出会っていない・関わりきれていないだけなんじゃないのか。

残念ながら日本のすべての町で五城目のようなことが起き得るとは思えないけれど、少なくとも私が住む海沿いの町や、関わりのあるいくつかの街にはそのポテンシャルがたっぷりあると思う。

つまり、「五城目町の素晴らしさは再現できる」というのが今の私の考えだ。

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“頼る”ことですべてが始まる

では、五城目の素晴らしさの本質は何なのだろうか?と自問すると、おそらくそれは

  • 助け合うこと

  • 応援すること

  • おもしろがること

だと思う。

だがこの「助け合う」が、私はめちゃくちゃ苦手。
助けを求められたらできるだけのことはしたい。でも、助けを求めることはしたくない。できれば誰の助けも借りず(=誰にも“迷惑”をかけず)生きていきたい。

「こんなことお願いして申し訳ないなぁ」と頻繁に思うし、貸しをつくったら早く返さねばと焦るし、忘れっぽいくせに返せていない恩は何年経っても覚えている。

そして、私のようなうまく頼れない人は現代人に(特に都会住まいの人に)多い気がする。自己責任という冷たい言葉が幅をきかせる、助けを求めづらい時代ならではの傾向かもしれない。

ところが、五城目の人たちは頼りまくる。私もその流れに乗っかって(?)滞在中はいろんな人に恐縮しながら頼っていたのだが、あるとき車で送ってもらった方にこう言われた。

「誰かが頼らないと、関係性って始まらないんですよ。」

なんてこった。
そうだったのか…。
頼ることが、人がつながり何かが起こるスタートラインになっていたのだ。ちょっとした衝撃だった。このやさしい声かけに五城目の秘密を見たような気がして。

逆に言うと私たちは、頼っていたら生まれたはずの良い変化や可能性をみすみす逃してるのかもしれないなぁ。「ちょっと頼ってみる」は、これからの自分のキーワードになりそうだ。

1707739557021-uGpDfwYfTg 頼りっぱなしだったご近所さんにカレーを振る舞った

結局、渦中の人が一番たのしい

さて、

  • 五城目の素晴らしさは再現できるはず

  • “頼ること”は何かが起こるきっかけになるかもしれない

と考えが至ったところで、私はどこに向かいたいんだろうか?

五城目に滞在中、長男が自分で先生に働きかけて、逗子と五城目のクラスをつないだオンライン交流会を開いた。
双方の担任がとても柔軟な先生で、子供たちをうまく巻き込んで準備をうながしてくれて、当日の交流会はそれはそれは盛り上がった。

でもやっぱり、一番幸せそうなのは長男だった。渦中にいる人は楽しいのだ。

1707739148229-4kBAWm5h9F 昼休みを活用した交流会は、先生や他のクラスの子供たちからも注目の的

1707739090731-cZIuqHYQnN 五城目の学年通信で紹介されたり

1707738897054-9dIMT9ydlR 逗子でも話題に

五城目で出会った人たちも、全員何かの“渦中”にいた。必要だと思ったから、それが面白そうだから、自分の手で何かを始めて、誰かと紡いで、何かを生み出して、変化させる。

それは、生きてるなーって感じ。

これまでやってきた大きな仕事もどれも有意義で楽しかったし、それなりに手触りのあるプロジェクトに取り組んでいたと思うけど、今の私は、より身近でリアルなことの渦中に入りたいようだ。

その対象は、教育とか、食とか、地域とか。
(あと、今はまだ意味も価値もなさそうなことも。)

そのために、さまざまな人たちの世界線をなるべく一次情報として体験して、化学反応が起きそうなことへの嗅覚を磨きたい。


-appendix-
滞在


◾️1/14(日)
・逗子から新幹線6時間
・犬と長旅でヒヤヒヤも、周りの人が優しくて有難い
・雪めっちゃ降ってるやん
・二駆のレンタカー不穏
・買い出しで車パンパン
・滞在先・森山ビレッジへ
https://kankei.a-iju.jp/news/p3282
・ホストの皆さんめちゃ素敵
・初日から子供同士遊んだりラップ借りたり
・まずはきりたんぽ鍋
・薪ストーブの扱いミスって一酸化炭素で死にかける

◾️1/15(月)
・この冬1番の寒さ&吹雪
・町役場で教育留学の面談
・五城目小学校初日。元校長の学校案内に感動
https://nanmoda.jp/2021/03/10991/
・子供自己紹介 スカしてた次男「楽しい。」にホッ
・イオンでかすぎ

◾️1/16(火)
・秋田ヤマキウでコワーキング快適
https://yamakiu-minamisoko.com
・中華の名店「盛」ですべりこみランチ麻婆
・教育委員会の取材受ける
・ついに車が雪に埋まる→みんなの力で押し出す
・土鍋ごはんとカレー

◾️1/17(水)
・レンタカーを四駆に変更したら雪がやむ
・ファミレスリモートするのにパソコン忘れる
・イヤホンなくして大騒ぎ→ブーツから発見
・「貸し棚おうみや」にいったら会いたかった人に一気に会えた
https://sharevillage.co/villages/oumiya/landingPage
・「ただのあそび場」で子供サル化
https://tadanoasobiba.jp
・「なべ駒」で飲み会。昼間会った人たちに偶然再会

◾️1/18(木)
・夫東京。車がないのでかすみんさん始めいろんな人にサポートいただく(本当に感謝)
・「BABAME BASE」でリモート
http://babame.net
・「いちカフェ」でランチ&トーク&お買い物
https://www.instagram.com/ichicafe.gojome?igsh=MXR0aHRydXNsNW1pdA==
・「みんなの学校」公開授業に参加。ここでもたくさんのキーマンに出会う。
https://gojome-gakko.net
・子供ピックアップして「福禄寿hikobe」でリモート
https://hikobe.fukurokuju.jp

◾️1/19(金)
・森山ビレッジで集中リモート
・スクールタクシーで子供帰る
・共同通信の取材受ける
・NHKの取材で次男がハメ外し、犬がカメラマンを舐め回す

◾️1/20(土)
・所用で一時東京へ。秋田空港のおみやげ面白い
・森美術館で同僚と展示「私たちのエコロジー」鑑賞。むーん...
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/eco/index.html
・日本橋の新年会。人口8000人の町→人口20万人の区の世界線の違い

◾️1/21(日)
・逗子で雑務
・おひとり様映画でキャロルキングのドキュメンタリー鑑賞
・ちょろっとFacebookに投稿しようと思ったらまとめるのに30分くらいかかってる

◾️1/22(月)
・二俣川でついに運転免許ゲット!
・スマホ仕事しすぎてスクリーンタイム記録更新
・空港ラウンジでビールおじさん横目に鬼パソコン
・空港おみやげ面白い、秋田犬イジられ過ぎ
・空の上で長男おすすめの小説読んでジーン
・秋田ふたたび。ガストの唐揚げうまい

◾️1/23(火)
・自宅作業
・「いちカフェ」ふたたび ガレット美味しい
・「福禄寿hikobe」に移動 コーヒーの代わりに甘酒。来春の種まきオンラインMTG
・「ハイラボ」で子供たちがウェブサイト制作WS。次男のテーマ「おならの成分」
https://hy-labo.com
・家主の東海林さんとうっしーさんと宅飲み。うっしー唐揚げはあっさりガスト越え

◾️1/24(水)
・仕事合間にコインランドリー
・町のおばあちゃん特製親子丼
・「わーくる」で宿題やる子にまじってMTG。秋田の宿題めちゃ多い。「自主学習」の功罪を思う
https://gojome.net/map_post/地域図書室わーくる/
・想定外ジョブ降ってきてワーっ!
・「シェアビレッジ」で“だまこ汁”手作り体験。半田さんが昼から準備してくださった鳥出汁と羽釜炊きのだまこが美味しすぎて感動
https://note.com/sharevillage/n/neda72c5db243

◾️1/25(木)
・再び雪どっさり
・子供たち学校帰るなりかまくら作り&そり遊び。体力無限
・森山ビレッジの3軒の家を渡り歩く子供たち。“NEO長屋”を体感
・居酒屋「小政」へ。2日連続だまこ鍋

◾️1/26(金)
・用事がてら散歩のつもりでコンビニ向かったら途中から吹雪いて脳内中島みゆき
・次男、手袋が3つに増えて帰宅するミステリー
・かまくらの入り口が雪で埋まり、再び開口する子供たちの根性
・家ごはん(鮭のホイル焼き、アボカドサラダ、土鍋ご飯)

◾️1/27(土)
行きたかったところに一気に訪れるday
・朝トランプで大貧民ボロ負け
・次男がググった「たまごの樹」ランチが美味しかった
・「m's collectables」
素敵な雑貨屋さん。合わせ布の靴下が最高の履き心地
https://www.mscollectables.com
・「すずなり」
革小物の工房&ショップ。空間も店主ご夫妻もとても素敵
https://suzunari.handcrafted.jp
・「ものかたり」
自由であたたかいアートギャラリー。五城目の“美奈子さん”についに会えた。丑田さんも美奈子さんもいる町なので、皆が私の呼び方に困っている件
https://mono-katari.jp/about/
・「三温窯」
陶器の工房とショップ。手に馴染むような器が美しくいくつか購入。ご主人が案内してくれた“登窯”の奥深さに圧巻。帰りに寄ったイオンの398円の茶碗に何を思うか
http://sanongama.main.jp/index.htm
・イオンのゲーセンで次男がフィーバー。コイン1枚→89枚
・家ごはん(豆乳鍋、長男特製納豆揚げ、プリン、台湾カステラ)

◾️1/28(日)
・熊カレーを振る舞っていただいたローガンさんの案内で丑田家と絶景森山ハイキング&そり。ソリストの称号をいただく
・「万松」で中華ランチ。唐人ちゃんぽん
・コロナで存続の危機→地元有志で立て直し高校生が(当時)社長となった伝説の温泉「湯の越温泉」で登山の疲れ癒す
https://www.yunokoshi.com
・イオンのゲーセンふたたび。58枚に減ったコインに表情曇らす次男
・家ごはん(比内地鶏鍋、じゅんさいの酢の物、卵かけご飯)
◾️1/29(月)
・遊びすぎて風邪ひいた次男、病院へ。薬もらってすぐ治る
・家で鍋焼き秋田ラーメン
・MTG三昧
・「こくらや」で教育とアートの最前線にいる柳澤さん&小熊さんと飲み会。話題が尽きず代行タクシー逃す

◾️1/30(火)
・香澄さんに昨晩の店まで送ってもらうも鍵を忘れて2往復(ごめん泣)
・滞在中に決まった大イベント、長男のクラスで五城目&逗子をオンラインでつなぐホームルーム。素晴らしい会に感動
・今日も「hikobe」でお仕事
・でかイオンで買い出し
・家で手巻き寿司

◾️1/31(水)
・「いちカフェ」行ったらみんないた
・教育留学を機に移住した東大研究員の今日子さんとランチするはずが大所帯に
(今日子さんの素敵なnoteはこちら:https://note.com/today_and_ko/n/ne08e3217dac4
・岩手から来た夫の元同僚の起業家・小川さんの手がけるロスフラワーを使ったジンが美味しい
https://lossismore.jp/project/
・バタバタ仕事
・秋田ノーザンハピネッツのバスケ戦観に行く。相手が茨城(私の故郷)で応援しにくい

◾️2/1(木)
・今日も「hikobe」ワーク
・からの「いちカフェ」ワーク
・森山ビレッジの皆に何かを振る舞おうと、子供シェフを召喚してカレー会にお誘い
・そしたらいつの間にか「カレーバトル」に変更
・3家族でカレーや餃子を持ち寄りごはん会。楽しくおしゃべり
・NHK秋田放送のニュースに森山ビレッジ利用者として登場し、行儀の悪い犬と子供が放映される

◾️2/2(金)
・今日も今日とて「hikobe」へ。昨年の水害で集まった支援米を材料にした「田んぼのカステラ」購入。ストーリーのあるお土産とはこういうこと
・学校と町役場にご挨拶。記念撮影&子供たちにはあたたかい寄せ書きも
・焼肉「せん」で乾杯

◾️2/3(土)
・森山のみんなで記念撮影。なんだか寂しいけど、またそう遠くない未来にまた来るよ
・帰り道にふたたび中華名店「盛」へ。人気すぎて料理にありつけず諦めて秋田駅へ
・レバニラのはずが駅そばになり微妙な空気に。駅そばに罪はない
・新幹線で帰路へ。わんこのご機嫌とりながら5時間かけて海の町に帰宅

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