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2024.11.07
コラム | 地財図鑑
秋谷のコミュニティで体感する、"境界"の溶かし方。
コラム「地財図鑑」は、それぞれの地域で独自に生まれ発展した有形無形の知財を“地財=地域の財産”と捉え、知財ハンターが現地に赴いて体験するシリーズです。不定期で各地の地財を紹介していきます。
コミュニティやソーシャルキャピタル等への興味がむくむく膨らんでいるこの頃。
もっとリアルにそれらの渦中に身を置いてみたいと思っていたところ、この4月からご縁をいただき、KonelとしてStapleが手がけるシェアオフィス「Soil work」にコミュニティマネージャーのお仕事をすることになった。
会社間の良き相互作用も目指しながら、KonelとStapleを行ったり来たりする毎日を過ごしている。
Text:Minako Ushida(知財ハンター)
Soil workでやっていること
“コミュニティの渦中に身を置きたかったから”飛び込んだ──と言いたいところだが、
僕が旅に出る理由はだいたい100個くらいあって…踏み出した背景はそれだけではなかったりする。
「縦の成長」から「横の成長=見える世界線の数を増やすこと」にシフトしてみたかった(詳しくはこちら)
経済合理性の外にありそうな世界では何が起きるのかを知りたかった
経済合理性の内と外をつなげるようなことをしたかった
自然と近い環境で仕事がしたかった
矛盾のない仕事(社会や未来に後ろめたさがゼロの状態)をどこまで貫けるか試したかった……
あと94個くらいほんとにありそう。「隠れコミュ障を克服したい」とかもあるし(笑)。
一人モヤモヤ考えていた頃、Soil workがこんなことを言っていると知る。
株式会社Staple が運営するSoil workは「未来への『土仕事』」をキーワードに、経済的資本の成長だけではなく、文化的や自然環境的資本の最大化を以って社会をより良くしたいと願う人々のコーポラティブコミュニティです。
日本橋などの都心拠点だけでなく、コミュニティメンバーが繋がるローカル(地方)やネイチャー拠点(海・山・川)へも展開し、「都心部からローカルやネイチャーへ」「ローカルからローカルへ」ヒトやアイデアの交換を促進します。
2023年10月。都心にほど近い秋谷(神奈川県)に、Soil work Akiya Villageは誕生しました。敷地内にはオフィス(Soil work)をはじめ、エディブルガーデンやジム、コミュニティキッチンが入る複合施設です。(公式サイトより)
って、こんなの読んだら気になるじゃないか…! 何かヒントを得られるのではと直感し、現在に至る。
Soil workでは、会員さん向けの学び・交流・共創の機会を作るイベントの企画をメインに、PRやマーケティングのサポートなども担当している。主な勤務地は、葉山の先にある横須賀市・秋谷(あきや)の「Soil work Akiya Village」。誰もが「最高の環境」と口を揃えるのもそのはず、海を見下ろす高台にあって、四季折々の植物と絶景のサンセットがついている。最高か。
こんな環境で(公式サイトより)
こんなイベントを企画運営したり
こんなことしたりしてます
コミュマネという顔を持ち始めて約半年。さまざまな職種とバックグラウンドを持つ会員さんが集まる秋谷のコミュニティには、ひとつの特徴があることがわかってきた。それは、「あらゆるものの境界が曖昧」だということ。
この曖昧さがなんだか新鮮で心地よいので、ちょっと言語化しておきたい。
10月に開催した交流イベント・Soil work FESには約120人が参加した
ライフとワークの境界を溶かす
「ワークライフバランス」。もはやちょっと古い言葉だなと感じるのは私だけではないはず。メリハリつけなきゃ、ビジネスの顔と母の顔を切り替えなきゃ、と躍起になっていた頃は今思うとちょっと辛かった(もちろん切り替えた方が良い場合もあると思うし、そこは人それぞれですが)。でも秋谷では「ワークもライフも混ぜこぜで良くない?」というスタンスの人が多いように見える。
夜中2時に起きて釣りに行ってから働く人、朝ジムで汗をかいてそのまま帰っていく人、夏休みに子供を連れてきて宿題やらせてる人(これは私もやった)、ベビーカー出社する人、1時間かけてすごい坂道を自転車出勤する人、キッチンで朝ごはん作り出す人…
夏休みの秋谷はこんな感じ
シェア“オフィス”!?…と感じるほど、皆さん自由な過ごし方をしている。子供の出入りも多くて、週に一度は誰かのお子さんに挨拶している気がする。珍しい環境に思えるけど、もともと仕事って、たとえば八百屋さんが店の2階に住んでて、親が手を離せない時は子供が店番してるみたいな、生活に接続したものだったはず。スーツ着て別人になって遠くに働きに行く父ちゃんが、何の仕事をしてるか子供は知らない、みたいな状況よりもよっぽど自然なんじゃないだろうか?
ライフとワークの関係を再構築するような秋谷のスタイルは、時代を一回りして、これからの働き方の先端を行っている気がしてならない。
サービスの提供者・受給者の関係性を溶かす
冒頭「経済合理性の外にありそうな世界では何が起きるのかを知りたい」と書いたが、この点でも秋谷は興味深い。フランスの社会学者、ピエール・ブルデューが1970年代に発表した定義によると、世の中には”Economic Capital / 経済資本” ”Social Capital / 社会関係資本” “Cultural Capital / 文化資本”という3つの資本が存在するらしい。
このうち前者2つ、「経済資本」と「社会関係資本*」が、秋谷ではじんわりと溶け合ってる感じがするのだ。
*社会関係資本:人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念 (Wikipediaより)
それを感じるエピソードをいくつか。
「イベントやるよ!」ってなったら会員さんが準備や設営・撤収を手伝ってくれたり
キッチンでたくさんおかず作ってお裾分けしたり(写真は私がやった時のもの)
みんなでキッチンシェルフをDIYしたり、
イベント当日にサプライズでこんな素敵な手作り看板やオブジェが持ち込まれたり…
イベント当日にサプライズでこんな素敵な手作り看板やオブジェが持ち込まれたり…
どれも、これはお金を介するべきなんじゃ?という意見があってもおかしくないこと。もちろん誰かに経済的負担が集中しないような配慮はしているけど、経済と同じくらい社会関係資本に価値を感じている人たちが多いからこそ、こういうことが起きるんだろうなぁと思う。
自分や周りを豊かにしていく手段や時間は、経済合理的な土俵の外にもいっぱい広がっているんだと気づかせてくれる。そして思い出すのは、今年はじめに滞在した秋田・五城目町で印象深かったこの一言。
「サービスって供給者・受給者の関係になったとたん、“助け合い”という要素が消えてしまうんだよね」
供給/受給の境界が曖昧なことがコミュニティにとっていかに大事か、まさか五城目を経て秋谷で答え合わせをすることになるとは。だから旅は楽しいんだよね。
秋谷はどこへ向かうのか
こんな風に書いていると、秋谷はユートピアなんじゃないかと思えてくるが、まだまだ進化の途中、今が100点というわけではない。細かい課題はあるし、それらひとつひとつに仮説を立てアクションをしてみて振り返る、という繰り返しこそがコミュニティマネジメントの核である気がしている(駆け出しコミュマネの体感ですが)。
ただ、「秋谷モデル」は人とロケーションと地域性の絶妙なバランスのうえで出来上がってきているはずで、そう簡単にほかの地域で再現できるものではないと思っている。でもこれからの時代、私がここで感じている“あらゆる境界が溶けたコミュニティ”の価値はどんどん高くなっていく気がしていて、ここだけでとどめておいてはもったいない。加えて、コミュニティからどんどん遠くなる都市部の人たちにこそ、その価値を体感してもらいたいが、それも放っておいてどうにかなるものではなくて…。
ではどうするか?
そこが個人的な次の問いである。試行錯誤を繰り返していったら、1年後くらいに秋谷がその答えを教えてくれる予感がする。楽しみだ。
運営メンバーのチームワークも◎ いつもありがとうございます!
Text:Minako Ushida(知財ハンター)
今回出会った地財
Soil work
「未来への『土仕事』」をキーワードに、経済的資本の成長だけではなく、文化的や自然環境的資本の最大化を以って社会をより良くしたいと願う人々のコーポラティブオフィスです。「入居者=お客様」というフルサービスのシェアオフィスではなく、「入居者=共同運営者」であり入居者同士が自治(コーポラテブ / CO-OPERATIVE)しながら繋がりを拡げている。(サイト本文より)
株式会社Staple
瀬戸田(地方)と日本橋(都市)に拠点を置き、徒歩20分圏内の手の届く「ご近所」にフォーカスしながら企画・運営・開発を重ねる「ソフトデベロッパー」。人々の目的地となるホテルや、「街のリビングルーム」となるようなさまざまな施設を通じて、地域に多様性を受け入れる土壌を育むことを目指している。
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