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2021.07.21
コラム | 特許文献を愛でる
「反重力傾斜(通称:ゼロ・グラヴィティ)」マイケル・ジャクソン
史上最も成功したエンターテイナーであり、一般的に「キング・オブ・ポップ」と称されているマイケル・ジャクソンさんだが、実は発明家としての一面を持っていることをご存知だろうか。
マイケル・ジャクソンさんの有名なダンスムーブとして、ムーンウォークの他にスムーズ・クリミナルのPVで有名になった「反重力傾斜(通称:ゼロ・グラヴィティ)」がある。背筋をピンと伸ばしたままありえない角度まで身体を傾斜させるもので、重力をものともしないその姿を見ていると、まるで宇宙空間でパフォーマンスをしているかのような錯覚に陥る。
この動きは、体を鍛えただけでは実現不可能で、しっかりと仕掛けがある。その仕掛けとは、米国特許第5255452号"Method and means for creating anti-gravity illusion"(反重力イリュージョンを作る方法と手段)だ。
見てのとおり、この発明は前方斜め45度に体を傾けるための手段・道具。靴のかかと部分にV字型の凹部があり、ここに地面から突き出たボルトの頭部をひっかけて前傾姿勢を保つという仕組みとなっている。
「なんだ、タネも仕掛けもあったのか…」とガッカリする方もいるかもしれないが、このような仕掛けがあったとしても、かかとの固定金具だけで身体を前に倒していくのはかなりの基礎体力が必要となる。特別設計の靴と、マイケル・ジャクソンさん自身の体幹の強さによって実現化された、奇跡的なイリュージョンと言えるのではないだろうか。
▲特許を取得する際のマイケルジャクソンさん直筆サイン
特許権は維持年金を支払わなければ消滅してしまう。理由は明かされていないが、マイケル・ジャクソンさんの特許権は、権利満了まで7年を残して2005年11月23日に年金未納で消滅している。同様の仕掛けを使うことは特許的に問題はないため、結婚式や宴会の余興でお困りの方は、ぜひ挑戦してみてはいかがだろうか。
Top Image : ©米国特許商標庁