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2026.01.09

ideaflow

アビームコンサルティングが挑む、100倍速で進化する事業開発

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知財図鑑では、知財×クリエイティブ×AIによるアイデア共創プラットフォーム「ideaflow(アイデアフロー)」のリリースより、特許を保有する企業や大学を対象に導入支援を行ってきた。本記事では、実際にideaflowを活用している企業の担当者にインタビューを実施。導入前の課題からUI/UXの操作感、社内の変化、新規ビジネスへの期待感などを語っていただく。

第2回に登場いただくのは、日本発・アジア発のグローバルコンサルティングファームとして知られる「アビームコンサルティング」。中でも、デジタルテクノロジービジネスユニットのdesign X architectセクターは、クライアント企業の事業創出/変革をデザインとアーキテクチャの力でを支援する“伴走者”として、常に次世代のテクノロジーやソリューションを模索してきた。彼らがideaflowを導入した目的は、自社の特許を活かす…というよりも、クライアントの知財や技術を起点に新しい事業構想を共に描くため。AIが特許情報を読み解き、数時間で何百もの発想を導き出す──そのスピードと再現性は、マンパワーに頼っていた従来の事業開発プロセスを大きく変えつつある。

次世代企業に寄り添う、デジタル変革の「総合診療医」を自負するdesign X architectセクターは、ideaflowをどのように活用しているのか。今回は、同セクターよりダイレクターの下田友嗣さん、マネージャーの宮田証さん、シニアスペシャリストの平和馬さんにお話をうかがった。

背景と課題

  • 従来の新規事業は発想力のある個人に依存するため、事業開発の再現性が低い

  • 未来を起点に発想するあまり、どの会社も似たようなアイデアに行き着く

  • 企業の強みである特許・技術情報が現場では把握されず、事業化に活かされない

実践と効果

  • アイデア創出にかかる時間が100分の1に短縮

  • 特許情報をもとに、未知の業界でも「土地勘」を共有できるようになった

  • AIが発想を民主化し、組織全体でアイデアを育てる時代へ踏み出した

自社の強みやアセットこそが、頂点にして原点

―まずは皆さんの所属チームと、担当されている業務について教えてください。

下田:私たちデジタルテクノロジービジネスユニットは、約1,000名のメンバーを擁する専門組織です。「テクノロジー・デザイン力 × ビジネスデザイン力で、社会や企業のイノベーションを実現する」というミッションのもと、クライアントの競争力強化をテクノロジーで支援しています。

デジタルテクノロジービジネスユニットは6つの事業ドメインに対して、5つのセクターに分かれており、そのひとつが我々が3名が所属するdesign X architectセクターです。

abeam dxa design X architectセクターがカバーするインダストリーとサービスライン(©ABeam Consulting)

design X architectセクターでは、アビームコンサルティングとして次の3年後・5年後を見据えたビジネスをどうつくっていくか?そのときに出てくるテクノロジーを、お客様にどう適用していくか?といったことを考えています。考えるだけではなく、実際にプロジェクトとして実行し、再現性のあるやり方やアプローチ・方法論に落とし込むところまで取り組んでいるのが特徴ですね。

―御社ではideaflowを「事業アイデア創出」に使っていただいていますが、導入前はどういったやり方でお客様をサポートされていたのでしょうか。

下田:ideaflowのような「AIを利用した事業アイデア創出・探索」を知る前は、本当にオーソドックスな方法でした。いわゆるワークショップ形式で、お客様と膝を突き合わせて、大量の付箋を使いながらアイデアを出していくという、非常にアナログな進め方です。お客様が持っているアセットや、その業界内でのポジション・戦略を理解しながら、お客様の「ありたい姿」「目指すべき姿」は何か?や、そのためにはどんな新規事業が必要で、既存事業をどうアップグレード/改善すべきか……といったことを、徹底的に議論していましたね。ただし、どうしても個人の発想力に依存してしまう部分があり、再現性が低いことは課題に感じていました。

―そんな状況の中で、最初にideaflowを知って「面白そう」「興味がある」と思ったポイントはどこだったのでしょうか?

下田:非常にエキサイティングな出会いでした。以前とあるイベントに参加した際に、御社の荻野(靖洋:Konel・知財図鑑CTO)さんのプレゼンテーションを拝見しまして。その中で「知財からこんな面白いものができました」とお話されていたのが、今のideaflowにつながるコンセプトだったんですね。そこですごくピンときたんです。新しい事業をつくるにしても、既存事業を変革するにしても、最初の起点になるのは、市場を裏側から見たり、違う視点から見ている人の“気づき”だと思うんですよ。それがないと、本当に意味のある案ってなかなか出てこない。

下田:当時の事業開発の潮流としては、5年後・10年後・30年後の未来を想像して、そこからバックキャストで考えるというのが主流でした。ただ、その方法だと自社のアセットをあまり重視しない事業開発が多くなっていて。「30年後の未来はこうだから、僕らはこんなことをしなきゃいけないよね」と考えると同時に、それが自社の本業や強みと全く関係ないものになってしまう。その結果として、どの会社も似たようなアイデアに行き着いてしまう…ということがよく起きていました。そういった状況を見ていた私は、「頂点にして原点」ではないですけど、自社の強みやポジション、持っているアセット(=知財)をどう活用するか?が事業開発の本質だと思っていました。そこでideaflowと出会ったわけです。

―自社の持つ武器や強みが見えにくくなっていたんですね。

下田:そうですね。大きな会社になればなるほど、すべての自社アセットを1人の人間が把握することは不可能です。また、把握している深度も担当者によってバラバラですし、それを「どうビジネスに変えるか?」という思考も、人によってロックされている状態。自社アセットをフル活用したいのに、それを活用する環境が整ってないなと感じていたときに、知財図鑑さんのプレゼンを見て、「ここに答えがあるじゃないか!」と思ったんです。

―ありがとうございます。我々も企業さんと新規事業を考えるときに、その会社が培ってきた技術やアセット、歴史に答えが眠っていることが多いと感じています。プロジェクトにおいて、取引先の知財や特許情報を扱うことは多いのでしょうか?

下田:もうideaflowを知ってしまったので、特許はすごく意識するようになりました(笑)。以前は、新しいお客様から相談を受けるときには、「御社にはどのようなアセットがありますか?」といった質問を通じて、ノウハウや、部門が持っている何らかの資産をヒアリングする程度でした。しかし今では、「御社の知財や知的資本には、どのようなものがありますか?」と訊いてみたり、初めてお客様とお会いする時には事前に特許情報を確認したりなどを、自然とやるようになりました。少なくとも会話の中で「知的資本」「知財」「特許」といった言葉がキーワードになる場面は、確実に増えたと感じています。

平:私も、ideaflowを通じて特許に対する抵抗感がなくなったと感じました。以前は「知財」という言葉に対して、自分の専門とは少し遠い領域だなという印象を持っていました。しかし、今ではむしろ積極的に活用し、事業開発に活かしていきたいと思っています。

abeam insights 106 アセットやノウハウの活用を阻む3つの阻害要因(©ABeam Consulting)

AIが導く次世代事業創出モデルの構築|ABeam

Ideaflowは、お客様と「土地勘」を共有するためのツール?

―実際にideaflowを使ってみて、UI/UXなどの操作感はもちろん、特許からアイデアを起こすという体験はいかがでしたか?

宮田:率直に感じたのはインターフェースの使いやすさと、特許情報を直接「GooglePatents」などから取得してくるところの便利さですね。これまではAIを使ったとしても、「問い」を立てるのは人間の役割でした。そもそも特許を読み解くのは非常に負荷の高い作業、それをAIが翻訳して、アイデアにまで落とし込んでくれるというのが画期的だなと。

もちろん、特許の本文をコピー&ペーストしてChatGPTに入力することはできますし、実際に試したこともあります。でもその場合、余計なところをピックアップしてしまったり、本当に見たいポイントから外れた回答になってしまうことも多くて。Ideaflowの場合は、特許に即した形でアイデアを出してくれるように設計されている印象がありますね。

ideaflow use scene 01 実際にideaflowを使って生成されたアイデアの抜粋。テキスト情報だけでなく「利用シーンを描いたビジュアル」を同時に作成する

―御社のコンサルティング業務は、クライアントによって千差万別かと思われます。「こういう場面でideaflowが役立っている」というユースケースがあれば教えてください。

下田:ご存じの通り、我々は事業会社ではなくコンサルティングファームなので、自分たちで事業やプロダクトを持っているわけではありません。メインの役割は、お客様に対して「ホワイトスペース」を一緒に埋めることや、伴走支援をすること。その中でideaflowは、お客様に対して「御社の特許を入れてみたら、こんなアイデアが出てきました。これをベースに、一緒に事業を作ってみませんか?」といったコミュニケーションツールとしても機能しています。

我々コンサルティングファームにとってideaflowは、親和性の高いツールだと感じています。お客様の特許を使って「こんな可能性がありますよ」と提示することで、「こういうAIツールを自社でも使っていけるように、組織としてのケイパビリティを獲得していきましょう!」といった提案もできます。我々にとって議論の幅が広がりましたし、お客様との新しい関係性づくりや、対話を促進するツールにもなっているなと感じます。

平:私の場合は、下田が受け持つ案件に対して、実際のデリバリーやプロジェクト推進を担当するという役割分担になっています。お客様と一緒に事業化を進めていく中で、「この分野に展開したいが、最適な技術がわからない」「こういう技術を使いたいが、どう使えばいいかわからない」といった相談をいただく機会が多いのですが、我々もお客様側の担当者もその技術ににおいては専門外であるケースもあります。

そういうときに、事前にideaflowでお客様の特許情報をもとにアイデアを出しておいて、「こういう可能性がありますよね」と会話のきっかけを作ることに役立てています。ゼロベースで「技術もよくわからない」「アイデアもない」というところから思い悩むのではなく、0.1でもいいからたたき台となるアイデアを一緒に持って、「土地勘」を共有しながらコンセンサスを得ていく――。そのスピード感や気づきを与えてくれるという意味では、すごく有用なユースケースになっていると思いますね。

アイデア出しの工数が、約100分の1に短縮

―ideaflowで実現できた定量的な成果があれば、可能な範囲で聞かせていただけますか。

下田:これまでは、事業アイデアの探索から事業計画作成までをやろうとすると、一般的には少なくとも2ヶ月間、体制としても3人が必要という感覚です。それこそ最初の1週間は、色んな角度からアイデアをひねり出す時間です。それがideaflowを使うと、ものの数時間で終わってしまった。出てきたアイデアを選んだりブラッシュアップしたりする時間は必要ですけど、「まずはアイデアを出す」という工程は、数時間に短縮できたと感じています。

そこで検証を兼ねて、過去のプロジェクトで扱ったテーマを参考に、同様の条件を想定してideaflowで事業アイデア探索を試してみました。その結果、当時検討していたアイデアと類似するものが瞬時に生成され、従来の工数と比較して、約100分の1という驚異的な効率化が可能であることが確認できました。スピードはもちろんのこと、大量に生成されたアイデアの中には、「これいいよね?」と思えるものもちゃんとありました。

―人間が出したアイデアと違って「捨てやすい」というのもポイントかもしれませんね。膨大なアイデアの中から宝探しをするように、「当たり」を引き出す能力やタイミングが人間には求められるのかもしれません。

下田:さらに言えば、日本における事業開発を、根底から覆すようなポテンシャルを持っているのではという期待もありますね。これからは、経営層や意思決定者も巻き込んでいきたいと思っています。現場がAIで加速できていても、その後の評価や稟議に時間をかけてしまっては元も子もありません。知財にAIを取り入れるのであれば、意思決定にもAIを入れるべきです。これからの事業開発は、「考える人(Thinker)」と「実行する人(Doer)」の分断を回避し、すべてのメンバーをDoerとすることで、スピードと試行回数を最大化していく――弊社でもこのアプローチを積極的に取り入れ、事業開発の効率化と質の向上を目指していくべきだと考えています。

Insight138 fig 09Doer事業開発を使ったアビームの新規事業開発アプローチ Doer事業開発を使ったアビームの新規事業開発アプローチ(©ABeam Consulting)

大企業におけるイノベーション創出の実践的プロセス|ABeam

人と人の共創やオープンな対話につなげられるツール

―ideaflowへの今後の期待と、導入を検討している企業さんへのメッセージをお願いします。

下田:市場の動きを見ていると、公開情報をもとにした事業開発支援のAIツールは数多くあります。正直なところ、ChatGPTやGeminiを使いこなせば、ある程度は同じことができてしまうかもしれません。だからこそ、「知財・特許を使った事業開発に特化していること」「UI/UXが事業開発の現場で使いやすいこと」がideaflowを使う意味・理由になってくると思っています。今後AIがますます群雄割拠の時代を迎えていく中で、ideaflowがこうした差別化ポイントをどう進化させていくのか…非常に期待しています。

宮田:日本国内では、まだまだ知財が十分に活用されていないと感じています。そこに対して、AIを使って特許を扱いやすくすること。そして、技術サイドと企画サイドに生じているコミュニケーションの溝を埋めること。この2つのポイントで、ideaflowには可能性があると思っています。コミュニティ機能で相互理解をすり合わせていくことができる強みもありますし、その使い方に関しても、今後いろんな会社が模索してベストプラクティスが出てくるんじゃないかと期待しています。

平:ideaflowの設計思想にはすごく共感しています。私自身もプロダクトを立ち上げた経験がありますが、このようなツールは、頭で考えているだけだと本質が見えなくて、実際に触ってみて初めてわかることが多いんですよね。人と人の共創やオープンな対話につなげられるツールだと思いますので、ぜひ多くの方に試してみていただけたらと思います。

s-1092x868 v-fs webp dbc5d169-ad3a-46c1-8395-87ee1a39d2a1 ideaflowは知財の専門家だけではない誰もがカジュアルに使えるUI/UX設計と、他のユーザーからのコメントや「いいね」の評価を通じて、作成したアイデアを発展させられるコミュニティ機能を有していることが大きな特徴


下田 友嗣
アビームコンサルティング
デジタルテクノロジービジネスユニット design X architect ダイレクター
新規事業創出、DX/IT人財創出、構想策定/業務変革からIT導入まで幅広いコンサルティングサービスの実績を多数有する。特に、事業と人財の創出、ビジネスとデジタルを同時並行でデザインし、段階的/持続的な価値提供に向けた戦略・アプローチの立案、実行を得意とする。

宮田 証
アビームコンサルティング
デジタルテクノロジービジネスユニット design X architect マネージャー
大手WEBメディア企業にてニュースや金融情報サービスの運営及び事業開発担当を経て、大手通信事業者とのJV設立や経営、事業戦略策定に参画。また、交通系スタートアップでの事業開発やアライアンス、多数の政府系プロジェクト参画や産官学連携経験など、幅広い経験を有する。

平 和馬
アビームコンサルティング
デジタルテクノロジービジネスユニット design X architect シニアスペシャリスト
複数のスタートアップにて先端技術領域での事業開発とGo-To-Market戦略の実行に従事し、開発・営業の結節点として複数社連携や省庁折衝など事業化を推進。理系博士課程まで進んだバックグラウンドを活かし、現場のリアリティと技術・規制を高度に結び付けた、実効性の高いビジネス開発を得意とする。

アビームコンサルティング株式会社
日本発・アジア発の総合系グローバルコンサルティングファーム。幅広い業種・業界に対し、戦略立案から業務改革、ITシステム導入、そして運用まで、変革のすべてのプロセスを一貫して支援している。
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