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2025.12.01

ideaflow

オートメーションの老舗「アズビル」が、ideaflow で見つけた共創の可能性

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知財図鑑では、知財×クリエイティブ×AIによるアイデア共創プラットフォーム「ideaflow(アイデアフロー)」のリリースより、特許を保有する企業や大学を対象に導入支援を行ってきた。本記事では、実際にideaflowを活用している企業の担当者にインタビューを実施。導入前の課題からUI/UXの操作感、社内の変化、新規ビジネスへの期待感などを語っていただく。

第1回目の企業は、1906年創業のアズビル株式会社。「計測と制御」の技術をもとに、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献をめざす「人を中心としたオートメーション」を追求し、建物・工場・生活分野で技術・サービスを提供してきた同社が、いま新たな挑戦として取り組んでいるのが「知財×AI」によるアイデア創出だ。その取り組みを牽引するのが、デジタルイノベーションラボ所長の佐藤適斎さん。「イノベーションを起こす風土づくり」をテーマに掲げる同ラボは、ideaflowを活用することで自社の眠れる特許に光を当てようとしている。

背景と課題

  • 技術や特許を多数所有していても、アイデア創出は社員の“勘”頼みだった

  • 眠る特許を次の事業に繋げるための仕組みがなかった

  • 自社のコア技術と未知領域との接続点が可視化できず、構想の幅が限定されていた

実践と効果

  • 特許600件を起点に数万件のユースケースを生成し、俯瞰できる“地図”を構築

  • 他部署の社員が技術&アイデアに触れ、会話と共創のきっかけを創出

  • 自社特許から、技術×市場の“ホワイトスペース”を可視化

アイデアから技術の逆引きができる強み

―まずは、アズビルのDX戦略におけるご自身の役割を教えていただけますか?

佐藤:私が所属するデジタルイノベーションラボは、AI研究者・UXデザイナーなど領域特化型のプロフェッショナルで構成された小さなR&D組織です。VUCA(※1)とよばれる不確実性の高い社会において、不確実性が高いが未来の可能性を秘めている技術を積極的に実証しています。その中で、そういった技術が、自社や社会のどのような未来につながっていくか、を日々妄想し社内に発信しています。

※1 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの言葉の頭文字をとった造語

image8 trim アズビル デジタルイノベーションラボのメンバー。写真左が今回インタビューに応じてくれた佐藤適斎さんで、右は寺山美波さん。

―ideaflow導入前は、社内のアイデア創出でどんなことに悩んでいましたか?

佐藤:何よりも「発想」する部分です。これまでアイデア創出といえば、ドメインの決定から市場調査を行いながら、自社の強みを活かした勝ち筋を探していく…という往年のスタイルでのやり方が中心でした。その点、ビジネスアイデアを自社の技術をベースに発想できるideaflowは、非常にインパクトがありましたね。

―実際に使ってみての操作感はいかがでしたか?

佐藤:やはりUXが素晴らしいです。AIが生成してくれるアイデアの量も申し分ないですが、いかんせん弊社では専門性が高い特許が多いため、なかなか利用者目線でのビジネスとの距離が遠いアイデアが多くなってしまう点は否めません。しかし、個人の経験に依存した内容であったり、声の大きい人の意見が通りやすいという課題に対し、AIが客観的に大量のアイデアを生み出し、そこから新たに考えるきっかけを得ること。その期待には応えてくれていると感じます。

image1 実際にideaflowを使って生成されたアイデアの抜粋。テキスト情報だけでなく「利用シーンを描いたビジュアル」を同時に作成し、直感的な視覚情報と合わせることで、アイデアを具現化する際のイメージやパートナー像が伝わりやすくなるのが特徴だ。

―おもにideaflowをどんなシーンで使用されていますか。

佐藤:ブレストはもちろん、その強化のために「idea Landscape(アイデアランドスケープ)」(※2) と合わせて使っています。アイデアから技術の逆引きができる点が強みですね。弊社の場合、600件の特許をもとに約63,000件という圧倒的な数のアイデアが瞬時に生成されたことに驚きましたが、人間が思いつくことはAIでほとんど出てくるものだなあと感心します(笑)。個人的には、「Nomic Atlas」(※3) のサーチと、特許の掛け合わせ機能はお気に入りです。

※2 ideaflowを活用して生成した数万件単位のアイデアをマップツールで可視化し、ビッグデータ分析などに活用する取り組み
※3 数万件にのぼるテキストや画像データをマップ化し、類似性やクラスタ構造を視覚的に把握できるツール

image5 「idea Landscape」を支える「Nomic Atlas」のUIイメージ。膨大なアイデアをマッピングすることで、思いもよらなかった点と点を結びつける手助けをしてくれる。

創立120周年にむけて、「社会」と「会社」をつなぐ存在へ

―自社の特許から生まれたアイデアに関して、新たな発見や気づきはありましたか?

佐藤:技術や市場の「ホワイトスペース」が可視化できたのは大きな収穫でした。新規性・市場性・実現可能性を軸にアイデアをスコアリングしてくれるので、パフォーミングアーツなどの芸術分野から、スイミング、ゴルフといったスポーツ分野まで、弊社とは遠いと思っていた領域にも自社技術を活かせる可能性があるんだなと。

image6 事業アイデアは、「価値・ターゲット・長所・短所・リスク」など多角的な観点で記載され、新規性・市場性・実現可能性について自己評価を施す。さらに、AIエージェントとの対話機能を実装することにより、作成したアイデアの精度を実効性の高いプランへと発展することが可能だ。

―ideaflowは御社内にどんな影響をもたらしたと思いますか?

佐藤:最近は、ideaflowから生み出されたアイデアを組み合わせて、ブレスト的に新たなアイデアを生み出す活動を部署内で行っています。この活動を通じて、これまでには出ない観点でのアイデアを生み出しながら、部署内に「アイデアを自由に生み出す風土」を作り出すことができました。

また、発明者が自分の特許を再発見できたり、他部署とのコラボレーションや共創が生まれるきっかけにもなっていますね。2026年でアズビルは120周年を迎えますので、色々と仕掛けていきたいなとは思っています。

―今後、ideaflowを使って実現してみたいことはありますか?

佐藤:「社会との共創」でしょうか。たとえば、子どもたちを含めた「地域」の考える未来と、企業が持つ特許技術を、ideaflowがつなげてくれたら良いですよね。また、「Idea Landscape」を通して他の企業さんとも共創ができることを期待しています。

―ideaflowの導入を検討している方に向けたメッセージをお願いします。

佐藤:アズビルの場合、「計測」と「制御」という領域であれば、ある種万能にどの領域にも活用の可能性があると実感しています。特許を元にしたアイデアは、自社だけでなく「社会」と共有していくことで、社会の一部/エコシステムとして共生するためのキーになります。ぜひ多くの企業に触れてもらい、未来を一緒に創造していきたいですね。

取材:知財図鑑 編集部


佐藤 適斎
アズビル株式会社 デジタルイノベーションラボ所長
システムエンジニア、新規事業開発マネージャーを経て、2023年より社内の生成AI普及促進を目的としたタスクフォースをリード。また、不確実性の高い技術に特化した実証を行う技術者集団「DS Lab.」をはじめ、複数のクロスファンクショナルチームの立ち上げ・運営を手がける。

アズビル株式会社
1906年創業。「計測と制御」の技術をもとに、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献をめざす「人を中心としたオートメーション」を追求し、建物・工場・生活分野で技術・サービスを提供している。
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