Pickup

2026.03.02

ideaflow

知財部門が「組織のハブ」になる。パナソニックEWとIP Bridgeが実践する、AI起点の共創モデル

ideaflow-CONNECT 03

知財図鑑では、知財×クリエイティブ×AIによるアイデア共創プラットフォーム「ideaflow(アイデアフロー)」のリリースより、特許を保有する企業や大学を対象に導入支援を行ってきた。本記事では、実際にideaflowを活用している企業の担当者にインタビューを実施。導入前の課題からUI/UXの操作感、社内の変化、新規ビジネスへの期待感などを語っていただく。

第3回に登場いただくのは、パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)。同社では、膨大な特許資産をいかにして新事業の「出口」へ結びつけるかという課題に直面していたが、そこで知財×AI活用を支援する株式会社IP Bridgeから提案されたのがideaflowだったという。さらに両社は、パナソニックEWが手がける共創型研究開発(R&D)拠点、「SHIOMER(シオメル)」にてideaflowを活用した新規事業開発のワークショップも開催するなど、AIを起点に新たな伴走のカタチを実現させている。

AIとの共創によって見えてきた、知財の新たな可能性とは――。パナソニックEW・知的財産センター 技術・ソリューション知財部 部長の上原良太さんと、IP Bridge・バイスプレジデントの久保純恵さんに聞いた。

背景と課題

  • ブレストがメンバーの経験値に依存し、アイデアが専門領域に偏りがちだった

  • 1人で数十件のアイデアを捻り出すプロセスに、多大な工数負荷があった

  • 自社のコア技術(知財)に対する「出口」探索の難易度が高かった

実践と効果

  • 特許を起点とした客観的かつ多様なアイデアを短期間で約1000件創出

  • 「市場性・成長性・リスク」の評価軸を投資家視点で裏付け

  • 知財部門がハブとなり、部門間の壁を超えたフラットな議論が活発に

ブレスト頼みだった新規事業創出の限界

―まずは、お二人の役割と今回のプロジェクトの背景を教えてください。

上原:私たち知的財産センターのミッションは、情報分析を軸にビジネスの課題を解決することです。特に新事業創出において、自社の強みである技術をいかに事業の出口に結びつけるかが大きなテーマでした。これまではブレインストーミングが中心でしたが、どうしてもメンバーのバックグラウンドや経験値に依存してしまい、アイデアがワンパターン化したり、1人で数十件も考えることに膨大な工数がかかったり…という課題がありました。

久保:弊社は知財活用のコンサルティングを提供していますが、パナソニックEW様のような大手企業様が「5〜10年後の未来」を見据えてバックキャストで考える際、人間の思考だけではどうしても「目先の市場性」に縛られがちです。そこで、発想を飛躍させるための「刺激」としてideaflowがフィットすると考え、提案させていただきました。

ideaflow connect 03 ideas blur

―ブレインストーミングは、ホワイトボードに付箋を貼っていくようなやり方だったのでしょうか?

上原:そうですね。たとえば、照明器具を担当している人は照明の話ばかり、配電系の人は配電系の話ばかりになってしまう。サービスやソリューションの視点になかなか立てない、という課題も感じていました。そこでIP Bridgeさんから、ideaflowを紹介していただきました。

―ありがとうございます。導入の決め手があれば、ぜひ教えていただけますか?

上原:やはり、知財を起点に事業アイデアを考えられる点です。特許を持っているということは、そこに技術的な強みがあるということ。自社の優位技術を起点に事業を考えられるのは、知財部門として非常に魅力的でした。発明のためのアイデア創出にもAIを活用していますが、事業アイデアを考える――それも技術者や企画者、知財の人が同じ目線で議論できるツールとしては、ideaflowが理想的だなと。

1000件超のアイデアから、投資家視点で「5テーマ」を厳選

l-jn241209-1-2 2024年12月に開設したR&D拠点「SHIOMER」。異なる分野、バックグラウンドの方々との共創を、異なる潮が集まり、混ざり合い、豊かな海を形成する「潮目」にたとえて命名された(©パナソニック ホールディングス株式会社)

─SHIOMERでのワークショップを通じて、どのようなアウトカムが得られましたか?

上原:ワークショップ当日だけでも672件のアイデアが出ました。その後、テーマによっては追加の生成を行い、のべ1000件ほどのアイデアが生成されました。人間の頭だけでは出てこない、5年後・10年後を見据えたアイデアが出てくるのは大きいですね。特に、自社の有力技術に対して「こんな出口があるのか!」という発見がありました。

IMG 4935 blur 昨年7月に「SHIOMER」で開催された、ideaflowを活用したワークショップの模様

久保:弊社では、抽出されたアイデアから20件を絞り込み、さらにベンチャーキャピタリストなどの金融関係者にヒアリングを行いました。これまでに多数の新規事業を見てきた方々ですので、事業アイデアの概要に加え、市場規模や成長率などの情報を共有し、「大手メーカーがやる事業としてどう見えるか」という視点で評価いただきました。

─その評価軸となったのは?

久保:おもに「市場性・成長性・リスク」の3つですね。たとえば建物のモニタリングは、全国の老朽化している建物の数を考えると、市場としてはとても大きいと。ただ、建物ってご存知の通り色んなタイプがあるので、すべてに適合させるのは難しいのではないか……といった、具体的なご意見もいただいて。それらを踏まえた総合評価です。技術のフィジビリティは一旦置いて、純粋に事業アイデアとしてどうか? という視点でアドバイスをいただきつつ、最終的には5つの有望なテーマにまで凝縮できました。

上原:事業アイデアを投資家目線で評価いただく機会がほとんどないので、すごく新鮮でした。AIが生成したアイデアだからこそ、フラットに、かつ自由度高く議論できたと感じています。

知財部門が「組織のハブ」となり、共創のプラットフォームを構築

─現場での「AI×知財」の活用について、どのような手応えを感じていますか?

上原:自分の開発した技術がどう事業に結びつくのか、その「出口探し」に苦労している技術者は多いと思います。ideaflowは、自社の強み(=知財)づたいに、「実現可能な飛躍」を提案してくれるのが魅力的だと思います。

─大企業にとって知財部門と他部門との連携が大切だと思いますが、ideaflowというツールを介することで、他部署を巻き込むきっかけになりますよね。

上原:その通りです。SHIOMERでのワークショップも一過性のイベントに終わらせず、社内のあらゆる部門が活用できる「新事業創出のプラットフォーム」として確立させたい。将来的には当社に不足している技術を補うパートナー企業をAIで調査・選定するなど、今以上に知財部門のプレゼンスを高めていければと考えています。

─最後に、ideaflowへの今後の期待と、導入を検討している企業さんへのメッセージをお願いします。

久保:AIはあくまで刺激を与えるツールですから、最終的に「これをやろう」と決めるのは個々人の「熱量」です。10年後の未来を考える「思考の訓練」として活用してほしいですね。ideaflowは、その役割をうまく果たしていると思います。一方で、膨大なアイデアをどう選別し、どう深掘りしていくか…という点には正直頭を悩ませることが多い。今後のUIの進化には、コンサル目線でも期待しているところです。

上原:知財(特許)起点で事業アイデアを考えるツールとして、ideaflowは知財部門とは非常に相性がいいと思います。自社の強み技術を活かした「現実的でありながら飛躍のある」事業アイデアがたくさん出てくる。AIが提示する根拠や評価がさらにクリアになれば、私たちの経営陣への提言もさらに説得力を増すはず。知財部門がハブとなって、他部門を巻き込みながら新事業を考えていく――そのきっかけとして、ideaflowは有効なプラットフォームだと感じています。

聞き手:知財図鑑 編集部
※掲載内容は取材当時のものとなります


パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社
パナソニックグループにおいて、配線器具、照明、住宅設備、ビル・エネルギー管理システムなどを手がける事業会社。電気を「つなぐ・制御する」技術を核に、安全・快適・省エネな空間づくりを支援し、住宅からオフィス、社会インフラまで幅広い分野で持続可能な社会の実現に貢献している。知財部門では、保有する多くの知的財産を新事業創出や既存事業に活用する取り組みに注力している。
https://panasonic.co.jp/ew/

株式会社IP Bridge
日本初の知財ファンドの運営を軸に、知財のライセンスや活用コンサルティングを行う専門家集団。大手企業の休眠特許の流動化支援や、知財を起点とした新事業創出の伴走支援において豊富な実績を持つ。中堅・大手企業をメインクライアントとし、スタートアップや大学にも積極的に支援を実施。技術の価値を市場ニーズと合致させる戦略立案や、投資家視点での事業評価など、知財とビジネスを繋ぐ高度なコンサルティングを提供している。
https://ipbridge.co.jp/

広告