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2023.10.23

インタビュー | 村上 泰一郎×杉山 元規×出村 光世

音で、認知症に挑め。─ 領域を超えて日常になる、ガンマ波サウンドの可能性

Pixie Dust Technologies, Inc.

ガンマ波12

ピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)、塩野義製薬、シオノギヘルスケアは、「世界アルツハイマーデー」である9月21日、音で認知症に挑む「ガンマ波サウンド」の取り組みを拡張すると発表した。

「ガンマ波サウンド」は、テレビやラジオなどの音を40Hzで変調した音。40Hzは、記憶や思考などの認知機能の発揮に関連した脳波と言われている「ガンマ波」と同じ帯域の周波数で、変調した音が脳内のガンマ波を惹き起こす。認知機能の障害時には、脳内でガンマ波が低下していると言われており、「ガンマ波サウンド」は聴覚刺激によって認知機能ケアを目指していくプロジェクトだ。

ガンマ波1

「音のなるすべての場所を、認知症予防・認知機能改善を目指す場所へ」をミッションに、すでにショッピングモールやスポーツクラブ、銭湯、カラオケなどの施設のほか、健康イベントやラジオなどへの展開も始まっているこの技術。

今後の拡張の可能性について、ピクシーダストテクノロジーズ代表取締役社長COOの村上泰一郎氏、本プロジェクトのクリエイティブを手がけるDroga5 Tokyoの杉山元規氏に、Konel・知財図鑑代表の出村光世が話を聞いた。

イノベーションにスピードを与えるための、産学連携の知財スキーム

ガンマ波2 左からピクシーダストテクノロジーズ 村上泰一郎 氏、Droga5 Tokyo 杉山元規 氏、Konel・知財図鑑 出村光世。

出村

知財を活用したビジネスモデルに積極的に取り組まれているピクシーダストテクノロジーズ(以下PxDT)の取り組みは、知財図鑑の立ち上げ以前から注目させていただいていました。まずは改めて、PxDTの得意領域や特徴について聞かせてもらえますか?

村上

PxDTは2017年に創業した筑波大学発のR&Dベンチャーです。会社のミッションは、『「社会的意義」や「意味」があるものを連続的に生み出す孵卵器となる』。

研究開発型の大学発ベンチャーは、大学のラボで何か新しい技術が発明され、それを製品化するために会社をつくるという流れが一般的ですが、我々はそれをとにかく連続的にやっていく会社をつくろうと。加えて、我々が生み出すものは必ずや社会的に意義や意味があるものにしようということで、このミッションを掲げています。

会社として軸に置いているのは「波動制御」。超音波、電磁波、音、光、それら全てを波動として捉えて制御したり、シミュレーションしたり、解析したりするテクノロジーを日々研究しています。それを、例えば働く現場のDXに展開できないかとか、障害をお持ちの方々やそうでない方々も含めてパーソナルケアに使えないかといったアプローチで社会へ展開しています。

ガンマ波

がんまは4 ピクシーダストテクノロジーズが開発した、音響メタマテリアル技術を応用したガラスと調和する透明吸音材「iwasemi RC-α」。人の声に多く含まれるという500~1000Hzの周波数帯に特化した独自の吸音構造を搭載しており、様々な空間に溶け込む自由なレイアウトパターンが可能。

村上

知財面の話をすると、多数のパイプラインを抱えて一社でやり切ることには限界があるため、PxDTではオープンイノベーション型でプロジェクトを推進しています。我々がコアの技術部分を抱えて、様々な企業や大学と組んで社会に対する価値を一緒に広げていく。やはり知財はR&Dの根幹であり、オープンイノベーションを進める際にもキーとなるコンポーネントになります。なので知財活用は創業初期からかなり力を入れて取り組んでおり、過去には「IP BASE AWARD」のグランプリと「知財功労賞 経済産業大臣表彰」をいただきました。

出村

PxDTは知財の産学連携のスキームも独特ですよね。大学との共同研究で生まれた知的財産権を譲渡してもらう代わりに、新株予約権(ストックオプション)を提供することで対等で良好な関係を築くという。このスキームは定着してきていますか?

村上

大学とのストックオプションを絡めた知財の予約承継スキームは、初回が筑波大学で、次に東北大学と取り組んでおり、この2者とのスキームの運用については定着してきた実感があります。ただ、日本の中でこのスキームが定着したかという意味合いだと、まだまだだと思いますね。

出村

他の企業・大学もどんどん真似して広がっていけば社会的にもプラスだと思いますが、何かハードルなどあるんでしょうか。

ガンマ波5 村上 泰一郎|ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長COO。東京大学大学院修士課程修了(工学)。その後アクセンチュア戦略コンサルティング本部にてR&D戦略/デジタル化戦略/新規事業戦略等を中心に技術のビジネス化を支援。また同社在職中にオープンイノベーション組織(Open Innovation Initiative)、およびイノベーション拠点(Digital Hub)の立上げにも参画。経済産業省、大企業との研究開発型ベンチャーの契約に関するガイドライン策定委員会委員、一般社団法人未踏のエグゼクティブアドバイザーも兼任している。

村上

このスキームは何年間かの共同研究の契約を結んで、「その間に生まれる知財を全て弊社にください、その間にこれぐらいのビジネスが生まれそうだから先にこれだけストックオプションを渡しますね」というもの。知財が出たら都度交渉・交換するのではなく、お互いの信頼関係の上で成り立つスキームなんです。お互いにリスクをとり合って、リターンを分け合いましょう、そういったところまでの関係性を練り上げることのハードルが、まだ少し高いのかもしれないですね。

出村

PxDTがその仕組みに至った理由は、一番大きいところはスピード感でしょうか。

村上

一番大きいのは、まさにスピードです。2点目として、ベンチャーは資金調達するときに、知財をちゃんと自社でホールドできているかどうかをVCなどから問われがちなんですよね。例えば大学が知財を保有して我々がライセンスを受ける関係の場合、大学が退くと事業が継続できなくなります。そこが一つのリスクファクターとなり、投資家からの目線も厳しくなってしまう。知財を早く承継したいということ、それを会社としてハンドリングできる状態に持ってきたいということで、このスキームが生まれました。

出村

一方で先に話された、「波動制御」を会社の軸とした背景とはなんでしょうか。

村上

PxDTの共同創業者の落合陽一星貴之の専門分野を軸に据えたというのが大きな理由です。一方で、これは昔に落合と話していて「なるほどな」と思ったことですが、人間もコンピューターも外界とインタラクトする時ってほとんど「波」を使っているんですよね。音もそうだし、映像を見るのもそう、なんなら触覚も波として表現することができる。これからの時代、コンピューターとAIの性能が進化し続ける中で、それが外界や人間とインタラクトしようとすると、その界面にあたる技術がとても重要になるだろうと。それで「波動制御」に決めたという背景もありますね。

出村

面白い、「波動制御」というと専門的で絞った領域に聞こえるけど、実はめちゃくちゃ広い領域での実装を手がけられているんですね。

「SonoRepro」はピクシーダストテクノロジーズの技術と、予防医学のアンファーの頭髪研究を組み合わせ共同開発した、超音波による振動で頭皮を刺激する家庭用ヘアケア・スカルプケアデバイス。1日1分間で、頭皮の気になる部分(生え際・つむじなど)をクイックにケアすることができる。

音のなるすべての場所を、認知症予防・認知機能改善を目指す場所へ、「ガンマ波サウンド」の取り組み

出村

今回、取り組みの拡張を発表された「ガンマ波サウンド」について聞かせてください。僕もKonelとして過去に脳波買取センター「BWTC」というプロジェクトを手掛けていまして、人が発信する脳波刺激や波動の領域にはとても興味があります。まず、ガンマ波とは何かから教えていただけますか。

ガンマ波6 出村光世|Konel・知財図鑑 代表。

村上

まずガンマ波は、脳波の一種です。脳波の中だとリラックスした際に出るアルファ波が聞き馴染みあるかと思いますが、ガンマ波は人が記憶や推論などの問題解決型の思考をしているときに現れる脳波だと言われています。また、認知症になってしてしまうと減少する脳波だとも言われています。

出村

そのガンマ波の減退を防ぐ可能性を持っているのが、この「ガンマ波サウンド」ということでしょうか?

村上

はい、「ガンマ波サウンド」は、テレビやラジオなど様々な音をガンマ波と同じ帯域である40Hzで変調することで、日常生活を送りながら認知機能ケアできることを目指した音です。

2022年の世界アルツハイマーデーにPxDT、シオノギヘルスケア、塩野義製薬の3社は、音刺激を通じた脳活性化の事業開始に向けた業務提携契約の締結をしました。そこから1年たった今、2023年のアルツハイマーデーにさらなる社会浸透を目指していこうと発表したのが「ガンマ波サウンド」の取り組みです。

出村

なぜ認知症というイシューに着目されたのでしょうか?

村上

高齢者人口が増加し続けている日本にとって、QOLが低下するとともに介護者の肉体的、精神的、経済的負担が大きい認知症は社会に与える影響が大きい疾患です。投薬による治療法も模索されてますが社会への浸透にはまだまだ時間がかかるであろう中で、塩野義製薬さんとPxDT、両者の強みを生かしながら、五感を使う日常生活の中でアプローチできる認知機能ケアのソリューションがあれば社会的意義は大きいだろうと考えました。

主なターゲットとなる高齢者に新しい生活習慣を取り入れてもらうのは難しいだろうということもあり、研究で効果が出ている中で、一番暮らしに溶け込みやすいすいのは“音”なのではないかと。

出村

「ガンマ波サウンド」がどのようにつくられるのか、技術のコアの部分についても教えてもらえますか?

村上

まず、40Hz周期の音の呈示によって、マウスの認知機能が改善した研究結果や、ヒトを対象とした臨床試験においても認知機能悪化や脳萎縮の抑制を示唆する研究結果がすでにあり、40Hz周期の音と研究は世界的に注目されています。※ ただ、この40Hz周期の音というのが「ヴィ〜」というブザー音のような、はっきり言ってしまうと不快な音で、体に良いからといってこれを一日一時間聞いてくださいというのは無理がある。

この音を、より自然に生活に溶け込ませるために私たちが開発したのが「ガンマ波変調技術」です。簡単にいうと、テレビ、ラジオ、音楽など、生活に溢れている様々な音の波形に、40Hzの変調加工を施すことで「ガンマ波サウンド」に変換するというもの。

例えばテレビの音だとすると、上から40Hz周期のブザー音を重ねて鳴らしてるわけではなく、テレビの音の波形自体を変調して40Hz周期で音量を増減させています。また、歌などの人の声に対してはあまり変調をかけず、バックグラウンドの音を意図的に選んで変調することで、聞き心地を損なわないまま「ガンマ波サウンド」をつくり出すことができます。声と背景音を分離し、それぞれで調整をかけ、リミックスをするという仕組みです。

出村

それが物理的なスピーカーになっているというより、技術としてはソフトウェアのイメージでしょうか?

村上

おっしゃる通りで、その変調するアルゴリズムが肝になっています。まさにソフトウェア技術なので、スピーカーやイヤホンのようなハードウェアに実装して販売することもできるかもしれないですし、元々あるコンテンツそのものを変調することもできます。あるいは、スマートフォンに仕込んで、電話の着信音を変えるみたいなことも、もしかしたらできるかもしれない。このように、世の中で音が鳴っている場所だったらどこでも認知機能ケアできる可能性がある、そんな技術ですね。

音楽からインフラへ、ガンマ波を生活に浸透させるためのクリエイティブ

出村

このガンマ波サウンドの取り組みのクリエイティブディレクションを担当されている、Droga5(ドロガファイブ)の杉山さんにもお話を伺っていきます。Droga5はNY、ロンドンを拠点とする世界的なクリエイティブ・エージェンシーですが、2019年4月に総合コンサルティングファーム・アクセンチュアにより買収、2021年5月には新拠点として東京にオフィスを開設したことも話題となりました。今回のプロジェクトになぜDroga5が参入することになったのでしょう?

村上

まず私たちPxDTサイドの話からすると、社会的に意義のあるものが研究開発できたと自分たちで思っていても、世の中にはそれがほとんど伝わってないと実感するケースがとても多いんですよね。先ほどの40Hzの音にまつわるマウス研究のことも、音で認知機能ケアができるかもしれないことも、世の中の人はおそらくほとんどの人が知らない。

意義はあるけれども、新しくてまだマーケットの認知が全然取れていない我々の新しい技術を、いかに世の中に共感と共鳴を持って広げていくのか。そのためには誰か外部の力を借りなければいけないと思っていました。そこで、私の前職のアクセンチュアの先輩に相談した時に、そういえば最近、アクセンチュアグループにDroga5というクリエイティブ・エージェンシーが入ったという話になって。いろいろと事例を拝見して、これは一緒に組んでいくと素晴らしく面白いことができそうだと感じて、お声がけしたという経緯があります。

出村

偶然ですが実は僕もアクセンチュアの出身でして。僕が在籍してた頃だと想像できなかったクリエイティブな動きなので、面白い環境の変化があるなと感じました。今回のような大きな社会課題に接続していくにあたって、Droga5がアクセンチュアグループにいるのは大きな推進力になりますよね。

杉山

まさにそうですね。今までの広告コミュニケーションだけではなくて、今回のような社会課題に向き合う事業に、パーパスから入ってそれをアクションに繋げていくことには、意義を感じて取り組んでいます。「ガンマ波変調技術」という素晴らしい技術があり、ただテクノロジーの部分だけを説明的に伝えてもなかなか世の中には浸透しづらい。今回でいえば、「音という新たなアプローチで認知症の恐れを払拭することで、本人とその家族の絆を守り、自分らしくいられる世界を作り出す」というパーパスを打ち出し、それを「音で、認知症に挑め。」というメッセージにプロジェクトチームの皆さんと落とし込んでいきました。

ガンマ波6 杉山元規|Droga5 Tokyo, Accenture Song / Group Creative Director 。複数の広告会社を経て、2020年にAccentureに参画。その後、Droga5 Tokyoの立ち上げメンバーに。クリエイティブの役割と可能性を拡張させ、パーパス起点の変革を起こす。

村上

それらを言語化するために2日に1回どころか、毎日ぐらいの勢いでディスカッションしていましたよね。

杉山

「何のための」どんなテクノロジーなのかという、存在意義のところを膝を突き合わせて密に会話しましたよね。そこから様々な領域の企業とアライアンスを広げていき、今は日常生活の中で音のなるすべての場所を、認知機能ケアしうる場所に変えていくという、さらなるアクションに拡張していく段階になっています。Droga5のクリエイティブチーム、アクセンチュアのビジネスチーム、そして村上さんをはじめとするプロジェクトチームが一体となって取り組んでいます。

出村

まず1歩目として、どのような展開をしていくかを教えていただけますか。

杉山

ガンマ波サウンドは、音が鳴る全てのシチュエーションに対応できますが、まず広げる取っ掛かりとしては音楽を活用していこうと。暮らしや生活に馴染ませるアプローチをしていくときに、やっぱり音楽の力はすごく強い。

そこで現代音楽の最前線で活躍する「Black Cat White Cat」と組んで、オリジナルのガンマ波サウンドによるBGMをつくりました。Spotify・ApplePodcast等で、世界中の人々が聴けるように配信しています。それをショッピングモールやスポーツクラブ、銭湯などの施設でBGMとして流したり、ラジオといった音声メディアで活用したり、Voicyなどの音声プラットフォームにも導入しています。

杉山

また、オリジナル以外にも既存の音楽も変調できると思っています。シニアの方が長年ファンだったり、昔から親しんでいるアーティストなどの音楽を変調する。ユーロビートリミックスみたいな感じで、ガンマ波サウンドエディットという新しい音楽のジャンルがつくれると想像しています。そうすると高齢者の方々の生活の中にも、自然と提供できるのではないかと。

出村

一番「ながら」で体験できるところが、聴覚の強いポイントですよね。以前僕は「sasayaki lullaby」という“おやすみ前専用の入眠プレイリスト”をつくったことがあるのですが、ガンマ波サウンドを睡眠と掛け合わせられると長いスパンで浴びれて良さそうです。他にも学習アプリにするとか、車でも聴けるようにするとか、実装場所は広く考えられそう。一方で、自然界には似た音域はないのかなとか、振動だけでもいいならどこかの宿を「ガンマ湯」みたいな温泉にできないかなとか…。妄想が膨らみます。

がんまは9

村上

面白いですし、聴覚ではないとガンマ波は惹き起こせないのか?という疑問は鋭いです。まずは音から広めていきますが、それ以外の五感刺激の可能性についてはプロジェクトチームでも探っています。人間が聞こえると認識していないかもしれないけれど、実は潜在的に認識しているみたいな領域も、もしかしたらあるかもしれない。

杉山

音楽を導入にはしていますが、生活の様々な場所で接することができるインフラにしていきたいですね。単発のエンターテイメントにはしたくなくて、例えば公共施設や街中のいろんなアナウンスにも導入するとか。テレビを見ながら副音声の方ではガンマ波サウンドバージョンを選べるというように、能動的に見る人が切り替えられる仕組みもあるといいですね。

「時すでに遅し」にさせないための発信とエビデンスの検証

出村

今回のプロジェクトは「認知症」という誰もが知っている疾患に挑むものであると同時に、定量的な効果を実証するのには長いスパンが必要なのではとも想像していて。言ってしまえば、「ガンマ波サウンドを聞いたけど、何も効果を感じないんですけど」みたいなクレームを寄せてくる人もいるかもしれない。そんなまだ黎明の段階でプロダクトに落とし込んで、啓蒙していこうという姿勢に感銘を受けます。

村上

人に対する検証でガンマ波が惹起することは確認していますが、おっしゃるように本当にそれを10年、20年聞き続ければ認知症が予防できるのか、抑制できるのかというend-to-endのエビデンスはまだ取られていません。そもそもこの新しすぎる技術の段階で世の中に広めていくことがいいことなのかという議論はこれまでにも当然ありました。ですが、ヒアリングやリサーチの過程でユーザー候補や当事者の方々にお話を伺っていく中で、「逆にそれだけの研究データがあるんだったら、早く使わせてほしい」「10年経ってからやっと使えるといわれても、それはもう遅すぎる」という声を多くいただいて。

ガンマ波10

村上

実はこのプロジェクトは特殊な進め方をしています。世の中に発信していく活動をしながら、裏では、塩野義製薬や大学と連携して、中長期的にエビデンスを取ってアカデミックな証明を行うというプロセスを同時進行で進めています。今までの研究開発に則ってしまうと、エビデンスが取れた後さらに10年後ぐらいに、やっと一般の人が触れられるプロダクトになるというスピード感になってしまう。今認知症に不安を抱えている人にとっては、時すでに遅しです。

なので、このガンマ波サウンドをまずは体験してもらうアプローチを手前に持ってきて、現段階でも使ってみたいという方には早めに取り入れてもらう。エビデンスが揃ってから使いたい方には、何年間か待っていただいて提供する。両方の希望に対応できる進め方をとっています。

出村

冒頭の、知財のスキームでスピードを出していくという部分にも繋がるポリシーを感じます。また、パートナーである塩野義製薬も、大企業でかつ製薬会社といういろんな面で厳密性を背負っているプレーヤーでありながらも実現できているのがすごいですよね。

村上

PxDTは普段からスピード感をめちゃくちゃ意識していますね。ただやっぱり今回は、塩野義製薬が共感してくれて一緒に思い切って勝負してくれてるのがとてもパワフルなポイントです。

他にもNTTドコモ、SOMPOひまわり生命、三井不動産などとアライアンスを組んで進めていますが、そういったパートナーの方々からも、高齢者・認知症文脈だけではなく、若い世代に対するポジティブな影響にも拡張できないかという提案もいただいており、さらなる展開を一緒に考えています。

ガンマ波11 2023年4月には、PxDTと塩野義製薬の2社が中心となり、パートナー企業として参加する株式会社NTTドコモ、株式会社学研ココファン、SOMPOひまわり生命保険株式会社、三井不動産株式会社の4社とともに、各社の事業領域の中で「ガンマ波サウンド」による認知症予防、認知機能改善の取り組みを進めていくことを発表した。

出村

最後に、この記事を見てどんなプレイヤーや企業から手が挙がってほしい、声をかけてほしいかを聞かせてもらえますか?

杉山

音楽から広めていこうと思うので、まずはアーティストの皆さんです。すでに、認知症をテーマにしたデビュー曲「愛のカタチ」で知られる海蔵亮太さんに賛同いただき、第一興商の通信カラオケDAMを活用して高齢者施設でカラオケ体験を実施するなど実現していますが、もっといろんなアーティストの方ともガンマ波サウンドエディットの楽曲をつくることに取り組みたいと思っています。あとは公共施設や交通機関といったインフラ、テレビやラジオといったメディアなど、あらゆる生活動線にガンマ波サウンドをインストールして浸透させ、社会実装していきたいですね。

今回すでにアライアンスを組んでいる事業会社やパートナーの方々は、どなたも取り組みの意義に強く共感して集まってくださっていて、そこに可能性を感じています。音のなるすべての場所を、認知機能ケアしうる場所へ。私たちが目指すそんな世界に共鳴してくれる方はぜひお声がけください。

「ガンマ波サウンド」特設サイト

※ Martorell, A. J. (2019). Multi-sensory gamma stimulation ameliorates alzheimer’s-associated pathology and improves cognition. Cell. 177(2), 256-271.e22.

村上 泰一郎

村上 泰一郎

ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長

東京大学大学院修士課程修了(工学)。その後アクセンチュア戦略コンサルティング本部にてR&D戦略/デジタル化戦略/新規事業戦略等を中心に技術のビジネス化を支援。また同社在職中にオープンイノベーション組織(Open Innovation Initiative)、およびイノベーション拠点(Digital Hub)の立上げにも参画。経済産業省:大企業と研究開発型ベンチャーの契約に関するガイドライン策定委員会委員、一般社団法人未踏のエグゼクティブアドバイザーも兼任している。

杉山 元規

杉山 元規

Droga5 Tokyo, Accenture Song Group Creative Director

Ogilvy&Mather、TBWA\HAKUHODOなど複数の広告会社を経て、2020年にAccentureに参画。その後、Droga5 Tokyoの立ち上げメンバーに。ビジネスの上流から下流まであらゆるフェーズにクリエイティブを掛け合わせ、新たなブランド体験や価値を生みだす。Cannes Lionsをはじめ、国内外での受賞歴や講師/審査員歴多数。2022年には、アジア太平洋地域から40歳以下の若手リーダーを選出する40 Under 40 in APACと、Japan/Korea Creative Person of the Yearのダブル受賞を果たした。

出村 光世

出村 光世

Konel Inc. Producer

1985年石川県金沢市生まれ。早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。アート/プロダクト/マーケティングなど領域に縛られずにさまざまなプロジェクトを推進。プロトタイピングに特化した「日本橋地下実験場」を拠点に制作活動を行い、国内外のエキシビションにて作品を発表している。自然現象とバイオテクノロジーに高い関心がある。

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