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2026.06.17

インタビュー | 小貫 絢子×清水 陸×荒井 亮

まだ存在しない職業は、特許の海から生まれる──。オカムラ「0次開発プロジェクト」が夢想する2045年の未来

株式会社オカムラ

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2026年6月18日より、高輪ゲートウェイ駅直結のTHE LINKPILLAR 2にて「0次開発プロジェクトvol.1 まだ存在しない未来の職業展 2045」が幕を開ける。主催の株式会社オカムラはオフィス家具や店舗用什器のイメージが強い企業だが、ここで提示されるのは、「2045年」をマイルストーンとして導き出した「50の未来の職業」と、現地で実体験できる「ジェスチャーオーケストラ」「エンディングエディター」と呼ばれる2つの職業のプロトタイプだ。

その出発点にあるのは、オカムラが保有する6000件(※失効済み/申請中の特許含む)を超える特許群。知財図鑑が提供するアイデア共創プラットフォーム「idea Landscape(アイディアランドスケープ)」によって、埋もれつつあった特許は27900件もの事業アイデアの海へと可視化され、その後のワークショップでの磨き込みを経て「未来の職業」へと翻訳されていった。アイデアの可視化からR&D、プロトタイプ、リアルの展示までを一気通貫で駆け抜けた、idea Landscape活用の先進事例として我々編集部も大きな期待を寄せている。

なぜオカムラは、新規事業の「0→1」のさらに手前である「0次」から始めたのか。そして、なぜアイデアは「職業」というカタチに昇華されたのか。開幕直前のタイミングで、オカムラのフューチャービジネス企画部でクリエイティブディレクターを務める小貫絢子さん、プロトタイプの体験設計を手がけたKonelのプランナー/コミュニケーションデザイナーである清水陸、idea Landscapeの生みの親である知財図鑑編集長・荒井亮の3人が、プロジェクトの舞台裏と来たる2045年について語り合った。

「10年後のオカムラを見ている人は、何人いるだろう」——0次開発の原点

―小貫さんはフューチャービジネス推進事業部で「0次開発プロジェクト」を担当されています。そもそもこのプロジェクトは、どんな「問い」から生まれたのでしょうか。

小貫

オカムラはパーパスとして「人が活きる社会の実現」を掲げています。スチール製事務用デスク・チェア、冷凍冷蔵ショーケースなど、人の生活に近いところでものづくりを幅広く展開してきました。AIやテクノロジーがこれだけ進化していく時代に、自分たちはどうやって「人が活きる社会」を実現していくんだろう。それを未来視点で考えたい──というのがきっかけですね。1次開発、2次開発となると多くのプロセスが必要になるので、もっとクイックにプロトタイプを回しながら考えたい。その手前の段階という意味で「0次」開発プロジェクトが立ち上がりました。

DSF3070 小貫絢子|株式会社オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター

―昨年創立80周年を迎えた老舗のオカムラさんですが、Konelのメンバーとはどこで接点が生まれたのですか?

小貫

一番最初は、ブリヂストンさんとKonelさんが共創した「Morph」(モーフ)の展示会で出村(光世。Konel/知財図鑑の代表取締役CEO)さんとお会いしたのがきっかけです。その後「日本橋の地下実験場に来てくださいよ」とお誘いいただいて。「こんな面白い会社があったんだ!」と。そこからKonel/知財図鑑さんの取り組みを知るなかで、社内の人間とも「ideaflow(現・idea Landscape)が面白いよね」という話になりました。

私たちの会社は「守りの知財」が多かったので、「攻めの知財活用」は、これからさらに広げていきたい領域だったんです。それに、自分たちの頭だけで考えるとオフィス環境でアイデアが閉じてしまうんですけれども、事業を横断したり、他事業の目線で、「じゃあそれを違う市場に持っていったらどうなるんだろう?」というふうに発展させられるのがいいなと感じました。

荒井

「新規事業」と言っても、結局は既存領域をちょっと広げて新商品を出す⋯⋯くらいの話に落ち着きがちなんですよ。でも今回は、市場がまったくないところからもう一回考えよう、そこまでの飛躍もありなんだ! と、僕たちも気づかせてもらって。そこがすごく面白かったですね。オカムラさんとのワークショップで印象に残っているのは、開発創造本部の本部長である佐藤直史さんが最初におっしゃっていた言葉です。「今のオカムラを見ている人はたくさんいる。けれど、10年後のオカムラという会社を見ている人は、この会社に何人いるだろう」と。

DSF3180 荒井亮|知財図鑑・編集長として、クリエイティブ x テクノロジーのイノベーションを推進

小貫

すごい、よく覚えてらっしゃいますね(笑)。

荒井

個人的にも印象に残っている言葉なんです(笑)。何もしなくても、オカムラという会社はたぶん5年・10年は続く。でも、リモートワークの浸透などオフィス環境がこれだけ激変するなかで、今のマーケットだけを見ていてはしょうがないと。その長期的な視点が素晴らしいなあと思いました。

人が活きる社会の実現につながれば何でもいい、と割り切れた

―今回のプロジェクトにおいて活用されたのが「idea Landscape」です。オカムラさんの6000件を超える特許から選びぬかれた279件の「越境特許」をもとに、のべ27900件もの事業アイデアが可視化されました。

57032-58-6e3e2814d248762eebbb2a2440fd33f6-1280x720 「0次開発プロジェクト」における、idea Landscapeの活用(©OKAMURA CORPORATION.)

荒井

知財って、普通の人はなかなか接点がないじゃないですか。理解するのが難しいし、あまり触りたくない領域ですよね。でも、オカムラさんがやってきたことはすべて知財として形式化されている。つまり過去の資産なんです。それをAIで翻訳すると、全然違う可能性が見えてくるんじゃないか——というのが「idea Landscape」の発想です。

実際、未来の職業を考えるなかで、物流で使われている遠隔操作ロボットの技術が異なる分野で昇華されたりする。それをきっかけに他の事業部の人たちとコミュニケーションが生まれて、「この業種の人たちに相談してみよう」と次のアクションにつながっていく。思ってもみない方向にうまく発展しているなという印象ですね。

―そのアイデアの海から生まれたのが、「まだ存在しない未来の職業展 2045」でお披露目される「50の未来の職業」という切り口です。なぜ技術やプロダクトではなく「職業」だったのでしょう?

清水

技術起点やプロダクト起点で将来を考えると、どうしても難しく考えがちなんです。あえて身近な「職業」に昇華することで、その未来において人々がどういう生活をして、どういう文化があるんだろう、と妄想しやすくなる。ワークショップを何回かやってきて、職業というカタチのほうが広がりがあるというのは実感していますね。

ワークショップで大事にしていたのは、idea Landscapeから出てきたアイデアに対して、いかに人が「自分のアイデアを付け足したくなるか」という設計です。オカムラの皆さんはノリが良くて、楽しみながらチームでどんどんアイデアを足してくれたので、最終的に完成度の高い職業ができたんだと思います。

DSF3134 清水陸|株式会社コネルのプランナー/コミュニケーションデザイナー/プロデューサーとして、オンラインからオフライン、マスからニッチなど、領域やメディアを限定しない統合コミュニケーションを手がける

小貫

ありがとうございます。未来の職業を考えるのは、いわゆるペルソナ設計とは全然違って難しかったです。そもそも、未来の社会がどうなっているかを膨らませないといけないじゃないですか。やればやるほど「これ、未来感なくない?」という話になっちゃって(笑)。

そこを磨くのは人間がやりつつ、ときどきAIの力も借りつつ、未来感をどうつくるかが一番苦労したところかもしれません。感覚的に「これは人間じゃないと見極められない」という部分も多くて、その辺りのディスカッションはすごく面白かったですね。

清水

技術的な面でも、そうじゃない面でも「今までオカムラさんがやってきたことの延長線上だ」となる職業がすごく多かったのも印象的です。オフィスから広がって、人間のコミュニケーションはどうあるべきか、働き方、ひいては暮らし方を考え続けてきた会社だからこそ。オカムラさんでしかできないワークショップだったんだろうなという気がします。

okamura ws 2508 2025年8月のidea Landscapeを活用したワークショップには、約20名の社員が参加。オカムラ・WORK MILL(ワークミル)プロジェクトが運営する、これからの「はたらく」を描いていくための共創空間「Open Innovation Biotope “Sea”」にて開催された(©OKAMURA CORPORATION.)

―普段なら「それで事業としていくら稼げるの?」と言われてしまいそうな未来の話を、ここまで自由に飛躍させられたのはなぜだと思われますか。

小貫

今回の展示会には、大きく3つの目的があるんです。1つは、オカムラの未来にワクワクして、一緒に「0次」をやってくれる外部のパートナー企業と出会うこと。もう1つはリクルーティングやブランディング。オカムラには「オフィス家具の会社」というイメージが強くありますが、それだけではないよ、こんなこともできるんだよ! という幅を見せること。そして最後がインナーブランディングです。この取り組みをきっかけに「あ、やっていいんだ」「0次なら簡単にものづくりに踏み出せるんだ」と、社内のみんなの脳をどんどん着火させていきたい。そう目的を設定すると、事業性や競合分析は一回無視して、「人が活きる社会の実現」につながれば何でもいい、と割り切れたんです。

清水

この目的設定がめちゃくちゃ良かったんですよ。それがあることで「もう何でもつながるな!」となって、僕らも自由に発想できましたし。

小貫

とはいえ「なんで自分たちがこれをやるのか」は重要なポイントで、根っこに知財があるから、立ち返る場所として「これをやっています」と言いやすい。いざとなったら戦えますから。

荒井

それがただの想像で「こんな職業ができるんじゃないか」というだけなら、ワークショップで賑わって終わりになってしまいます。実際に社内に特許があって研究も進んでいれば、事業化の検証までできますもんね。

―最終的に2つのプロトタイプに絞り込まれるまでには、どんなプロセスがあったのでしょう。

清水

今回のテーマとして「2045年」というのを設定していたんですね。もちろん今の技術で2045年の技術までをつくることはできないと思うので、それなら「何が足りないのか」というところや、「今の技術に近いもので再現するとしたらどういうものができるのか」というところで、どうやったら未来の職業の完成形に近づけるのかを考えてプロトタイプを開発しました。

ワークショップに参加したのは10チームほどで、各チームにアイデアを出してもらい、専務のプレゼンまで到達したのが4つくらい。そこから今回の2つが選ばれました。その観点は、「0次開発プロジェクトの掲げる5つの視点」で一番上に掲げている「人間性」を特に重要視しています。なぜこれが、そもそも人がやるべき仕事なのか。オカムラらしさが出ているいっぽうで、「らしくなさが面白いよね」という矛盾も含めて選んでいます(笑)。

小貫

今回の2つのプロトタイプは、職業に就く側も、体験する側も、どちらも人の感情や思い出に依拠しているんです。感情を持つこと、思い出や記憶は、人間にしかないもの。これから「人だから何をするのか」はどんどん重要になっていくので、この2つでよかったなと思っています。

「ジェスチャーオーケストラ」で、誰もが音楽家になれる

―では、その2つのプロトタイプについて詳しく聞かせてください。まず「ジェスチャーオーケストラ」はどんな体験なのでしょうか?

phase0-dev sub2 ジェスチャーオーケストラ|2045年、AIが多くの創作を代替することで、すべてのコンテンツが均質化していく。そんな時代に「人間にしかできないこと」への価値が高まる「ヒューマンルネサンス」が到来。ジェスチャーオーケストラは感情や記憶、そこにある環境音の断片を用い、ジェスチャーで音として再構成する新しい職業。今回のプロトタイプ体験では、専用グローブを使って、その瞬間にしか生まれない音楽を自分の手で奏でる体験を提供。今この瞬間の感情を、あなたの手で音楽へ

清水

指の動きをデータとして出力する技術(特許名:にぎり動作に関するデータを出力するデータグローブ)を使っていて、グローブをはめてグー、チョキ、パーをしたり、全身を振ったりすると、それに合わせて音が鳴ります。まさに指揮者みたいな感じですね。今回の展示の説明文では「感情を表現する」ところにフォーカスしているんですが、もともとは音自体もジェスチャーオーケストラという職業の人が収集する設定でした。たとえば海辺に行っていろんな音を拾ってきて、それをデータグローブに流し込み、その時に聞いた音の感情を手で表現する──この「収集する」というところも、人間ならではかなと。

僕らって、スマホでいつでも音楽が聴けるからこそ、日常の大事な音や面白い音を聴き逃しているじゃないですか。こういう職業が生まれて「音の収集って楽しいよね」となれば、「今日は雨だけど、雨の音ってすごくいいな」と日常の感じ方が変わるかもしれない。情操教育に活かせるんじゃないかという話もあって、演奏するアーティストはもちろん、いろんなところに広がりを持っている職業だと思っています。

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―小貫さんは、体験してみていかがでしたか?

小貫

感情と音楽の接続が新しいなと思っています。私は楽器の演奏者ではないので、こんなことを言ったら怒られちゃうかもしれないんですけど⋯⋯たとえばピアノで自分の喜怒哀楽を表現するのって、なかなか難しいなと思うんです。でもジェスチャーオーケストラは、音だけじゃなくて体の動きも合わさっている。ゆったりしたい気分のときは動きもゆったりになるし、気持ちが高まっているときは激しい動きになる。音楽と自己表現がものすごくよく組み合わさっているなと。それがその人の記憶や思い出に結びついてくると、より人間味が増して、味わい深いものになる。本当に、早く商品化したいです(笑)。これ、誰でもできるように見えて、指を曲げる角度や手の角度が結構難しくて、うまい人はやっぱり音が違うんですよね。

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清水

今回エンジニアとしても制作に入ってもらっている「ぺのてあ」さん(※)がやると、めちゃくちゃ上手なんです。やっぱり「演奏」になっていて引き込まれるというか⋯⋯プロみを感じますね(笑)。ただ一番意識したのは、楽器を演奏したことがない人でも「それっぽくなる」こと。プロジェクトメンバーの菊池さんも言っていたんですが、音楽の歴史を振り返ると、人類は拍手や角笛のような、誰でも手軽に演奏できるものから音楽を始めた。それが今はギターやPCでの楽曲制作のように、習熟度が高くないとできないものになってしまっている。だからこそ2045年には、逆に「誰でも演奏できる」音楽が回帰してくるんじゃないか、と。

荒井

AIが浸透した今、「クリエイター」や「ミュージシャン」を名乗るは自由なんだけど、楽器の習得自体にはすごく壁があるじゃないですか。それがこういった技術で解放されると、世代やスキルを問わず、親子が音楽で会話をするような楽しみ方も生まれるかもしれませんね。

―テーマとして掲げられている「人間にしかできないこと」への価値、「ヒューマンルネサンス」という言葉にも通じますね。

清水

「ヒューマンルネサンス」は、オカムラさんとの打ち合わせの中で生まれた言葉なんです。AIが多くの創作を代替してコンテンツが均質化していくからこそ、「人間にしかできないこと」の価値が高まっていく。今回の2つのプロトタイプは、まさに人間が楽しむためのものになっていると思います。

※ ぺのてあ・・・中村優生が主宰する、音・道具・風景のための発明やデザインを行うクリエイティブスタジオ、およびその名義(アーティスト・発明家・デザイナー)。「想像した風景をもとに道具を発明する」を掲げ、手のゆらめきで奏でるアコースティックシンセ「ペノトロン」や「電車と街の楽器」など、テクノロジーと身体・文化を結ぶ独自の楽器やデバイスを制作。それらを用いたライブ・展示に加え、企業向けのデザインエンジニアリングも手掛ける

「エンディングエディター」は、人生のヒントを深堀ってくれる体験

―もうひとつのプロトタイプ「エンディングエディター」についても聞かせてください。紹介文には「人生150年時代と言われる2045年、長すぎる人生の中で目的を見失い、死の間際になって後悔をする『やりのこ死』が社会問題に」──とありますが、「やりのこ死」というキーワードは、流行語も狙えそうなくらいインパクトがありますね(笑)。

phase0-dev sub4 エンディングエディター|人生150年時代と言われる2045年、長すぎる人生の中で目的を見失い、死の間際になって後悔をする「やりのこ死」が社会問題に。エンディングエディターは、対話を通じて、顧客の過去の記憶や後悔、忘れていた夢を丁寧に掘り起こし、未来への材料として「人生を再編集」する新たな職業。今回のプロトタイプ体験では、あなた自身の過去と向き合い、未来の可能性を一緒に探っていく

清水

「やりのこ死」はワークショップの中で出てきた言葉なんですが、発言元が誰かわからないのも面白くて(笑)。「人生が長くなったから後悔も増えるよね」と普通に言われても刺さらなかったと思うんです。このワード設定があったことで職業の幅もめちゃくちゃ広がったし、「マジでありそうだな」と想像しやすくなりました。

―いわゆる「終活」や「エンディングノート」だと少し後ろ向きなイメージですけど、これなら希望を持って「あ、自分こんなことやりたかったんだ!」って思えますよね。このコンセプトに至るまでには、どんな経緯があったのでしょうか。

清水

設計の初期段階では、「やりのこ死」という言葉から、「臨死」を体験するようなプロダクトの案も出ていたんです。「死にゆく瞬間」とはどういうものかという本を何冊か読んだり、死にまつわる話ができる「終活スナックめめんともり」でママさんに話を聞いてもらったり(笑)。実際に棺桶を買って──あまりよくないことをしてるとは思いつつも──自分たちで入ってみたりもしました。でも、このプロダクトの本質を伝えようと思ったとき、「臨死」の部分は必須ではないよね、と。

それよりも、自分が本当に抱えていた「やりたかったこと」は何だっけ? という自分への問いこそが必要なんだという結論に至りました。今回のプロトタイプは、自分自身の「影」をモチーフに、自分と向き合い、本当は何をやりたかったのかを過去から深掘りして、これからの人生のヒントを見つけるという体験になっています。職業としての完成形は、その体験の後にエンディングエディターという職業の人がカウンセリングのようなカタチで、人生を一緒に伴走してくれるイメージですね。

荒井

死を間近にした人だけでなく、人生に悩む20代や30代が相談しに行ってもいい。最初に聞いた印象とは違う前向きな体験であり、あり得る職業になっていますよね。

―実際に「エンディングエディター」を体験してみて、お2人はどんな自己発見がありましたか?

清水

僕は検証で何回も体験したんですが、自分が好きなモノ・コトの起源が分かりました。それは、幼少期にハマっていたカードゲーム『デュエル・マスターズ』です。しかも、強いキラカードで一発逆転するよりも、弱いカードを戦略的に組み合わせる渋い戦い方が好きで(笑)。大人になった今も、アイデアを組み合わせて「いいもの」をつくることに興味があるのは、全部あそこで養われていたんだなあというのが一番の発見でしたね。

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小貫

私はまだ体験を詰めきれていないんですが、これをきっかけに「あえてこのカウンセリングを、AIじゃなくて人にやってもらう意味はどこにあるんだろう」と考えてみたんです。AIって、正しいか正しくないか、倫理的かどうかでしか答えてくれない。でも、成功が約束されているわけじゃなくても「それだけ熱量があるなら、やってみなよ」「突っ走っちゃいなよ」と背中を押してくれるのが人間だなと思っていて。それを拾えるものがエンディングエディターだったらいいなと。

荒井

実は逆のことも言えて、たとえばAIに「数あるアイデアの中で一番いいのはこれですよ」と言われたところで、それをやりたいと思う人がいなかったら、新規事業って成り立たないんですよ。いくら優れたアイデアで、マーケットの成長性もあると言われても、やりたい人が誰もいないプロジェクトは新規事業にならない。いかに感情が、意志が宿るかが、すごく大事なんだろうなと思います。

清水

開発で苦労した点で言うと、エンディングエディターはAIとの対話体験なんですが、チューニング前のAIが結構ガン詰めしてくるんですよ(笑)。ちゃんと回答しないと同じことを何回も聞いてくるので、最初の頃は圧迫面接を受けているような感覚で。あの辺りの調整はかなり難しかったですね。

職業の可能性と、「ワクワク感」を体験できる場所

―荒井さんにお聞きしたいのですが、idea Landscapeから導き出されるアイデアマップは、その膨大さに圧倒されて「眺めて終わり」になってしまうというジレンマもありますよね。

荒井

ええ。いろんな企業とワークショップをやっていますが、その場は楽しく盛り上がっても、そこから次のステップに進むには難しさがあるんです。マップの可視化からR&D、プロトタイプ開発、さらに今回の展示まで到達した、オカムラさんの推進力には僕も感銘を受けました。

小貫

今回のワークショップにはプロダクト開発やデザインのメンバーも入ってくれたんですが、みんな根底には「ものづくりが好き」という気持ちがあるんです。無限の可能性を見せられたときに「自分はこの中から何を創り出したいかな」と考えられただけでなく、プロトタイプもすごく早かったし、クオリティの高いものがどんどん出てきた。日頃オフィス家具の開発をしている方々は、既存の製品領域を起点に発想しやすくなる傾向があります。それが違う事業部の技術を持ってくることで「何ができるんだろう」と。idea Landscapeは、世に公開されている特許であればかけ合わせができるじゃないですか。そこも含めて、思考のジャンプ台としてすごく使いやすいんです。

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荒井

技術を可能性に翻訳することが、実際に研究している人たちにとってのアイオープナーになって、「こんなことができるかも!」と目を輝かせてくれるものに変わる。そこにAIの力があるんだなと思いつつ、最後は「人」なんですよね。

小貫

今回すごく嬉しい出来事があって、この0次開発プロジェクトをきっかけに「自分たちもやりたいんです」と声をかけてくれたメンバーもいました。その人がidea Landscapeの画面を見せて「自分でもアイデアを生成しています」と言ってくれたり。

荒井

それは開発者冥利に尽きますね。結局、特許というのは、オカムラという会社が積み重ねてきた研究とチャレンジの成果であり、学習体系なんです。めちゃくちゃ大事なパッケージなのに、それを俯瞰して見た人がひとりもいなくて、見たところでよくわからない。もったいない資産なんですよ。それをいったん塊からほぐして、いろんな可能性にとにかく変換しちゃう。AIを使って「オカムラって、こういう未来をサポートできる会社なんですね」と視点を変えられたのが、今回のプロジェクトで完璧にハマったなと。すごく感動しています。

清水

企画の初期段階から思っていたんですが、社内の企画や営業の人が知財部に話を聞きに行くのって、すごく緊張すると思うんですよ。難しい言葉で返ってきて、大体許可が下りない⋯⋯みたいな(笑)。それが「こういうことができるんだ!」と分かりやすくなったし、逆に知財部の方々からしても、自分たちがやってきたことが「見える化」された。社内の双方にメリットがあって、潤滑油的に作用しているんじゃないかなという気がします。

小貫

なぜ止まらずに進み続けられたかというと、やっぱり「面白い」という人の共感なんですよね。実際、オカムラにも慎重な考え方を持つ方の人はいるんですよ。でも「今度こういうことをやります」と資料を持っていくと、どの部署も「面白いですね!行きます」と言ってくれる。それはやっぱり、Konelさんの企画力や見せ方、一つひとつの表現力があったからこそだと思います。クリエイティビティでこんなに救われるんだって。

―展示では「50の未来の職業」が紹介されています。お2人の「推し職業」、あるいは「やってみたかったかも」と感じた職業はありますか?

103401-255-e2b582fc41c935828febf3f61e7ae3fb-2250x1266 「0次開発プロジェクトvol.1 まだ存在しない未来の職業展 2045」で展示される「50の未来の職業」のビジュアルイメージ(©OKAMURA CORPORATION.)

清水

僕は「共生デザイナー」が好きです。動物との生き方を設計するデザイナーですね。たとえば都市養蜂って、どうせ屋上に緑をつくるなら蜂も連れてきて蜂蜜をつくってもらおうという、動物とのめちゃくちゃうまい共生の試みじゃないですか。未来にはそれがもっといろんな動物とできるんじゃないかと。例で出していたのは、カラスの収集癖を、ゴミを荒らすほうではなく、うまくゴミを集めてもらうほうに使えないか、という仕組みです。最近はクマ被害の問題などもありますけど、そこをうまく設計する職業は不可欠だと思いますし、オカムラさんが言うところの「人」からさらに拡張して、「生き方」そのものの設計まで進んでいるのが面白いなと。

小貫

私は「スペースデブリクリーナー」です。Konelさんから一番最初に提案書をいただいたときに出てきた職業でもあって。将来、衛星がどんどん打ち上げられて宇宙ゴミが渋滞を起こしたときに、それを清掃する職業の人がいたらいいんじゃないか。そして、その職業を支えているのがオカムラの高精度リクライニングチェアなんです⋯⋯と。未来の課題と職業、プロダクトへの落とし込みがものすごくキレイで、「椅子」ってなかなか未来的なものを想像しづらいですが、「職業」という可能性で頭をぶん殴られたなって(笑)。あのときのワクワク感をずっと大事にしたいなと思っています。

DSF3330小貫さんイチオシの「スペースデブリクリーナー」は、宇宙の交通渋滞を解消し星空とデジタル社会を繋ぐ軌道管理官。「まだ存在しない未来の職業展 2045」の「50の未来の職業」でも紹介されている 小貫さんイチオシの「スペースデブリクリーナー」は、宇宙の交通渋滞を解消し星空とデジタル社会を繋ぐ軌道管理官。「まだ存在しない未来の職業展 2045」の「50の未来の職業」でも紹介されている

―最後に、2045年の話を。AIが進化した未来を見据えることは、Konelが提唱する「Good Singularity」とも共鳴します。来たる2045年にむけて、みなさんが夢見る世界、AIとの理想的な付き合い方を聞かせてください。

清水

なかなか壮大で難しいですね(笑)。個人的な話ですが、8月に子どもが生まれるんです。それもあって、次の世代は「何ネイティブ」になるんだろう? と考えていて。今は「AIネイティブ」という言葉がありますが、生まれたときからAIが一緒にいるのが当たり前の子たちは、僕らが考える「AIに奪われる」という文脈ではなく、何でも寄り添って実現してくれる『ドラえもん』的な存在として捉えるんじゃないかな。そうなったときに、もっと自由な世界の広がりがあるんじゃないか。僕らよりずっと若い人たちが、AIをどう扱っていくのか──そこにすごく興味があります。

小貫

私は「遊び相手が増える」感覚なんだろうな、と思っています。昔からひとり遊びができるタイプの子どもだったんですけど、そのひとり遊びの質感や、できることがグッと増えることの期待があって。フィジカルAIに何かを投げかけたときにレスポンスが返ってくるって、ものすごく面白いなと。AIを生きることで人間も同時に賢くなっていくし、何かを深めていくスピードも高まっていく。でも、だからこそ「人と関わることの何が大事なんだろう」と考えさせられる。そのうち、人間関係で悩むようにAIとの関係で悩んだりするんですかね(笑)。個人的には、今後もAIとポジティブに関わっていけたらと思っています。

荒井

そんな未来を一足先に体験できるのが、「まだ存在しない未来の職業展 2045」ということですね。

清水

そうですね! 来場予約は当日でも可能ですが、プロトタイプの体験予約のほうは結構枠が埋まってきているのでお早めに。とはいえ、「50の未来の職業リスト」を眺めるだけでも楽しめると思いますので、ぜひ会場に足を運んでみてください。

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Interview, Edit:Kohei Ueno
Photo:Daisuke Okamura

まだ存在しない未来の職業展 2045

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名称 :0次開発プロジェクト vol.1 まだ存在しない未来の職業展 2045
開催日時:2026年6月18日(木)~6月26日(金)10:00~18:00(初日は15:00~18:00)
開催場所:東京都港区高輪2-22-1 THE LINKPILLAR 2 14階
アクセスhttps://www.takanawagateway-city.com/access/
入場料
:無料
※ウェブサイトより来場予約が必要です。※プロトタイプ体験は、来場予約に加えて体験予約が必要です。
主催:株式会社オカムラ
参画:株式会社コネル(「未来の職業」およびプロトタイプの開発、クリエイティブディレクション)
ウェブサイトhttps://www.okamura.co.jp/cocreation/phase0-development-project/

小貫 絢子

小貫 絢子

株式会社オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター

2017年オカムラ入社。フィールドセールスとして企業の働く場の構築に携わる。現在は新規事業部門にて、自社の特許技術と社会課題を掛け合わせながら、ゼロから新しい価値を生み出す「0次開発プロジェクト」を推進中。既存事業の枠を越えた新しい空間やプロダクトの可能性を探索している。

清水 陸

清水 陸

Konel Inc. プランナー/コミュニケーションデザイナー/プロデューサー

1994年静岡県静岡市生まれ。複数の広告会社にて、プランナーとして戦略設計、企画・制作等の業務に従事したのち、Konelに参画。 オンラインからオフライン、マスからニッチなど、領域やメディアを限定しない統合コミュニケーションが好き。

荒井 亮

荒井 亮

知財図鑑 編集長

1977年東京都生まれ。立教大学社会学部卒。クリエイティブ会社THINKRにてライブ配信事業「2.5D」のプロデューサーとして番組の企画制作、アライアンスやチームビルディングを担当。その後、Konelに所属し「知財図鑑」を立ち上げ、クリエイティブ x テクノロジーでのイノベーション推進を進める。AI✕知財による「ideaflow / idea Landscape」を開発し、知財の流動性を高めるアクションを推進。web3やブロックチェーンによるオープンサイエンス領域に関心があり、様々なDAO的コミュニティに関わる。虎ノ門ヒルズインキュベーションセンター「ARCH」メンター、特許庁「I-OPEN」2022年度メンター。Forbes誌『NEXT100』(2025年)に選出。

株式会社オカムラ

オカムラはHUMAN-ORIENTED COMPANYへ。あらゆる空間づくりを通して、「人」の可能性を拓き、新しい当たり前を創り上げる会社を目指します。

オカムラはHUMAN-ORIENTED COMPANYへ。あらゆる空間づくりを通して、「人」の可能性を拓き、新しい当たり前を創り上げる会社を目指します。

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