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大阪・関西万博

2025.12.22

レポート

ワクワクが知財を身近にする ―2025大阪・関西万博を通して未来を描くアイディエーションの可能性

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特許庁が2025大阪・関西万博会場EXPOメッセ「WASSE」で行った「明日を変える知財のチカラ~想いを届ける、世界をよくする~」のステージイベントとして開催された関西・共創の森CHIZAI Forum。

「ワクワクが知財を身近にする」をテーマに、「共創に取り組む地域の大企業・中核企業」と共に5つのテーマでトークセッションを展開。「一見難しそう」に感じる知的財産権を、具体的な事例やうまく活用する企業の生声を通して身近に感じる機会が提供された。

今回は、開催の様子を伝えると共に、知財図鑑の荒井亮が当時の登壇者と「万博を通して未来を描くアイディエーションの可能性」について語り合った。

オープンファクトリーと知財

session1 1007s 10月7日セッション①

session1 1008s 10月8日セッション①

オープンファクトリーを切り口に、企業の知財活用と情報公開の在り方を探った2セッション。共和鋼業株式会社、藤田金属株式会社の事例を通じ、「何ができるかは見せ、なぜできるかは隠す」という知財運用の原則を共有。工場公開によるブランド価値や共創促進の効果、そして情報管理の重要性を紹介し、地域企業が知的資産を戦略的に活かす姿を描いた。

デザインから触発する知財

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デザインの力で技術と知財をつなぎ、新たな価値を生み出す視点が語られたセッション。錦城護謨株式会社は社員主導で開発した透明な「シリコーンロックグラス」により、技術の魅力と誇りを可視化し、知財功労賞を受賞。知財図鑑は、知的財産を発想の起点として社会実装へ展開する手法を紹介。デザインを介して技術や人の想いを形にし、知財を創造の原動力として活かす可能性が示された。

大企業のアイデアから創発する知財

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知的財産を「守る」機能から「育て、社会とつなぐ」資産へと再定義し、企業の創造力と共創の可能性を探ったセッション。株式会社カプコンは知財部を「チザイブ」と再定義し、社内コミュニティやブランドづくりを通じて、創造性を育む土壌を形成。株式会社オカムラは社員主導の演劇「ザ・オカムラ座」や体験展示「キモチキオスク」を展開し、共創による新たなブランド価値を創出。両社が“知財×人×文化”の循環による未来志向の知財像を提示した。

予想外のアイデアに触発される知財

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“守る”だけでなく、“育て、循環させる”資産としての知的財産のあり方を探ったセッション。株式会社カプコンは知財をビジネスや創造の伴走者と捉え、社内外の共創を促進。万博のデザインシステムから生まれた「こみゃく」は、市民参加による二次創作の広がりを通じ、公共と創造の新しい関係を提示した。知財を社会や文化と結びつけ、未来をデザインする視点が共有された。

地方創生に寄与する知財

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知的財産を地域や社会と共有し、新たな価値を生み出す視点を探ったセッション。企業の枠を越え、地域や人と連携して知財を活かす取り組みを紹介した。ゲーム、ファッション、デザインといった分野が交わり、地域資源の再発見や共創の循環を促進。万博を契機に、企業と地域が共に未来を描く「共創型の知財活用」という新たな可能性が示された。

登壇者と振り返る「万博を通して未来を描くアイディエーションの可能性」

荒井:改めて登壇機会の多かった経済産業省の津田さん、カプコンの奥山さんと当日のトークを振り返って得られた気付きについてお伺いしてみたいと思います。

津田:「知財」を共通のテーマとしつつ、多様な切り口の各セッションでしたが、「万博があったから取り組むきっかけに繋がった」というお話が多かったと思います。アーバンリサーチさんが取り組んでいた「大阪オノマトペ」などもその典型ではないでしょうか。「万博」の機会を企業さん達が良い意味での言い訳として共創・アイディエーションが触発されていたような印象を受けました。

奥山:カプコンとしても、もちろん守りの意味での知財も大切である一方で、企業のブランド価値を高めるための「知財=アイデア」となるよう「夢を語る」ということを大切にしています。大人になってから夢を語るのは少し恥ずかしいと思うかもしれませんが、今回の万博自体が「未来社会の実験場」というテーマでもあったので、良い意味で「万博のせい」にして夢を語ることの障壁を下げたような気がします。

荒井:確かにそうですね。知財図鑑も様々な場面で万博に関わらせていただきましたが、「万博だから」という言葉は不思議と各社の取組に対して高揚感を生み出していたような気がします。また、「万博後」という観点においてはいかがでしょうか?

奥山:万博では、通称「こみゃく」と呼ばれていたデザインシステムの「ID」が参加者に広く愛され、多くの二次創作をはじめとしたアイディエーションを促進していました。僕自身がその設計思想に感銘を受けたことがきっかけで、現在、カプコン社内にも万博にインスパイアされたデザインシステム「こかぷ」の導入を進めています。

社員の創造性を引き出すためのデザインシステムを構築し、社内にワクワクが広がる仕掛けとしてインナーブランディングに繋がるのではないかと思っています。また、社内用のデザインシステムを作る中で、自分自身が改めて自社のロゴを好きになるというか、誇りを持てるようになってきました。

今はまだ知財部の中だけでの取組ですが、いずれはこの「こかぷ」と共にアイディエーションの促進を社内全体に浸透させていきたいと考えています。

津田:セッション内でも話題になった「ミャク市!」や「Co-Design Challenge」も同様なのかもしれませんね。一過性の万博会場内で終わるのではなく、それをまた各地に送り・戻し・使用することによって万博の理念を引き継ぎ、進化させていくような万博後のレガシーといえるような動きだと思います。

荒井:「万博ロス」「アフター万博」など、一般の方々が積極的に会場を「訪れて楽しむ」方々をたくさん生み出した今回の万博でしたが、共創の機会として「使って楽しむ」個人や企業を多く生み出した万博だったとも言えるのではないでしょうか。きっと万博がご縁で始まり、続いている共創が各地で芽吹いていると思いますので、こうした動きを活かし、皆さんで未来を描き続けていきたいですね。


【登壇者プロフィール】
パネリスト/ファシリテーター
荒井 亮/株式会社知財図鑑 編集長・代表取締役COO

Forbes JAPANが選出する、社会を動かす起業家・リーダー100名「NEXT100」に選出。2020年に「知財図鑑」を立ち上げ、テクノロジーを社会実装するための情報発信を行う。AI✕知財による「ideaflow」を開発し、知財の流動性を高める活動を推進。

太田 泰造/錦城護謨株式会社 代表取締役
ものづくりの街・八尾に本社を構え、ゴム製品の製造販売と地盤改良事業の二本柱で事業を展開し、その高い技術力を活かして大阪・関西万博会場の地盤改良も担当した。近年はガラスのような透明感を持つ「シリコーングラス」シリーズなど、デザイン性と機能性を融合した新製品開発にも注力。

岡本 栄理/株式会社オカムラ WORK MILL コミュニティマネージャー
オフィス家具メーカー・株式会社オカムラに所属。人と働く場の関係をテーマに、共創型の働き方やコミュニティづくりを推進している。WORK MILLのコミュニティマネージャーとして、多様な人々が交わる場をデザインし、オカムラのパーパスである「人が活きる社会の実現」を推進している。

奥山 幹樹/株式会社カプコン 知的財産部長
「バイオハザード」「モンスターハンター」「ストリートファイター」などのコンテンツを生み出す、株式会社カプコンに所属。知財を「守る」だけでなく、「創る・つなぐ」資産として捉え、知財を企業成長・未来社会につなげるデザインを行う。

齋藤 精一/パノラマティクス 主宰
建築デザインをコロンビア大学で学び、2006年に株式会社ライゾマティクス(現・株式会社アブストラクトエンジン)を設立。2020年には「CREATIVE ACTION」をテーマに、地域デザイン・観光・DXなどを手がけるデザインコレクティブ「パノラマティクス」を結成。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。

津田 哲史/近畿経済産業局 地域連携推進課 総括係長
全国の「地域一体型オープンファクトリー」のネットワーク構築や、2025年大阪・関西万博に向けた中小企業支援を推進。地域資源を可視化し、人をつなぎ、機運を生み出す“つなぎ手”として、幅広いプロジェクトを牽引する。

引地 耕太/クリエイティブディレクター
2025年大阪・関西万博のデザインシステムにおいて、“いのち”を象徴する存在として生まれたIDエレメント、通称「こみゃく」を発案。会場内のアート企画や空間演出を手がけた。

藤田 盛一郎/藤田金属株式会社 代表取締役
ものづくりの街・八尾を拠点に、鉄製キッチン用品の製造を手がける。地域の工場が一般に公開される「オープンファクトリー」に積極的に取り組み、現場の魅力を広く発信している。

宮 啓明/株式会社アーバンリサーチ SDR シニアチーフ
アーバンリサーチのサステナビリティ推進として、社内外と連携しながら環境・社会課題解決への貢献を目指し活動中。全国各地の地域コミュニティと連携して商品開発やブランディングを手がける「JAPAN MADE PROJECT」では全体ディレクションをはじめ、産地間や異業種間の連携、企画のコンセプト設計、商品開発、プロモーションなどを担当。

宮尾 展子/株式会社ダン計画研究所 代表取締役
大阪を拠点とするシンクタンク。近畿経済産業局の調査事業として、オープンファクトリーにおける知的財産のリスクや留意点をまとめた『オープンファクトリー時の注意点〜魅せるための転ばぬ先のつえ〜』を作成。

森永 耕治/共和鋼業株式会社 代表取締役
モノづくりのまち・東大阪でひし形金網製造を手がける。地域一体型オープンファクトリー「こーばへ行こう!」に参画し、産業と地域をつなぐ開かれたものづくりを実践している。

司会
池田 愛恵里

2022年よりセレッソ大阪のスタジアムMCを務め、2023年からはセレッソ大阪ヤンマーレディーススタジアムDJにも就任。レポーター、ラジオパーソナリティ等としても幅広く活躍中。

西川 大介
2001年よりセレッソ大阪のスタジアムDJを務め、2023年からはスタジアムクリエイターにも就任。豊富な演出経験を活かし、本トークセッションを“声”と“空気”で盛り上げた。

※プロフィール五十音順


●トークセッション 開催概要
関西・共創の森 CHIZAI Forum
日程:2025年10月7日(火)・8日(水)
会場:大阪・関西万博 EXPOメッセ「WASSE」ステージ

● 10月7日(火)
総合司会:西川 大介
■ セッション①
オープンファクトリー時の注意点 〜魅せるための転ばぬ先の杖〜
パネリスト:森永 耕治(共和鋼業株式会社)、宮尾 展子(株式会社ダン計画研究所)
ファシリテーター:津田 哲史(近畿経済産業局)

■ セッション②
大企業のアイデアから創発する知財
パネリスト:岡本 栄理(株式会社オカムラ)、奥山 幹樹(株式会社カプコン)
ファシリテーター:荒井 亮(株式会社知財図鑑)

■ セッション③
予想外のアイデアに触発される知財
パネリスト:奥山 幹樹(株式会社カプコン)、引地 耕太(株式会社VISIONs)
ファシリテーター:荒井 亮(株式会社知財図鑑)

● 10月8日(水)
総合司会:池田 愛恵里
■ セッション①
オープンファクトリー時の注意点 〜魅せるための転ばぬ先の杖〜
パネリスト:宮尾 展子(株式会社ダン計画研究所)、藤田 盛一郎(藤田金属株式会社)
ファシリテーター:津田 哲史(近畿経済産業局)

■ セッション②
デザインから触発する知財
パネリスト:太田 泰造(錦城護謨株式会社)、荒井 亮(株式会社知財図鑑)
ファシリテーター:津田 哲史(近畿経済産業局)

■ セッション③
地方創生に寄与する知財
パネリスト:宮 啓明(株式会社アーバンリサーチ)、奥山 幹樹(株式会社カプコン)、齋藤 精一(パノラマティクス)
ファシリテーター:津田 哲史(近畿経済産業局)

https://www.kansai.meti.go.jp/2giki/202510kyousouCHIZAI.pdf

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