Pickup

2021.04.26

レポート

『wearbo(ウェアボ)』/「Todai To Texas」全6チームインタビュー

東京大学/Todai To Texas

c292d1a663c098e30c46a21b0045ddc7-2048x1142
引用元: https://wearbo.com/

34年の歴史上、初の完全オンラインとなった世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Online 2021」。昨年の新型コロナウイルスによる中止を経て、今年は5日間に渡るオンライン開催によって画期的なXRコンテンツの数々を自宅から体験できるという異色の開催となりました。


東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」からも個性の異なる6つのチームが出展。それぞれのチームにオンラインにてインタビューを行い、プロジェクトの概要と技術の先に思い描く未来について聞きました。全6回に分けてお届けします。

SXSW2021format-3

今回ご紹介するのは「wearbo(ウェアボ)」チーム。東京大学大学院学際情報学府でチームリーダー/エンジニアを務める篠田和宏さんにお話を伺いました。

Profile
東京大学の、篠田和宏(大学院学際情報学府)/安斉周(大学院情報理工学系研究科)/佐野由季(大学院工学系研究科)/原田珠華(教養学部)の4人からなるチーム。大学の授業で出会い、2019年夏から「wearbo」のプロジェクトをスタート。これまでに大学のプログラムやIPA未踏IT人材発掘・育成事業などを通して開発を進めてきた。日本最大級のハードウェアコンテスト「GUGEN2019」での優秀賞受賞や、「iREX国際ロボット展2019」への出展といった実績がある。

アイズフリーな着られるウェアラブルキーボード「wearbo」

wearbo(ウェアボ)は布製のウェアラブルキーボード。ズボンに縫い付けたストライプ状の電極を操作することで、スマートウォッチやスマートグラスと連動し「アイズフリー」な状態での手書き文字入力が可能となります。

●このプロジェクトの開発の背景について教えてください
スマホが登場して10年が経ちますが、その次の10年でデバイスはどうなるか? を考えて開発しました。私たちはこの先、スマホの代わりに身につけられる「ウェアラブルデバイス」がより活躍する時代が来るのではないかと考えています。ただ、現状のスマートグラスやスマートウォッチでは、文字の入力面が小さかったり自然な姿勢で行うことができなかったりという課題があります。そこで、便利さを犠牲にせずに使える「着られる文字入力デバイス」として「wearbo」を開発しました。身近なところで言えば運動中や、または建設や工場の現場など両手を空けておきたいシチュエーションの需要は数多くあるのではないかと考えています。

●この技術の特徴や強みについて教えてください
3つあると考えていて、まずは「追加のデバイスが必要ない」ということ。服は基本的に誰もが身につけているものなので、入力のために別のデバイスを持ち歩いたり身につけたりする必要がありません。2つめは「入力方法を覚える必要がない」という点。従来のウェララブルデバイスはボタンの押す回数で操作したりと習得の必要がありましたが、wearboは手書き入力なので誰でも身につけたらすぐ実用できます。そして3つめは「アイズフリーな設計であること」。入力するときに手元を見ないといけないデバイスだと視線をそこに送る必要がありますが、スマートグラスとwearboを連動すればブラインド入力が可能で、自然な姿勢を維持したままでコントロールができます。また、ストライプの縦方向の指の動きだけで感知する「一次元手書き文字認識」のソフトウェアを独自に搭載しているのも大きな特徴です。

●今後、どのような領域のパートナーと協業したいですか?
技術面では、現状タッチする刺繍部分は防水ですがポケット部分に装着する回路デバイスそのものは洗濯する際に取り外さなければいけない課題があります。なので、デバイス全体を防水にする技術がある協業パートナーがいるとさらに実用的に進化するかと思います。また、服としてのルックの魅力を高めることも一般の方に受け入れられるためには重要なポイントなので、アパレルデザイナーの方に衣服全体のディレクションしていただけると嬉しいです。

●この技術を生かし、どのような未来をつくりたいですか?
「全てを身につけてどこまでも出かけられる」未来の実現を目指しています。ただ、ウェアラブルデバイスがスマホの代わりにはなるのは現実的にすぐには難しいと感じています。なので、まずは製造業・建設業・医療従事者の方の現場で実装していただくことがwearboの第一歩かなと考えています。さらに飛躍すると、文字入力以外のギミックをつけて演劇やコスプレの衣装として活用するなどしても面白いかもしれません。

スマートグラスやスマートウォッチの進化・開発が進む中、さらに視点を進めて入力方法の最適化を目指した未来的なビジョンを、衣服という誰しもが普遍的・日常的に身につけているデバイスに落とし込んだ点に今後の実用性のリアリティを感じます。電極を見た目のワンポイントと見立ててアパレルブランドとコラボすれば、テクノロジー好きのファッション感度の高い人に刺さりそうです。演劇という話もインタビューの中で出ましたが、触れると音や光が出る仕様にすることで手持ちの楽器がいらない「全身サンプラー」なども実現できるかもしれません。

「wearbo」HP
https://wearbo.com/

「Todai To Texas」HP
https://todaitotexas.com/

広告