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2023.03.01

レポート

ヒトの感情で育つ花は、受験前の進学塾でどう咲くか?―「Log Flower(ログフラワー)」実証実験レポート

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生徒たちの声をどう反映する? 「Log Flower」を進学塾へ導入

株式会社東急エージェンシーによる「半歩未来のアイデアを開発するプロジェクト『GG(仮) 』」とクリエイティブ集団Konelは、部屋の雰囲気(感情)を栄養にして育つデジタル上の観情植物「Log Flower(ログフラワー)」のプロトタイプ開発を行い、2022年8月にベータ版を公開しました。「Log Flower」は、音声感情解析AIであるEmpathを使用し、部屋の感情にひもづいたオリジナルの形状や色の花を咲かせるプロダクト。取得した感情が「平常」であれば白、「喜び」は黄色、「悲しみ」は青、そして「怒り」は赤として種から色づき、30日かけて蕾から満開へと育っていきます。

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吸収する感情によって成長の仕方が変わっていく「空間の写し鏡」のような存在であり、人のコミュニケーションのあり方に気づきをもたらすことを目的に制作されたデジタル植物「Log Flower」。

2022年12月26日、この「Log Flower」を「中名進学塾 氷室校(愛知県名古屋市)」にて、主に中学受験を控えた小学6年生が利用するクラスに設置し、1か月間の実証実験を行いました。

本記事では、「Log Flower」の存在が生徒たちの感情や言動にどのような影響をもたらしたのかをレポートします。実験結果とともに、体験者代表として先生と生徒たちに導入の動機や実験期間の様子、感じた変化などについて伺いました。

興味津々の生徒たち、感情を吸収して種から蕾へ

写真 2022-12-26 9 55 59 名古屋市南区にある「中名進学塾 氷室校」。今回の実証実験は中学受験を控えた6年生たちを対象に行われた。

IMG 8936 授業の妨げにならないよう教室の後方に設置された「Log Flower」。横の机には感情解析の機能説明書も。

IMG 8963 設置初日に生徒たちに囲まれる。ワードではなく「わぁ!」「おーい!」と音そのものを浴びせる生徒も。

実証実験では、事前に先生から生徒に向け「Log Flower」の説明会を実施。説明会の時点から楽しみにしていたという生徒が多くおり、設置直後から「Log Flower」に生徒が集まり話しかける様子が見られました。実際にアンケートでも、設置期間中「『Log Flower』に話しかけた」と答えた生徒は全体の8割にのぼりました。

ここからは、「Log Flower」が生徒の声を吸収して徐々に育っていく様子を写真で紹介します。

20221231のコピー 一週目の種の状態。まだ複雑な色味をしている。

20230103 (3のコピー 種から芽が出た状態。「喜び」の黄色が大きくなりつつも、「悲しみ」の青や「怒り」は赤のニュアンスも混ざり合い、生物のように育っていく。

測定記録メモ 中には塾に来るたびに、芽の成長を定規で測り記録していた生徒も。

設置期間中は、子どもたちが色の変化をつけ、カラフルにさせようと、さまざまな感情で語りかけるように試行錯誤している光景も見られました。蕾から花びらが出て粒子が飛ぶ様子が映し出された時は、一番の盛り上がりに。「花の中の色が見えた時に、みんな興奮した」と、印象深いシーンが生まれました。

グラフ ログフラワー 3 開花から満開の様子(3〜4週目)。

「Log Flower」と1ヶ月過ごした生徒たちの声

実際に「Log Flower」の成長の過程を観察すると、蕾の段階では黄色(喜び)を中心としながら、青(悲しみ)や赤(怒り)の感情が反映されているように見られました。しかし最終的には、黄色一色の花が咲く結果に。この1ヶ月間、教室内ではポジティブな感情でコミュニケーションが行われていたということが可視化されました。一方で、「子どもの声は平均して高いため喜びの感情にカウントされやすく、その結果全体的に黄色くなったのではないか」という推測も開発メンバーから生まれました。

また、実証実験後におこなった生徒へのアンケートでは、「Log Flower」が感情を吸収することについて、半数の生徒が「前向き/やる気」になると回答。そのほか、3割が「リラックス/癒し/ストレス発散」、2割の生徒が「おもしろい/嬉しい」と回答しました。

グラフ ログフラワー 修正1

また、「『Log Flower』が成長や変化する様子によって、教室にいる時の気持ちや言動、習慣などに変化はありましたか?」という質問に対しては、4割の生徒から「会話が増えた」、3割から「笑いが増えた」、1割強から「自分の言動を意識した」といった回答があり、「Log Flower」の存在によって自身のコミュニケーションのとり方に対して意識的になる変化があったことがわかりました。

一方で一部の生徒からは、会話が増えることによって「教室がうるさくなった」という回答もあり、「Log Flower」があることで、必ずしも集中しやすい環境になるわけではないこともわかりました。

グラフ ログフラワー 修正2

実験を終え、生徒へのヒアリングも実施されました。その感想コメントを一部紹介します。

まず多かったのが、自身や他の生徒のポジティブな変化を感じ取ったという生徒です。

「塾に行くのが楽しみになっていた」
「無表情な子がいっぱい笑うようになって、喋るようになった」
「Log FLowerの近くにみんな集まるので、普段喋らない子とも会話した」

また、1ヶ月間「Log Flower」と接する中で愛着が湧いたようで、

「ペットのように『ハナコ』と名前をつけて可愛がっていた」
「休み時間に他のクラスからも気になって見に来る人がいた」
「なくなったら教室が静かになった」

などと、撤去を惜しむコメントも散見され、

「1か月はあっという間で短く感じた」
「1年で2回くらい花が咲くのを楽しみたい」
「塾だけでなく学校にもほしい」
「音楽室や図書室に置くとどんな花になるか気になる」

と、日常のあらゆる場所に「Log Flower」を設置したいという声もあり、塾以外での活用も期待されました。

一方で、現在の仕様に関するコメントもいつくか寄せられ、

「花の種類や色のバリエーションがもっとみたい(感情の種類を増やしてほしい)」
「語りかけた言葉が、お水のように注がれるような演出があったら良さそう」
「咲いて終わりではなく、しぼんで枯れるまでの過程を最後まで見届けたい」
「背景にその日の天気が映るような演出があったら良い」

と、今後の改善のヒントとなるような具体的なアイデアも多く出ました。

「どういう仕組みなのか、中の構造がすごく気になる」
「人が作ったと思えないほどすごい!」

という、プロダクトそのものに感心する声もありました。

先生の視点から見た「Log Flower」が教育現場にもたらす可能性

実証実験終了後には中名進学塾氷室校の吉田先生にもインタビューを実施。教育現場に「Log Flower」を設置することのメリットについて語られました。

吉田写真 能力開発講座 主任・吉田しおり先生

Q.今回「Log Flower」設置に至った背景を教えてください。

吉田先生(以下:吉田):「Log Flower」を設置し実証実験を行ったのは、中学受験向けのクラスになります。このクラスは、当塾のなかでもハイレベルな内容を取り扱うため、普段から教室には緊張感が漂っています。そのような環境からか、ケンカというほどではないにしても、普段の何気ない会話から相手が不快になりうるような冗談を言い合う場面も少なくありませんでした。特に年末から年始にかけては受験期の真っ只中。みんながピリピリしやすい時期ですから、当事者の生徒だけでなく、教室全体に悪い影響があるのではないかという心配もありました。そんな中、テレビのニュース番組で「Log Flower」が紹介されているのを拝見し、ぜひ設置したいと思い提案しました。塾内でも、他の先生方から「面白そうだね」という反応があり、設置までスムーズに話が進みましたね。

Q.「Log Flower」が設置された初日や満開になるまでの期間、生徒の反応はいかがでしたか?

吉田:設置されてすぐマイクに近づいて話しかける子もいましたが、どんな言葉を話せばいいかわからない子もいました。また、声だけでなく拍手などさまざまな音を出し、どの音がどんな色(感情)を検知するのか実験している様子も見られました。設置した直後は種が青かったのですが、夕方に生徒が帰るころには種が黄色く変わっていたのが印象的でした。みんなでニックネームも考えて、花が満開になるまで誰かしら話しかけており、最後まで楽しんでいるようでしたね。実証実験が終わり、「Log Flower」が撤去されると、名残惜しそうにしている生徒も多くいました。

Q.「Log Flower」が設置されたことで生徒同士、あるいは先生と生徒のコミュニケーションで何か変化はありましたか?

吉田:お互いを傷つけるような言葉は減ったように思います。また、「Log Flower」のおかげで生徒同士のコミュニケーションのハードルが下がったようで、今まで話していなかった生徒同士が仲良くなった様子も見られました。さらに、あまり発言しない生徒が授業中に発言したり、授業後に話しかけてくるようになったりと、とてもポジティブな影響がいくつかありましたね。

Q.先生同士の中では何か変化はありましたか?

吉田:やはり私たちの理想は、黄色い花が咲くことでしたので、いままで以上に生徒同士のコミュニケーションを気にするようになりましたね。以前は「冗談の言い合いが多いのは仕方のないこと」と、半ば諦めていたというか、慣れきってしまっていましたが、改めて「教室内をポジティブなムードで過ごせるようにしよう」と気を引き締めることにつながりました。

Q.1ヶ月にわたる実証実験期間を振り返り、感想や改善点などがあればお聞かせください。

吉田:教育現場で設置するメリットは大きいと思います。「Log Flower」は塾内で注目を集めただけでなく、実際に教室の雰囲気も良くなりましたので、「Log Flower」の存在は生徒さんや親御さんが学校や塾を選ぶ指標の一つにもなりうるのではないでしょうか。また、今回は1ヶ月間の設置でしたが、可能であれば1年間置いてみたいですね。みんなで一つのものを育てていくという経験は教育的にも好ましいと思いますし、1年間で咲いた花を記録しカレンダーなどを作ることで思い出の品にもできると思います。気になった点としては、花が黄色一色だったことは喜ばしい結果だったものの、「もっといろんな色が見たかった」と話す生徒が多かったことです。もっと細かい感情を検出し、それによってカラフルな花が咲いてくれると、より楽しめるのかなと感じました。


インタビューやアンケートから、「Log Flower」が好意的なコミュニケーションを生むことが実証されたほか、教育現場での活用は大いに期待できる結果となりました。

場の空気や人間関係を可視化する「Log Flower」は、オフィスや商業施設、医療現場などさまざまな場所での応用の可能性を秘めています。引き続き「Log Flower」による実証実験の受け入れは募集していますので、ポジティブなコミュニケーションをつくり出したい方はぜひ問い合わせてみてはいかがでしょうか。

▼「Log Flower」の詳細はこちら
https://gg-beta.com/lf/LogFlowerSumally.pdf
▼「Log Flower」に関するお問い合わせはこちら
https://gg-beta.com/

Text:宇治田 エリ/編集:松岡 真吾

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