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2025.12.12
レポート
Project Design Camp @KURKKU FIELDS 開催レポート 「土に触れプロジェクトの秘訣を探る宿泊研修」

難題に立ち向かうプロジェクトリーダーたちの宿泊研修「Project Design Camp」が、2025年11月20日-21日に千葉・木更津市のKURKKU FIELDSにて開催されました。
KURKKU FIELDSの壮大な計画をリードしたメンバーの話を聞き、実際に現地の土や野菜に触れながらそれを体感し、プロジェクトデザインの視点を学ぶ濃密な1泊2日。この記事では当日の様子をレポートします。
ポッドキャスト「Project Design Room」から生まれた、体験型プログラム
近年重要性が高まっている“プロジェクトデザイン”という考え方。プロジェクトを管理する“プロジェクトマネジメント”とは異なり、自由な発想を拡張したり、革命的なアイデアや可能性の幅を設計していくプロジェクトデザインは、その特性ゆえ体系化しにくいものでした。それならば、実際に難題に立ち向かってきたプロフェッショナルの視点や経験からデザインのエッセンスを学ぼう、という思いをもとにKonel/知財図鑑が続けてきたのが「Project Design Room」というポッドキャストです。
▶︎「Project Design Room」最新話はこちら
番組ではこれまで25人のゲストと対話を繰り返し、さまざまなプロジェクトデザインを深掘りしてきましたが、実際にそれをリアルな場で各界のプロジェクトリーダーたちとやってみよう、という試みが今回のProject Design Campなのです。
初開催の会場とメインテーマは、番組で取り上げた中でも反響の大きかった「自然・農・食・アート・学びが共鳴し合うサステナブルファーム:KURKKU FIELDS」に依頼。このプロジェクトの各フェーズを牽引したメンバーをゲスト講師にお招きし、さまざまな体験を交えながら参加者同士で学びを深めるプログラムを実施しました。
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プレゼンター
「0→1」 藤原徹平・中村駿太(フジワラボ)
「1→10」 新井洸真(KURKKU FIELDS)
「10→♾️」佐藤剛(KURKKU FIELDS)
フィールドツアー・運営:佐藤剛・岩佐直美(KURKKU FIELDS)
企画・ファシリテーション:出村光世(Konel)
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DAY-1「KURKKU FIELDSを頭と体で感じる」
1日目は正午にKURKKU FIELDSに集合。13名の各界のプロジェクトリーダーたちが全国から集まりました。その専門分野は不動産・製造・VC・メディア・地域経済・IT・教育etc…と実に多様でしたが、共通点は“プロジェクトを動かす中心に立つビジネスパーソン”であること。
KURKKU FIELDSという大きなプロジェクトの背景に何があるのか?それぞれの活動へのヒントを探るべく、この地に足を運んだメンバーです。
会場のKURKKU FIELDSは、東京ドーム約6個分という広大な敷地を有し、さまざまな「循環」を体感できる複合施設。オーガニックファーム、酪農場、それらを味わうためのレストランやカフェ、ショップや宿泊施設があります。 豊かな自然環境の中に想像力をかきたてるアート、 自由に遊べるプレイパークもある、 大人はもちろんお子様も楽しめます。
イントロダクションでは施設の概要説明と参加者の自己紹介をした後、早速フィールドへ。
ディナーに使う食材を探しに、皆でカゴを持って見学&収穫に向かいました。
「0→1」の話 byフジワラボ
フィールドから戻ると、KURKKU FIELDSが誕生するまでの「0→1」フェーズについて、建築とランドスケープの設計事務所である株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ(以下、フジワラボ)・中村駿太さんのプレゼンがスタート。
フジワラボとKURKKU FIELDSとの連携の始まりは、小林武史さんが立ち上げた一般社団法人ap bankが東日本大震災を機に開催した、アート・音楽・食の祭典「Reborn-Art Festival(2016年〜)」にフジワラボが参画したこと。当時既に農業法人も設立していた小林さんが構想する、“農”にフォーカスしたKURKKU FIELDSのマスタープランの立案から建築設計までを、数年間に渡り担当しました。
中村さんからは、何度も練り直されたマスタープランや事業計画の大転換など、数々の困難をいかにして乗り越え理想の形にしていったのか、そのプロセスを丁寧にお話し頂きました。
中盤からは、(当日インフルエンザのため現地参加が叶わなかった)フジワラボ主宰・藤原徹平さんもオンラインで登場。
「とにかくプロジェクトを行う土地を歩くこと。歩きながら会話して見えてくることがたくさんある。KURKKU FIELDSのオーナーである小林武史さんは誰よりもここを歩いていた。」
「最終的に水の流れを軸にレイアウトを考える方向に大転換したが、そこに至るまでのプロセスも大事だった。いきなり最適解には行きつかないもの。」
「建築においては比較的地味な開発設計(水、土、電気などのベースを考えるフェーズ)にこそ、実はクリエイティビティが必要。そこが変わると日本の建築界は変わるはず。」
こうしたコメントは参加者にも響いたようで、皆うなずきながら聞き入っていました。
「1→10」の話 by KURKKU FIELDS
続いては、施設と事業の形が決まったKURKKU FIELDSの中身をどう作っていくかという「1→10」フェーズについて、KURKKU FIELDSの新井洸真さんがプレゼン。
食を軸にしたさまざまな活動を「生態系の回復」「循環経済」「社会的レジリエンス」の3つの側面から詳しく説明頂きました。
立上げ期ならではの山積する課題に対しても、循環のバランスを考えながら“ゆっくりな成長”をあえて選び事業の本質を追求する姿勢が印象的でした。また、「環境基盤と経済基盤の両立」という今後業界に関わらず多くのプロジェクトが向き合うべき課題についても、KURKKU FIELDS流のやり方をお話しいただき、多くのヒントがもたらされました。
「10→♾️」の話 by KURKKU FIELDS
プレゼンの最終パートはKURKKU FIELDSの佐藤剛さんによる未来のお話です。
多くの社会・環境課題を抱える世界を良くしていくには、個人でも国家でもない“第三局”の存在が重要だというスタンスのもと、KURKKU FIELDSが描く皆にとっての幸せな未来についてお話し頂きました。
その内容は柔軟であり、とても具体的。KURKKU FIELDSの敷地内にとどまらず、その経済圏を広げていく計画は希望に満ちたものでした。
そして、世界は個人の集合体であり、どうプロジェクトを進めるかは“個人がどう生きるか”ということであるという視点は、参加者の共感を呼んでいました。
料理&ディナータイム
KURKKU FIELDSのお話をたっぷり聞いたあとは、お昼に収穫した野菜を使ってお料理タイムへ。
あらかじめ作るものを決めるのではなく、採れた野菜でメニューを考えるという普段はなかなかないプロセスはクリエイティビティたっぷり。チームごとに相談しながら作る料理を決めていきます。
夜更けまで話は尽きず、併設のフィンランドサウナを楽しむグループも。日中のプレゼンに関すること、自身のプロジェクトのこと、プライベートなこと、さまざまな話題で盛り上がりました。
DAY-2「学びと気づきを深める」
翌日もCamp日和の快晴。スッキリした頭でDAY1の学びを咀嚼し、新たな問いを立てる時間から始まりました。フィールドを歩いたり、地中図書館でじっくり考えたり、思い思いのスタイルで自分と向き合う時間を取った後は、各グループでその内容をシェアして対話を深めました。
どんな問いが生まれたのか?
朝のワークで共有された問いの一部をご紹介。さまざまな視点からのトピックは、時に対照的な内容もあり、それもまた参加者同士の気づきに繋がっていました。
「資本主義の成功の先の、かっこいいお金の使い方とは資本主義や効率的都市主義のオルタナティブはありうるか」
「プロジェクトが、IからWeに変化する瞬間に起きていることとは」
「進むスピードを落とすor最適なペースでキープするには?気づくと加速しがち…ここは農のスピードで回っている」
「仮に同じような場所を作りたいと思った時に、農業、食、宿泊施設を15年掛けないでもっと短縮するやり方はないか」
そして、参加者の1人であり鹿児島県で新留小学校の設立プロジェクトを進行中の丑田俊輔さんによるSpecial Talkも。学校を起点にして地域を再生し、それを他地域に展開することで日本のスタンダードを変えていこうとする仲間に、参加者からは多くのコメントや意見が寄せられ活発なやりとりのある時間になりました。
<新留小学校設立準備プロジェクトへのふるさと納税による支援はこちら>
https://www.furusato-tax.jp/gcf/4772
そして再びフィールドへ。KURKKU FIELDSを開業当初から支えてきた農場長の伊藤雅史さんのナビゲートで、生産体験をします。
農作物の作付けはシフトを組むような難しさと醍醐味があること、土作りは時間軸と生産性のバランスを見ながらその手法を決めること、一般のお客さんを意識した農場設計をしているという話などから、参加者からは「伊藤さんはまるでアグリデザイナーですね」というコメントも。
農業の奥深さや市場との関連性などの幅広いお話に「今まで知らなかったことばかり」と驚きの声も挙がりました。
最後は皆でランチを楽しみ、KURKKU FIELDSのメンバー3人にご挨拶いただいてプログラムは終了に。
普段企業や学校研修を担当している岩佐直美さんからは、今回のProject Desing Campから多くの学びがあったというコメントもいただき、KURKKU FIELDSにとっても有意義な企画となったことは運営側としても嬉しい収穫でした。
Project Design Campの醍醐味
初めて開催されたProject Desing Campを終えて、改めて今回の企画の特長を考えてみると、
①一次情報がすぐそこにある=場の力
②同志が高い視座を持って集まっている=仲間の力
という2点に集約されます。
座学で聞いた話をすぐにゼロ距離のフィールドでまるごと体感できることは、KURKKU FIELDSならではのメリット。体験とセットでインプットされた学びは次のアクションに繋がりやすいものです。
そして、参加者の皆さんから共通して感じられたのは、決して自身のプロジェクトの直接的な答えを教えてもらおうとしていないということ。誰もが「問い」の重要性を認識しているからこそ、対話や質問の中から結果的にプロジェクトのヒントを得ているようでした。
その“同志”たちはProject Desing Camp終了後もコミュニケーションが続いており、次々と新たなスピンオフ企画が生まれてきています。
この世界を良い方向に変えていくであろう、13人の今後の活躍とコラボレーションが楽しみでなりません。
最後に、「皆さんにとってのProject Desing Campとは?」の回答の一部を紹介して終わります。
「同じ視座で事業やプロジェクトと日々戦っている人たちと、壮大なプロジェクトを事例に価値観や仕事を見つめ直す、良い時間となりました。」
「プロジェクトを“管理”ではなく“デザイン”として捉える感性を、リベラルアーツのようにふわっと、でも深く学べる研修です。」
「普通の交流会では絶対得られない、「この人たちと仕事したら楽しそう」という直感が自然に立ち上がる時間。」
「自分の想像の外側に連れていってくれる、“プロジェクトデザイン”の世界への最高の入り口でした!」
▶︎次回のProject Desing Campの開催情報を希望される方はこちらのフォームにご記入下さい。https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd0lvH6liNXxlNQrG7CdOuHKtGL0VDYn3r2KnpBL9pSPtSb1A/viewform?usp=header
▶︎企業・団体の単独研修等のご相談は、こちらのリンクよりお問合せ下さい。
(取材・文:丑田美奈子)


