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2021.04.22

レポート

『Wi-Monitor』/「Todai To Texas」全6チームインタビュー

東京大学/Todai To Texas

wimonitor
引用元: https://wi-monitor.netlify.app/

34年の歴史上、初の完全オンラインとなった世界最大のテクノロジーとカルチャーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Online 2021」。昨年の新型コロナウイルスによる中止を経て、今年は5日間に渡るオンライン開催によって画期的なXRコンテンツの数々を自宅から体験できるという異色の開催となりました。


東京大学発のスタートアップ・プロジェクト「Todai To Texas」からも個性の異なる6つのチームが出展。それぞれのチームにオンラインにてインタビューを行い、プロジェクトの概要と技術の先に思い描く未来について聞きました。全6回に分けてお届けします。

SXSW2021format-3

今回ご紹介するのは「Wi-Monitor」チーム。東京大学大学院・越塚研究室に所属する北岸毅一さんにお話を伺いました。

Profile
2021年1月プロジェクト開始。“IoT+AI+Open Data+Block Chain=Smart City”を掲げる越塚研究室(東京大学大学院学際情報学府総合分析情報学コース)の同期3人からなるチーム。
メンバー:北岸毅一(きたぎし たけかず)データサイエンティスト。東京大学大学院学際情報学府所属。東京大学医学部公衆衛生学専攻出身。医学のバックグラウンドを活かしたIoTの社会実装が研究テーマ。/佐々木佑介(ささき ゆうすけ)データサイエンティスト。2017-2018年にはお笑い芸人として活動。/松井誠泰(まつい まさやす) エンジニア。Google Japanにてインターン経験。

Wi-Fiを人体に反射させ混雑を検知する「Wi-Monitor」

「Wi-Monitor」とはWi-Fiの水に反射する性質を利用することで、空間内の人数を検知し混雑状況を予測するプロジェクト。「混雑」「密」というコロナ禍における問題を解決するために開発され、飲食店をはじめとするさまざまな場においての社会実装を目指しています。

●このプロジェクトの開発の背景について教えてください
Wi-Fiというのは一般的にインターネットの接続のためのものというイメージがあるかと思いますが、一方でWi-Fiには「水に反射する」という性質があります。この性質を、体内の80%が水でできている人間に用いることで、近年のコロナ禍で喫緊の課題となっている混雑を検知・予測しようという技術になります。市販されているルーターと「Wi-Monitor」の筐体を接続し、壁などに設置すれば、その空間にいる人数を検知することができます。飲食店を利用する際にお客さんは混雑を避けたいですし、逆に混雑していないお店はその状況をリアルタイムにアピールしたいはず。混雑に出会わない人の流れを作ることで、ユーザーにとってもお店にとっても喜ばしい状況をつくれるのではないかと考えています。

●この技術の特徴や強みについて教えてください
一番の強みはプライバシーの配慮をしながら人数を検知できるという点です。カメラだと、プライバシーの問題で設置できないシチュエーションが多々ありますが、「Wi-Monitor」は人体の反射を検知するだけなので、対象者に不快な感情を抱かせることがなく、さまざまな場所で実装が可能です。また、Wi-Fiはカメラと比べてデータ量が少ないのでクイックでリアルタイムなモニタリングができ、暗所でも問題なく活用できます。Wi-Fiのアクセススポットは今では街中の至る所にあるので実装のハードルも低く、また、設置と維持費に数十万円かかってしまう従来のビーコンに比べ、「Wi-Monitor」は設置と維持費ともに数千円程度ですので、コスト面でのメリットも大きいかと思っています。

●今後、どのような領域のパートナーと協業したいですか?
導入実績がまだつくれていないので、飲食店・ライブハウス・ホテル・テーマパークなど、実際に活用してくれる顧客を探しています。まずは使っていただき、フィードバックをいただければさらに精度の向上や改善ができるかと思います。設置場所を増やし、検知した混雑状況をスマホのアプリやWEBの画面上で誰もがクイックに見られる普遍的なサービスに発展できればいいと考えています。

●この技術を生かし、どのような未来をつくりたいですか?
「誰もが混雑に出会わない世界」がつくりたいです。ARグラスをかけると案内人が出てきて、目的地まで混雑せずに辿り着くルートを提示するサービスができると面白いかもしれません。人の混雑を検知・予測する研究はそもそも取得データが不足しているという課題がありますので、「Wi-Monitor」が社会のいたるところに実装されてデータベースをつくる一助になればいいと思います。

「人体そのものを検知する」という発想により対象者がスマホなどのデバイスを持たずとも捕捉でき、かつ街中のいたるところに普及しているWi-Fiを活用しているため、現実的な実装が非常にカジュアルだと感じました。コストが低く抑えられる点も実用的です。「今なら一番風呂に入れる銭湯」を表示してくれるアプリケーションや、「次の電車で最も空いている車両」を知らせてくれる駅のホームの電光掲示板など、未来のさまざまなシーンで活用ができそうです。

▼「Wi-Monitor」 HP
https://wi-monitor.netlify.app

「Todai To Texas」HP
https://todaitotexas.com/

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