No.110
2020.03.05
宇宙のゴミ収集衛星
ELSA-d(エルサディー)
概要
「ELSA-d」は、宇宙軌道上に残された不要な人工宇宙ゴミ(デブリ)の捕獲実証を行うための衛星。従来、地球を周回する軌道上の環境整備は宇宙開発における大きな課題であり、デブリだけでなく、故障・運用終了した後で自力的に軌道離脱せず、デブリとなりうる小型衛星に対しても捕獲・除去する必要がある。「ELSA-d」は、母船である捕獲機と子機である模擬デブリを軌道上で分離し、捕獲機に仕込まれた特殊な粘着剤によりハエ取り紙のようにデブリを捕獲する。将来的には、宇宙環境の持続的開発に向けて、「ELSA-d」の量産化が期待されている。
なにがすごいのか?
軽くて宇宙でも使える粘着剤を搭載
コスト削減による量産化
宇宙の持続的開発に役立つ民間主導の取り組み
なぜ生まれたのか?
映画「ゼロ・グラビティ」において、デブリによる恐ろしい事故が描かれた。これはフィクションではなく、現実にある脅威である。現在の軌道上には、デブリ、すなわち役割を終えたり故障した人工衛星・ロケット上段・爆発や衝突事故で発生した破片が数え切れないほど存在する。連鎖的な衝突によるデブリの自己増殖も相まってその数は年々増加している。デブリは秒速7kmで周回しており、運用中の人工衛星や国際宇宙ステーション(ISS)などに高速で衝突し、甚大な被害を及ぼす危険性がある。
ところが、デブリ低減の国際的ガイドラインは未だ法的拘束力がなく、各国政府の自主性に依存したデブリ対策の動きは鈍いままである。それにも関わらず、さらなる超小型衛星打ち上げや数百機から数千機の衛星網も計画されており、宇宙を持続的に開発していくための民間主導の取り組みが必要とされている。
なぜできるのか?
デブリの捕獲プロセス
ターゲットとなる模擬デブリを見つける、接近する、診断する、回転を合わせる、捕獲する、安定化、というプロセスを行う。
粘着の仕組み
従来、捕獲のターゲットとなる物体には、「協力型」と「非協力型」がある。「協力型」はそれら同士をコントロールできるような物体を指すが、既存のデブリは「非協力型」の物体であり、捕獲の難易度が高い。「ELSA-d」は中間カテゴリである「準協力型」物体を捕獲する。具体的には、顧客の衛星に、捕獲時のマーカー・結合部となる軽量(200g)磁石ドッキングプレート(=「粘着剤」)を事前に搭載させることで「準協力型」物体化し、捕獲の難易度を下げる。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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