No.244
2021.01.25
高圧ガス業界にブレイクスルーをもたらすガスボンベキューブ
CubiTan
概要
CubiTan(キュビタン)は、ガスをナノレベルで制御する次世代スマート高圧ガス容器。穴が沢山ある材料「多孔性配位高分子PCP/金属有機構造体MOF」をガス吸着剤として用いることで、従来の高圧ガスボンベに収まる容量のガスを圧縮することに成功。軽くてコンパクトなキューブ(重さ9kg・28cm角)に大容量のガスを貯蔵できるだけでなく、搭載されたIoTモジュールによって遠隔管理もできる。将来的には、ドローン配送などの次世代サプライチェーンの構築や、環境に優しいエネルギーのシェアリングサービス(GaaS:Gas as a Service)の提供などに貢献すると期待されている。
従来の高圧ガスボンベといえば、図左のような細長い円柱状のものが一般的である(高さ150cm・直径25cm・重さ60kg)。 実はこの重くて大きい筐体、100年間規格が変わっていない。 配送や維持管理にかかる人件コストは甚大で、メーター計測・在庫管理も昔ながらの目測に頼っているのが現状だ。 対して人材は不足しており、デジタル化による効率化が求められている。
なぜできるのか?
多様性を生み出す「ナノサイズの孔を持つスポンジ」
CubiTanの特徴は「多孔性配位高分子」(PCP; Porous Coordination Polymer) によってナノレベルの孔を自由にデザインできる点にある。Atomisは自社が保有する15,000種類以上もの結晶構造データベースから効率よく多孔性配位高分子をスクリーニングすることで、1gあたりサッカーコート1面分以上の表面積を持つ孔をデザイン。吸収性や揮発性の違いにも柔軟に対応できるガス保存法の開発に成功した。
スマートで扱いやすい設計
GPS・ガスメーター・温度・Wi-FiといったIoTモジュールも搭載するため、遠隔での在庫管理やガス漏洩管理を可視化できる。また、物流が自動化した将来、ドローンなどのロボットが運びやすいように軽くて積み重ねしやすい形状に設計されており、4辺にはハンドルも付けられている。
未来社会への浸透を見据えた取り組み
現在、高圧ガス保安法では容器にガス吸着剤(多孔性配位高分子)のような異物を搭載できないため、Atomisは実証試験に向けて容器のみのβ版を認可申請している。法整備後、ガス吸着剤を含めた容器として再申請し、2023年からの発売を目指す。
また同社は、酸素・窒素・二酸化炭素・アルゴンといった一般産業ガスだけでなく、再生可能エネルギーの余剰電力をメタンや水素といったエネルギーガスに変換してCubiTanに収めること (P2G:Power to Gas)でエネルギーをパケット化し、家庭の余剰エネルギー(独立分散型エネルギー)のシェアリングに対応した新しいサプライチェーンを構築することも目指している。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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