No.246
2021.01.22
視力を回復させるバイオニックアイ
Argus II
概要
「Argus II」(アーガスII)は、失明患者の視覚を回復させるデバイスシステム。視力が落ちた患者の眼の網膜に移植された電子インプラント(人工網膜)に映像の電気信号を送ることで、視覚機能を改善する。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を通じた視覚再生医療とは異なり、医学・工学が連携した医工学的なアプローチであることが特徴的である。将来的には、バイオ義眼(バイオニックアイ)として普及することで、網膜色素変性症(光受容体の消失で失明に至る稀な遺伝性疾患)患者や視力の極端に落ちた人に視覚を取り戻させ、生活の質向上に貢献できると期待されている。
「Argus II」は、人工網膜とビデオレコーダーの通信をコンピュータで制御することで視覚を再生する。
なぜできるのか?
ワイヤレス通信による人工網膜への映像情報伝達のしくみ
サングラスのフレームに取り付けられたデジタルカメラから、装着者周囲の映像が記録される。映像情報はサングラス側部のワイヤレス転送ユニットを経由して、コンピュータを搭載した画像処理装置へと送られる。画像処理装置で処理された映像情報は電気信号として眼球側に送信され、人工網膜へと伝達される。網膜での電気信号パターンは視神経を通じて脳に伝えられ、患者に視覚を取り戻させる。
物体の動きや流れを認識できる解像度の実現
画像処理装置は直径200マイクロメートルの極小電極60個で構成されている。これは作りだせる映像が60ピクセルのディスプレイに等しいことを意味している。解像度としては通常の視力と比較して非常に低いものの、ドアフレームや歩道などコントラストの強い輪郭線を検出できる程度には十分に機能する。「Argus II」の利用者第一号となった患者によれば、物体の大体の形や動きの流れが見え、大きい文字を読むことができたとのこと。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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