No.279
2021.03.01
電力を使わず脱炭素化で物流に変革をもたらす保冷剤
アイスバッテリー
概要
「アイスバッテリー」とは、電力に頼らずに温度管理できる技術として、半導体の冷却技術にヒントを得て生み出された保冷剤。一度凍らせれば、外気温が30℃以上であっても最長190時間は任意の指定温度を保持することができるため、厳しい温度管理が必要な医薬品を安全に輸送することや、青果や鮮魚などの傷みやすい食品を長時間保管することが可能となる。現在の低温物流の主流であるドライアイスは溶ける際にCO2を排出するが、「アイスバッテリー」はCO2の排出がないため、環境に負担をかけることなく冷蔵・冷凍が実現できる。将来的には、CO2排出量の増大に伴う地球温暖化の進行、食料の膨大な量のフードロス、発展途上国におけるワクチンを含む医薬品の不足を解決する技術として、SDGsの観点からも注目を集めている。
なぜできるのか?
細かい温度設定とコストダウン
7種類ある「アイスバッテリー」を使い分けることで-25度から25度まで温度を調整でき、特別な温度管理が必要なワクチンや血液、臓器の輸送が可能となる。また、ボックスごとに使い分けることで、車両を冷やす電力や高価な専用車を用いることなく多種多様なものを同時に運ぶことができるため、配送のコストダウンが期待できる。
使用する枚数で保冷時間を調整可能
専用ボックスである「アイスボックス」を使えば、アイスバッテリーの使用枚数と温度保持可能時間をあらかじめ設定でき、ボックスごとに違う温度設定をすることも可能になる。コンテナ内の温度を長時間均一に保つことで、あらゆる交通手段(陸送・空輸・海上輸送)による長距離輸送が実現できる。
CO2を発生させない構造
現在の低温物流の主流であるドライアイスは溶ける際にCO2を出すため、環境に負荷をかけるだけでなく、溶け出したCO2が商品を変質させる可能性がある。通常の保冷剤のようにプラスチックの容器に特殊な保冷液が入っており、それを凍らせて使用する「アイスバッテリー」はCO2を排出しないため、商品を変質させることもなく、脱炭素社会を目指すことができる。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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