No.398
2021.08.20
文字や言語に頼らない視覚記号
ピクトグラム
概要
ピクトグラムとは、視覚言語(絵文字)の一つで、文字や言語に頼らずに対象物や概念、状態などの情報を提供する図形のこと。抽象化・単純化されているため、年齢や国籍を問わず誰もが一見して内容を理解することができる。視認性の高い情報提供手法として、日本を含め世界中の公共交通機関、観光施設等で使用されている。
©日本デザインセンター 日本の文化や習慣をピクトグラム化した「EXPERIENCE JAPAN PICTOGRAMS」
©厚生労働省 「感染予防策のピクトグラム」
実現事例 実現プロジェクト
東京2020オリンピック / パラリンピックスポーツピクトグラム
東京2020オリンピック / パラリンピックスポーツピクトグラムとは、「東京2020オリンピック / パラリンピック」にあわせて制作されたスポーツピクトグラム。開催期間のみならず、後年にわたって人々の記憶の中に本大会を印象づけることを目的とし、グラフィックデザイナーの廣村正彰氏らによって、オリンピック全33競技50種類とパラリンピック全22競技23種類のピクトグラムが制作された。スポーツピクトグラムは、1964年の東京オリンピックで横尾忠則氏らによって生まれたものだ。東京2020オリンピック / パラリンピックスポーツピクトグラムは、スポーツピクトグラムの考え方をさらに発展させ、躍動するアスリートの動きを魅力的に引き出すデザインとなっている。
Top Image :©公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
なぜできるのか?
単純かつ非言語的な情報伝達手段
ピクトグラムの原型となったのは1920年代に発明された「アイソタイプ」と呼ばれるもの。オーストリア出身の哲学者であり社会学者、政治経済学者でもあったオットー・ノイラートがイラストレーターとともに発明した。もともとは戦争で教育を受けられなかったウィーンの労働者や、言葉がわからない移民への教育のために開発された。言語に頼らない情報の可視化に成功したアイソタイプは、ピクトグラムだけでなく、現代社会で馴染みのある案内図や路線図などのデザインにも影響を与えている。
あらゆる人に配慮したユニバーサルデザイン
視認性の高いピクトグラムは、視力の低下した高齢者や視覚障がいのある人、その国の言語を知らない外国人なども容易に理解することができる。不特定多数の人々が利用する施設内の案内標記は、外国語併記にあわせてピクトグラムが使用されている。また、2018年からは、案内表示に使用される色もユニバーサルデザインカラーが使用されるようになり、色覚に障がいを持つ人も色を区別できるようになった。
ピクトグラムの標準化
産業技術の標準化を進めるISO(国際標準化機構)によってグラフィック・シンボルの統一標準化が進められた結果、非常口サインをはじめとした案内誘導のためのピクトグラムは「公共案内用図記号(Graphical Symbols for Public Information)」として制定され、ISO7001およびISO7010 に記載された。国内においては、「標準案内用図記号」125項目のうち110項目が、日本工業規格(JIS)によって2002年にJIS化(案内用図記号 JIS Z8210)されている。その後、日韓ワールドカップや東京オリンピック / パラリンピックの開催、災害対策基本法の改正などにあわせて登録内容が改定されるなど、標準化に向けた取り組みが行われている。
相性のいい産業分野
- メディア・コミュニケーション
年齢や国籍に関係なく誰もが理解できる公共サイン
- 旅行・観光
観光スポットや特産品をピクトグラム化した観光プロモーションや、多言語サインが対応していない外国人観光客への案内手段
- 教育・人材
ピクトグラムの作成を通してプログラミングと情報デザインを学ぶ「ピクトグラミング教育」
- 医療・福祉
災害時における、混乱の中でも大勢の被災者へ正確に情報を伝えるための手段
- 生活・文化
言語による通訳の代わりにリアルタイムに外国人とやりとりをする「ピクトグラム翻訳」
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image :©Getty images