No.416
2021.09.15
自然エネルギーを洋上でつくり出す“電気運搬船”プロジェクト
Power X(パワーエックス)
概要
「Power X(パワーエックス)」とは、海から生み出された電力をその場で電池に蓄電し、船で運んで提供するエネルギー事業。大量の大型蓄電池と、それらを備えた電気運搬船を製造・運用し、洋上風力でつくられたクリーンな電力を世界中に届ける。従来の海底ケーブルによる送電システムは、海底掘削等の設置コストや環境負荷が問題視されているが、Power Xは大規模な工事を必要とせず、環境への影響も少ない。将来的には、脱炭素社会に向けた自然エネルギーのさらなる活用と普及を促し、さらには国境を超えたクリーンエネルギー輸送の実現も期待される。
なぜできるのか?
電気を運ぶ大型船「Power ARK(パワーアーク)」
洋上風力発電所から海岸までのエネルギー輸送を行うため、大型電気運搬船「Power ARK」を開発(2025年完成予定)。初号船「Power ARK 100」は船長約100mで、船舶用蓄電池を100個積載し、220MWh(一般家庭およそ22,000 世帯分の1日あたり電気使用量)の蓄電能力を保持する予定。船は蓄電池のみで300km程度の沖まで航行可能だが、バイオ燃料などの併用によりさらに遠距離化ができ、国境を超えた⼤陸間輸送の実現が見込まれている。
大型電池の製造工場「Power MAX(パワーマックス)」
同社の大型電池工場「Power MAX」により、電気運搬船に必要な蓄電池を大量かつ低コストで製造する。2024年以降、毎年1GWh (約10万世帯分の1日あたり電気使用量)ずつ製造を増やし、2028年には日本国内に毎年5GWh 製造できる大型電池工場の建造を予定。将来的には、建造船舶用蓄電池だけでなく、電気自動車用充電電池やグリッド電池(電力網用蓄電池)などの製造・販売への事業展開を見据えている。
災害に強い電力供給システム
Power Xの洋上風力発電と電気運搬は、海の底に設置する海底ケーブルと比べ、地震や津波などの影響を受けにくく災害に強い。船で送電することで、送電システムの破損リスクを低減。また洋上風力発電の設置対象エリアを拡げるため、安定的な電力供給が見込まれる。Power Xの船が停電などに見舞われた被災地へ駆け付け、国内外問わずに電力サポートを行うことも期待される。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
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Top Image : © 株式会社パワーエックス