No.422

2021.09.23

空気圧で呼吸を整える触覚デバイス

aSpire

aSpier

概要

「aSpire」とは、人の呼吸をコントロールするモバイル型の触覚フィードバックデバイス。空気圧で駆動する柔らかな装置で身体に触覚刺激を与えて呼吸を誘導し、呼吸数を整える。これまでも呼吸をコントロールするデバイスは開発されてきたが、電気刺激や振動などを伴うことが多く、身体負荷の少ない空気圧による触覚刺激を活用した点がaSpireの特徴。aSpireで呼吸を整えることでのストレス軽減効果も見込まれており、研究が進めば、人のパフォーマンスを高めより生活の質を向上させると期待される。

aSpire1

aSpire2

なぜできるのか?

情報ストレスの少ない触覚へのフォーカス

aSpireを開発したMIT Media Labは、視覚や聴覚を使わずに情報認識する手段として触覚にフォーカス。視覚や聴覚は日常生活の中で認知機能として多用され負荷がかかっているため、触覚を活用し、余分なストレスを与えずに呼吸を整えるデバイスとしてaSpireを開発した。個人差が出やすい触覚や呼吸に働きかけるため、好み・感度・呼吸数など、ユーザーの状況に応じて調整できる機能を実装。スマートフォンで操作可能な専用アプリケーションを開発し、触覚刺激の強さや、膨張収縮サイクル・速度などの触覚パターンの調整ができる。

ユーザー負荷の少ないデバイス設計

身体的な不快感やストレスを感じないデバイスとするため、人間の肺や胸の動きからヒントを得て、空気圧で膨張・伸縮する装置(アクチュエーター)を設計。3つのアクチュエーターと空気圧制御システムで構成している。身体に触れる部分には柔らかな素材を用い、伸縮可能な圧力センサー(空気圧の変化を電気信号に変換するセンサー)を開発して組込んでいる。3つのアクチュエーターの動作は独立しており個々で伸縮・膨張できるため、様々なパターンの触覚刺激が可能。自動車のシートベルトに装着して行った実証実験で、触覚刺激を「ペットや子供を抱きしめているように感じた」と報告する被験者もいたという。また日常生活で使う利便性を考慮し、クリップで着脱可能にしている。

相性のいい産業分野

流通・モビリティ

渋滞や割り込み運転など、自動車乗車時の呼吸と気持ちを整えるデバイスの開発

生活・文化

日常生活でのストレスを緩和し、心身と生活を整えるデバイスの開発

IT・通信

生体情報や医療データなどを組み合わせ、その時点に最適な触覚を実現するデバイスの開発

医療・福祉

入院や介護中の気分や気持ちを整えるデバイスとして医療現場で活用

アート・エンターテインメント

映像作品やアートの表現を触覚で補完するエンタメデバイスの開発

航空・宇宙

シャトルの移動時やISS長期滞在時などで心を整える宇宙船の設備として導入

この知財の情報・出典

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © Massachusetts Institute of Technology