No.496
2021.11.16
合成画像の照明を自動で調整する技術
Total Relighting
概要
「Total Relighting」は、深層学習を使用し、合成写真の背景に合わせて人物画像の照明を自動変更する技術。3つのモジュール構成で処理され、画像から生成された被写体のアルファマット(画素の不透明度を表現するデータ)を自動検出し、合成する背景の照明条件に合わせて被写体の再照明と合成を行うことで、従来のクロマキー合成(グリーンバックやブルーバックで撮影する切り抜き合成の一種)を使用した際に生じる照明の不自然さを改善。静止画像だけでなく、映像内で動く人物にも再照明を施せるため、違和感のない動画コンテンツを作ることも可能となる。
なぜできるのか?
背景に合わせた照明を生成して違和感を払拭
「Total Relighting」は、画像の合成時に前景となる人物の照明を、合成する背景写真に合わせて自動で調整。従来、撮影した人物を異なる背景に合成する場合、被写体の照明が合成先の背景の照明環境と異なるため不自然さが生じてしまうが、背景に合わせて被写体の照明を再設定できるため、違和感のない合成コンテンツを作ることが可能となる。
機械学習を利用して被写体を再照明
「Total Relighting」は3つのモジュール構成で合成写真が再照明される。1つ目のモジュールで画像から前景の被写体人物とアルファマットを推定し、2つ目のモジュールで被写体表面の形状とアルベド(物体表面の入射光と反射光の割合)を解析しピクセルごとの照明や反射の状況をモデル化。3つ目のモジュールで再照明の結果とアルファマット、新しい背景の3つを合成し、合成先の新しい背景での人物の照明を調整する。
スマートフォンやPCへの実装に期待
実写画像を用いた実験では、「Total Relighting」が既存の再照明技術に比べ被写体表面下の光の散乱や鏡面反射などをよりリアルに表現できることを実証。今後は、静止画だけでなく動画のリアルタイムでの処理を目指すとともに、スペックが低いコンピュータや最新のスマートフォンでも使用できるよう開発を進めていく。
相性のいい産業分野
- IT・通信
「Total Relighting」で、背景を合成しても違和感のないビデオ通話が可能
- メディア・コミュニケーション
リアルな合成が可能になるため、映画やドラマをロケーション撮影無しで手軽に制作可能
- 教育・人材
「Total Relighting」により現実と見分けがつかないホログラムのデジタルヒューマンが実現
- アート・エンターテインメント
現実に溶け込むような人物造形により理想の人物と同じ空間で過ごすことができるAR(拡張現実)コンテンツが実現
- 生活・文化
「Total Relighting」の再照明技術を応用し、自分が好きな国の景色に合わせて部屋の照明をカスタマイズ
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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