No.938
2024.11.14
細胞レベルで身体を元気にする培養液のエナジードリンク
培養液エナジードリンク
概要
「培養液エナジードリンク」とは、細胞に必要な栄養素で設計した培養液のエナジードリンク。細胞を増やして肉をつくる培養肉の研究をベースに、培養液を食品由来の成分で独自配合・調合して、リアルに身体を育むエナジードリンクを開発した。一般消費者が入手できない細胞培養液を市販品で構築。美味しく飲めるエナジードリンクとして提供することで、培養肉・バイオの研究を身近な未来として楽しむカルチャーの醸成を目指している。「培養液エナジードリンク」の一般販売に加え、培養肉技術のさらなる進化や日本国内での培養肉の流通が期待される。
なぜできるのか?
培養肉研究にもとづくプロダクト開発
培養液で細胞を増やして肉をつくる培養肉の研究がベースにある。培養肉は、牛や鶏などから細胞を採取して、野菜を育てるように栄養を与えることで肉をつくる技術。家畜を殺さずに肉を生産できる、新たな食肉生産技術として登場し、シンガポールやアメリカなどではすでに培養肉を一般販売している。「培養液エナジードリンク」を手がけたメンバーは、培養肉研究の有志団体「Shojinmeat Project」に所属。バイオ関連の研究に携わるメンバーを中心に、異分野の社会人や学生などが集う団体で、産学官ではなく市民からの技術発展を目指して活動を行ってきた。その中で、研究ハードルを下げる要素として、細胞を育む培養液に着目。動物由来の血清を含まない基礎培地部分を“DIY”で作製した。DIY基礎培地を使った培養実験では細胞の増殖を確認。それらの研究をもとに、細胞レベルで身体に良いエナジードリンクを発案し開発に至った。
市販品で作れて美味しく飲める独自配合・調合
市販の材料で培養液をつくる独自配合・調合を生み出した。研究などに用いる従来の培養液は高額な上、一般消費者が購入できない。培養肉生産のコストを押し上げる要因の1つでもあるため、一般的に買える材料で安価につくれる培養液を構築。ブドウ糖・食塩・食品添加物・サプリなどで、細胞に必要な栄養素のグルコース(糖類)・ナトリウム・ビタミン・アミノ酸などを配合し、ベースの培養液を作製した。さらに飲みやすさを追求し、植物由来のスパイスからエキスを抽出して調合。中医学の漢方やインド医学のアーユルヴェーダを踏まえ、シナモン・ナツメグ・ジンジャー・レモンなど様々なエキスを調合して試作・改良を繰り返し、コーラのような味わいの培養液を完成させた。
「100BANCH」のプロジェクト支援
「100年先を豊かにする未来」の創造を目指す「100BANCH」で開発が進められた。パナソニックが100周年を機に「未来をつくる実験区」として展開。2017年から東京・渋谷に拠点を設け、プロジェクト支援プログラム「GARAGE Program」を軸に、若者の挑戦をサポートしている。「培養液エナジードリンク」プロジェクトは第68期に採択され、2023年3月から入居。異分野の研究者・クリエイターから意見やアイデアを得ながら、ドリンクを完成させた。ドリンクは「100BANCH」の対外発信イベントである「ナナナナ祭」で試飲を実施し、評価を獲得。その後、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」の出展作品に選ばれ、「人魚の涙」としてデザインし提供した。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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op Image : © A cultured energy drink