No.1097

2025.12.18

温泉成分を濃縮した、輸送・保存可能な“温泉のエスプレッソ”

クラフト温泉

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概要

「クラフト温泉」とは、天然温泉の成分濃度を高めた流通向けの“温泉”。源泉と鉱石を原材料に用い、独自技術で温泉成分を溶かし出した“温泉のエスプレッソ”で、温泉原液として輸送や保存ができる。温泉成分は天然温泉比で最大1万倍に濃縮でき、湯で薄めるだけで温泉に入れるため、地域や設備にかかわらず温泉体験を実現する。飲料やシート、ミスト状の温泉といった多様な実装方法があるのも特徴。日本列島の各地に眠る温泉の価値を再定義して、国内外からの需要を喚起し、「日本の資源」の1つとして新たなマーケットを創ると期待されている。

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なぜ生まれたのか?

商社や外資系証券会社で石油のトレーディングなどを担当していた創業者が、「湯治」の魅力に引き込まれ、温泉を「日本の資源」にすることを目指して創業した。日本には温泉の源泉が約2万8,000カ所あり、世界でも有数の“産湯大国”だが、その多くは現地で入湯する形での利用に留まる。そうした実情を踏まえ、天然ガスの液化で容積を減らし大量輸送を実現した「LNG(液化天然ガス)」から着想し、運べる温泉の事業を始めた。会社設立は2013年10月。2025年にLe Furoから温泉資源庁に社名変更した。

なぜできるのか?

温泉濃度を調整する独自技術

温泉成分の濃度を調整する独自技術を構築した。花崗岩に含まれる鉱石(黒雲母など)を細かく粉砕して、天然温泉に投入。高圧釜で攪拌・濾過し、ナトリウム・カルシウム・マグネシウムなどの成分(天然ミネラル)を溶かし出す。抽出した温泉成分と温泉水を混合させて、天然温泉の濃縮液である「クラフト温泉」を生成している。

「クラフト温泉」プラントの開発

温泉のメカニズムを参考に、源泉がある場所に設置可能なプラント(製造装置)を開発した。
日本列島に多い火山性温泉は、地表に降った雨・雪などから地中にしみ込んだ地下水に、マグマのガス成分が混入したり、鉱石が溶け込んだりすることで泉質が形成される。地中に含まれる酸が、長い年月をかけてナトリウム・カルシウム・硫黄といった、さまざまな地中成分を地下水へと溶かし出す。
自然界の原理と独自技術を掛け合わせてプラントを構築。温泉水を電気分解して酸性とアルカリ性に分け、酸性に寄せた温泉に鉱石を投入。温度や気圧の調整を行いながら攪拌して温泉成分を抽出し、濃縮液を生成する。プラントは各地域に設置しやすいサイズに設計した。

実装方法を限定しない多角的な展開

「クラフト温泉」と独自の「エアサプリ」技術を用いたミネラルミスト浴施設「TŌJI SPA」をはじめ、市場拡大を見据えた多様なサービス・商品を展開している。
温泉成分は、浸透圧の原理で成分が濃いほど吸収率が高くなり、水分子が細かいとより高まる。その点に着目し、クラフト温泉をミスト化して噴霧する「TŌJI SPA」を開発。温泉成分を効率的に吸収でき、リラックス効果もある。
そのほか、家庭でも使える入浴剤や温泉ミスト装置、飲用の「クラフト温泉」(炭酸飲料・マルチミネラル飲料)などを展開。温感ボディシート「湯るまる」も商品化した。「湯るまる」は、JAXAの「Think Space Lifeアクセラレータプログラム」で採択され開発したもので、シートで身体を拭くと時間が経つにつれて温かくなる。入浴できない宇宙環境でも、身体を清潔に保ちながら温泉体験を実現。地上でも広く活用でき、医療・介護現場や災害時の避難所生活などに加え、多忙な日々を送る現代人の日常生活もサポートする。

相性のいい産業分野

資源・マテリアル

温泉が少ない国・地域や海外のホテル・スパ・リゾート施設などに展開

生活・文化

毎日の生活の中に手軽に“湯治”を取り入れ、QOLを向上

アート・エンターテインメント

キャンプ場や海の家などアウトドア施設のサービスに利用

医療・福祉

リハビリ中の人や温泉地へ移動が難しい高齢者などに提供

スポーツ

国内外の遠征先などでメンテナンス用品として活用

航空・宇宙

宇宙空間での衛生ケアやミネラル補給、温泉体験、リフレッシュに活用

この知財の情報・出典

・特許 第7465388号/ 7273763号/ 6523960号
・商標登録 第6643513号/ 6427471号

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 温泉資源庁