No.971
2024.12.10
廃棄される米から生まれた持続可能な紙素材
kome-kami(コメカミ)
概要
「kome-kami(コメカミ)」は、食べられなくなった米をアップサイクルした紙素材。米のフードロスを削減に貢献できるほか、化学薬品を米由来の糊で代替することでCO2排出量の削減に貢献できる。また、開発元の株式会社ペーパルでは、「kome-kami」の売り上げの1%をフードバンクに還元。食用に使えない米から新たな価値を創出し、持続可能な循環を拡げる知財として期待されている。
なにがすごいのか?
食用に適さなくなった災害備蓄米などのフードロス削減に貢献
米由来の製紙用のりの使用でロット当たり62.5㎏(杉の木7本分)のCO2を削減
米を素材にしたことによる自然な白さと独自の風合い
なぜ生まれたのか?
かつて、江戸時代の日本では、古紙を回収して再生紙を作ったり、子どもの成長に合わせて着物を仕立て直したりといったように、あらゆる物資を余すことなく使い尽くす循環型社会が成立していた。
一方、現代の日本では、国内では年間523万トン以上のフードロスが発生しているといわれており(「農林水産省 食品ロス量(令和4年度推計値)」)、フードバンクが食材を集めて生活困窮者に支援しているが、フードバンク自体も運営資金の確保に苦慮している状況で、ロスの解消にはつながっていない。
また、国内の米の需要は、今後10年間でおよそ100年間の需要が減少することが予想されており、工業用も含めた米の需要を増やす必要が高まっている(「令和4年農林水産省お米をめぐる関係資料」より)。
そこで株式会社ペーパルは、このような課題に貢献できる仕組みを作りたいという思いから、「kome-kami(コメカミ)」を開発。さらに、フードバンクの顧問である滋賀大学准教授の山下悠氏が同社のアドバイザーである関係から、フードバンクへの還元に至った。
なぜできるのか?
米の破砕による機械製造
米は硬く粘着性があるため、機械の動作不良の原因になる恐れがあった。しかし、「kome-kami」では、廃棄予定の備蓄用アルファ米や食用に適さない古米、メーカーで発生する破砕米などの原料を一度破砕し、パルプと混ぜている。これにより、機械を傷めることなく生産が可能となった。
米由来の製紙用のり「コメバインド」の採用
通常の紙では、パルプ同士の結びつきを強めるための接着剤として化学薬品が使用されている。一方、株式会社ペーパルでは、米を接着剤として使う文化に着目し、配合や加熱を工夫することで、独自の製紙糊「コメバインド」を開発。これを採用することで、1ロット(5トン)あたり62.5kgのCO2削減を実現した(杉の木7本分)。
米独自の質感がもたらす独特の風合い
米を素材に使用することで、紙そのものの風合いに米の質感が加わり、自然な白さとしっとりとした風合いが実現した。
相性のいい産業分野
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 ペーパル