No.896
Tech Direction Awards受賞作品
2024.09.03
中国の伝統とテクノロジーが融合したファサードデザイン
Neo Chinese Pattern
概要
「Neo Chinese Pattern」とは、中国の伝統・文化とテクノロジーを融合させて生み出したファサードデザイン。中国の伝統文様をベースに、独自アルゴリズムで文様の3Dデータを生成し、3Dセラミックプリントで建材を作製して、文化的な風合いを持つ外観を構築した。セラミックの課題である焼成時の伸縮を最小限まで抑え、高精度な造形ができるセラミック材・3Dプリンターを活用。中国の伝統的な釉薬を施して、工藝製品としての表現も可能にした。セラミック3Dプリントによる建材の可能性を拡げるとともに、工芸・インテリア・アートなど、様々な領域への展開が期待されている。
なぜできるのか?
文化・風土を活かす施設・空間
ファサードデザインは、中国南部のランドマークの1つである「広州太古汇」のイノベーションラウンジで行った。「広州太古汇」は、16万平方メートルを超えるオフィスタワー2棟のほか、ショッピングモール、ホテル、文化・芸術施設などで構成された大型複合施設。中国を中心に商業施設・住宅などの開発を手がけているSwire Properties社(太古地产)が開発した。合理的な建物設計に加え、木目調のベニヤ・無垢材・琥珀色の石灰岩など、柔らかな素材や自然光を活かすデザインで、施設・空間を構築している。イノベーションラウンジでは、テクノロジーを用いながら中国文化を受け継ぐ、ファサードデザインを実現した。
共創型イノベーションを生み出す基盤
ファサードデザインのプロジェクトは乃村工藝社が牽引した。同社は2016年に、共創型のイノベーション・ラボ「Nomura Open Innovation LAB(ノムラボ)」を開設。専門組織として、社内外の様々なアーティストやテクノロジストと協働し、場づくりにおけるデジタルイノベーションとクリエーションに取り組んでいる。多数のクライアントワークを手がけており、「Neo Chinese Pattern」プロジェクトにもノムラボの主要メンバーが参画した。プロジェクトでは、伝統文様のどの部分を選択しても連続的な3Dデザインを生成できる、独自プログラム・アルゴリズムを開発。セラミック3Dプリンターでタイルを作製して釉薬を施し、文化が息づくファサードを構築した。
セラミックス造形材「BRIGHTORB」
セラミックスの造形には、AGCセラミックスの3Dプリンター用セラミックス造形材「BRIGHTORB(ブライトーブ)」を用いた。セラミックスの溶融技術や製造ノウハウを活かして開発した素材で、1600℃を超える高温でも、高い寸法精度と造形強度を実現する。従来の素材では、焼成時に10%以上の収縮・歪みが生じていたが、BRIGHTORBは焼成収縮率を約1%に低減。また主原料に再生可能な人工砂を用いており、廃棄物も削減する。造形には、粉末に結合剤(バインダー)を噴射して形を整えるバインダージェット方式の3Dプリンターを利用。文様の3Dデータをダイレクトに出力できるプリンターで、「Neo Chinese Pattern」の高精度な造形を可能にした。
相性のいい産業分野
- 生活・文化
文化や土地の歴史を活かした建材・インテリアの設置
- 住宅・不動産・建築
自分で作成したデザインを住まいやオフィスの建材に使えるサービスの開発
- アート・エンターテインメント
伝統工芸品の新しい表現方法・可能性の探求に活用
- 製造業・メーカー
デザイン性・耐久性を持つセラミックス製品や部品の開発
- 航空・宇宙
月面など宇宙空間の住居・家具・インテリアの作製に活用
この知財の情報・出典
この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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Top Image : © 株式会社 乃村工藝社