No. 078 道徳をベースとした心の在り方分類

道徳基盤理論辞書

「道徳基盤理論辞書(Moral Foundations Dictionary;MFD)」は、道徳基盤理論を検証するために開発されたツール。従来、個人の行動傾向や価値観の分析を行うために、実験や調査といった事例ベース・定性的アプローチを用いることが多かったが、MFDを利用することによってあらゆるテキストデータに内在する道徳を定量化できるため、行動傾向や価値観の新たな分析手法として期待されている。

なにがすごいのか?

  • 多様な定義をもつ概念「道徳」についての新たな測定手法
  • 国民感情の推定やツイート内容の解析が可能
  • 英語版から日本語版への拡充

なぜ生まれたのか?

従来、社会現象を定量的に測定することは難しかったが、近年、ソーシャルメディアやIoTの登場により人間行動が高頻度かつ詳細に観測できるようになった。そのため、これらのビッグデータを数理情報学・計算機科学的な手法を用いて可視化・分析・モデル化する計算社会科学などの研究分野が発達した。

妄想プロジェクト

バッシング・ナッシンガー

SNSにおける投稿コメント。時には失言・詭弁などと判断されることで非難や批判が殺到し、いわゆる炎上と呼ばれる収拾の付かない事態に発展することもある。SNSが大手メディアに先行して政治家や大企業の不祥事発覚を捉えた結果、公式発表に繋がるという事例もある。言わば投稿コメントはネットデモクラシーに対する感度を図る絶好のテキストデータだ。投稿コメントに対して「道徳基盤理論辞典」を適用し、”ポジネガ”の時系列変動をリアルタイムに追跡し、株価チャートのように分析できれば、炎上の前兆となる感情の盛り上がりをコントロールしたり、炎上を意図的に回避することが可能になるだろう。

なぜできるのか?

道徳基盤理論に基づく道徳のカテゴライズ

道徳基盤理論とは、従来の道徳に対する様々な捉え方(ヒトを人間たらしめる要素、正しい行動を導く動機、社会を維持する規範など)に代わって近年提唱されるようになった理論であり、この理論において道徳は複数のカテゴリーから説明できるものとされる。

カテゴリー別にリストアップされた単語

MFDには、道徳基盤理論に基づいた11個のカテゴリーに関する英単語(及び語幹)324個がリストアップされている。すなわち、
・擁護(ケア)、公正、忠誠、権威、純潔
・擁護違反(危害)、公正違反(欺瞞)、忠誠違反(裏切り)、権威違反(破壊)、純潔違反(堕落)
・道徳一般
である。たとえば”safe”は擁護、”preserve”は擁護・権威・純潔に対応する。

相性のいい分野

音楽
人気アーティストの歌詞を道徳基盤理論の観点から分析
マーケティング
今現在の大衆心理を分析したキャッチーなポップ広告で購買意欲を刺激
メディア
インターネットサイトに潜むヘイトスピーチを検知・規制
政治
政治的態度・志向性(保守・リベラルなど)、政治的言説の摂取・発言の定量化、及びそれらを活用した選挙活動

知財情報

主な知財ホルダー: MoralFoundations.org

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。