No. 091 見えない力でモノを操る

三次元音響浮揚

本知財は、超音波の圧力でものを浮揚したり搬送したりする技術(音響浮揚)の中でも、世界初の三次元操作可能な音響浮揚技術。自由な素材でできたものを三次元空間上の自由な位置に浮遊させ移動させることができる。将来的には、工業製品を非接触で搬送することや、今まで宇宙空間で実験していたような空中で液体同士を混ぜ合わせること、空中に絵を描くこと、ものを浮かせてスクリーンにすることなどが期待されている。

なにがすごいのか?

  • プログラミング制御を備えた、超音波によるものの自由な移動
  • 大きなものでも重心さえ6mm以内なら浮揚可能
  • 空中における触覚の創出

なぜ生まれたのか?

従来の音響浮揚では、超音波を壁面に当て、その反射波との定在波に生じる節にものを浮かばせていた。浮かばせるものが半分以下の波長(40 kHzの場合4 mm以下)で、軽量(1 g以下)でないといけないこと、移動がゼロ~二次元に限られたミリからセンチメートル単位の移動であることから、応用が難しかった。本知財は、三次元移動を可能にした上でその移動範囲も数10センチメートルまで拡張出来れば、応用は一気に広がる、との考えから開発された。

実現プロジェクト

超指向性スピーカー「ホログラフィックウィスパー」

ホログラフィックウィスパー(ピクシーダストテクノロジーズ社)は、沢山の超音波振動子をそれぞれ適切な時間差で動かすことで空中に超音波焦点を作り、その焦点でのみ可聴音を発生させる技術。従来の可聴音ビームでは、狙った人物以外に同一直線上にいる人にも聞こえていたが、ホログラフィックウィスパーは狙った人物にのみ、耳元でささやくように音を聞かせることができる。カフェなど騒がしい場所に設置すれば、呼びたい人だけを呼び出せるし、美術館の入り口に設置すれば、遠いところにいる人にはこの説明、近づいてきた人にはこの説明といったように、それぞれに合った音声を聞かせることができる。

なぜできるのか?

フェーズドアレイ

たくさんの振動子から異なる周期で超音波を発する超音波装置(フェーズドアレイ)を4台対向させて配置し、囲まれた空間内に定在波(*1)を発生させる。向かい合っている装置の片方が焦点を自分から遠くに、もう片方が自分の近くに動かすことにより、上下左右だけでなく奥行方向にも定在波を移動させることができる。

(*1) 定在波:波長・周期・振幅・速さが同じで進行方向が互いに逆向きの2つの波が重なり合うことによってできる、波形が進行せずその場に止まって振動しているようにみえる波動。

空間分布の制御

計算機によって設計した⾳響ポテンシャル場(*2)を超⾳波フェーズドアレイによって再現することにより、多様な空間分布を実現できる。

(*2) ポテンシャル場:ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)の分布を示す時空間関数。

相性のいい分野

製造
工場でロボットアームに代わって軽いものを運送
ヘルスケア
医薬品や化粧⽔などの油滴を⾮接触でボトルに移すことにより異物混入を回避
音楽
空間に点音源を作り出すことで場所によって聞こえる音が変化
エンターテインメント
白い粒子を面状に配列することで、空中に映像投影のためのスクリーンを設置

知財情報

主な知財ホルダー:Pixie Dust Technologies, Inc.

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。