No. 103 ゴミ問題の救世主、プラスチックを食べる細菌

細菌によりPETを分解する研究

この知財は、PET(ポリエチレンテレフタレート)素材を分解する酵素(PETase)の研究である。ペットボトルや衣服等の素材として世界中で利用されるPETの分解処理問題を、環境負荷が少なくシンプルな操作で可能にする技術として注目されている。広く普及すれば、バイオリサイクル技術への大きな貢献となる。

なにがすごいのか?

  • PETを栄養源として生育する細菌に由来する酵素(PETase)を利用
  • 常温で厚さ0.2ミリのPETを約1カ月で二酸化炭素と水にまで分解
  • 化学処理法と比較してエネルギー消費が小さく環境に優しい

なぜ生まれたのか?

堺市内のペットボトルの処理工場で、京都工芸繊維大の小田耕平教授(現・名誉教授)らが、PETを食べる(=分解する)微生物を発見。発見場所にちなんで「イデオネラ・サカイエンシス」と学名がついた。プラスチック樹脂は需要が急増している一方で、環境中で分解されることなく堆積することが環境問題のひとつとなっているが、この問題を解決する足がかりとして慶應義塾大学および京都工芸繊維大学の研究グループにより研究が進められた。

なぜできるのか?

PETを分解する酵素(PETase)を活用

PETを栄養源として生育する実在の微生物(イデオネラ・サカイエンシス)に由来しており、廃棄PETによる環境汚染を解決する酵素として注目。

界面活性剤を使うことで分解速度を飛躍的に向上

親水性のPETaseと疎水性のPETの接触を向上させるため、洗剤等に用いられる界面活性剤を添加し、分解速度を100倍以上に向上させることに成功。反応は36時間以上継続が可能で、その時点でPETの厚みが20%薄くなることが実証された。

高効率で地球に優しい分解方法

使用する界面活性剤は0.005%と微量である上、30℃の常温でもPET分解が可能な初めての例であり、効率的でエネルギー消費の少ない手法である。

相性のいい分野

環境
家庭のゴミ箱で細菌を飼育し、自動的にペットボトルが分解される「サステイナブルゴミ箱」
アウトドア
生ゴミは堆肥に、ペットボトルは細菌が分解する「ゴミゼロキャンプ場」
アート
PETでできた作品に細菌を注入し、分解による変化を楽しむアート作品
飲料
ペットボトル飲料に細菌培養キットがおまけで付いてくる環境問題啓蒙ドリンク

知財情報

主な知財ホルダー:慶應義塾大学、京都工芸繊維大学

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

Kyosuke Saito
齊藤 匡佑 Kyosuke Saito
Creative Engineer / Konel Inc.

1997年神奈川県横須賀市生まれ。世界最年少知財ハンター。バーテンダーとして従事した後、バックパッカーとしてアートを巡る旅に出る。現在はKonelでエンジニアとして活動中。味覚や嗅覚を刺激するバイオ系知財を、他の感覚に転用させることに高い関心を持つ。夢はクラフトジンの蒸留所設立。


知財ライティング: 丑田美奈子