No. 117 人類と拡張知能が共生する未来へ

IBM Watson(ワトソン)

IBM Watson(ワトソン)は、人間の推論や意思決定に対してのアドバイスやサポートをするコグニティブ(認知)コンピューティングと呼ばれるシステム。従来のコンピューターのように与えられたプログラムを処理するだけではなく、自然言語を解釈し、膨大なデータベースから自律的に考えて行動できる。答えが1つとは限らない曖昧な問いに対し、自ら仮説を立てて最適解を導き出したり、解に対するフィードバックを蓄積・学習して進化する機能も備える。人間の脳を模倣して仕事を代替する「人工知能」と対になり、人間の能力を拡張して仕事をサポートする「拡張知能」として、社会に浸透することが期待されている。

なにがすごいのか?

  • データから自律的に学ぶことを繰り返す
  • 自動的に作る数理モデルからの洞察
  • 高度に専門特化されたタスクをサポート

なぜ生まれたのか?

IBMによるコンピューティング発展の歴史は、3つの世代に分類される。第1世代はデータを数えるための計算機の時代、第2世代はOSやソフトウェアが作られ、プログラムによって動くコンピューターやスマートフォンの時代。コグニティブ・コンピューティングは、これらに続く第3世代に位置する技術である。従来の機械学習や深層学習といった技術をもとに「学習して人間と自然に対話できるシステム」を作ることを目標として生まれ、アメリカのクイズ番組「ジェパディ」でIBM Watsonがコグニティブ・コンピューティングの力を実証した時を起点として、新たな世代の幕開けとされた。

実現プロジェクト

CIMON2

「CIMON2」(Crew Interactive Mobile Companion 2)は、宇宙空間での宇宙飛行士の生活をアシストするバスケットボール型のロボット。コグニティブコンピューティングの代表的なシステムの1つ、IBM Watsonを採用している。宇宙飛行士のタスク管理サポートだけでなく、メンタルケアや隔離空間での対立の防止なども行う。ディスプレイやスピーカーを備え、画面や音声、頷くなどの簡単なジェスチャを通じてコミュニケーションをとることができる。また、無重力の船内を浮遊・移動する際には超音波センサーによって、他の物体や人体と衝突することを防ぐ。

Chef Watson(シェフ・ワトソン)

「Chef Watson」はIBMがWatsonの技術を活用し、料理誌『Bon Appetit』を発行する「ボナペティ」社と共同で開発した、さまざまな食材の独創的で意外な組み合わせを提案してくれる料理用アプリである。

このアプリは膨大な量のレシピデータをクロールし、分子レベルで食材の特徴や組み合わせの良し悪しを学習し「美味しさ」を研究することで、調理方法や料理のスタイル、盛り付け方などもパターン学習する。それにより、多様な美味しい組み合わせの提案が可能となる。使い方も簡単で、まず料理に使いたい4つの材料を入力したあと、リクエスト(例えばアフリカ料理やイタリア料理、あるいは「ほっとするような」料理など)を絞り込む。そこから提案されたレシピには各材料の分量や基本的な作り方まで記載されており、Watsonのコグニティブ技術が存分に生かされた実現プロジェクトである。

なぜできるのか?

言葉の意図を理解する

人間の使う言葉は文脈やニュアンスによって意味を変えるため、語彙と文法に加え、意味ネットワークや含意関係認識などの自然言語処理テクニックを駆使して言葉の裏にある意図を理解する。

自律的な学びを繰り返す

大規模なデータを統計処理することで相関を見つけ、自ら仮説を作り出し、推論・予測・学習を行い進化していく。

相性のいい分野

医療
救急外来に搬送された高熱の患者の重症度の選別と、高い精度での疾患予測を行うトリアージ・コグニティブ・システム
法曹
コグニティブコンピューティングを備えたAI裁判官
マーケティング
ビッグデータ分析で顧客に対する最適なアプローチを導き出し、マーケティングの効率化を促進
教育
生徒個人にパーソナライズされたティーチングアシスタント
ライフスタイル
外出時に服装のコーディネートを提案してくれる音声アシスタント

知財情報

主な知財ホルダー: International Business Machines (IBM) Corporation

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
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知財ハンター

小髙 充弘 Mitsuhiro Odaka
Media Artist / Konel Inc.

1991年生、神戸出身。学士(医学,理学)。広義の「感染」に関するメディアアート制作を行う。病原体、行動、モラル等が、複雑に跨ぎ合うつながり構造の上を拡散・極性化する現象に関心がある。その関心の下で、データによる予測可能性を超えた逸脱的な意味付けの内部に人間が人間たる規定要因を探したり、疎外された逸脱主体と他との交流の回復がありうるのか探ったりしている。