No. 133 風で思考を拡張する「ゆらぎかべ」

TOU(トウ)

TOU(トウ)は部屋の外を流れる風に反応し、空間に自然のゆらぎをもたらす壁。ただ風の流れに心をゆだねて「ボーッと」できる時間を生み出し、人の思考を拡張するランダム家電として開発された。将来的には居住空間などに導入され、屋内にいながら屋外の自然現象に思いを馳せることを通じたウェルビーイングへの効果測定も検討されている。現在は「日本橋地下実験場」に設置してあり、希望すれば内覧も可能である。

なにがすごいのか?

  • 普段は普通の壁として機能し、屋外に風が吹くと連動して壁自体がゆらぐ
  • 人工的な演出ではなく、自然界のゆらぎを室内に持ち込むことができる
  • 自然のゆらぎがもたらす、脳の活性化など身体への効果が期待される

なぜ生まれたのか?

娯楽、広告、ニュース、チャット、スケジュール、、、自らスマートフォンにアクセスするまでもなく、空間内のあらゆるデバイスが意味を持った情報を絶え間なくはたらきかけてくる時代が到来しつつある。人々の脳は時間の隙間をつくらず効率的に思考を回転させられるため、便利かもしれないが、目的に一直線の思考は目的を超えることはないとも考えられる。予想もできないひらめきに出会うためには「脳の弛緩」が必要だと考え、「風のゆらぎ」という不規則な自然現象を、情報過多な空間に注入することで、ふとした時に「ボーッと」抽象的な思いにふけるきっかけの提供を目的として開発された。

妄想プロジェクト

実家の風でやすらぐ宇宙生活

宇宙には地球上で感じるような風が存在しない。また日照時間や重力など、地球の当たり前がことごとく異なるため、人間がバイオリズムを保っていくための工夫が課題となっている。
将来、宇宙空間に人間が居住することになったとき、地球の風をリアルに肌で感じることができたら宇宙でのウェルビーイングに役立つと考えられる。さらに、自分が生まれ育った家の壁と風の状態をリアルタイムに共有することで、離れて暮らす家族とのVR通話などのコミュニケーションにおけるリアリティを一段と高めることができるだろう。

なぜできるのか?

表面の特殊素材

金属を混ぜ込んだ特殊素材を独自開発し、なびきやすい形状に加工したことで、壁のような大きな表面積でも表面の凹凸がウェーブとして連鎖し、「風」を表現している。

電磁石による波表現

バックパネルに、770 x 770mmあたり64個の電磁石を等間隔に配置し、ON/OFFにより特殊素材を引き寄せ・引き離す仕組みを実装している。

電磁石を制御するソフトウェア

配置された電磁石をリアルタイムに制御するために、ひとつひとつの電磁石をグリッドで管理する機能を実装している。様々なデータ形式を入力信号として取り扱うことができる。(例:映像をインプットとして扱い、電磁石をON/OFFと連動させる)

相性のいい分野

医療
衛生上、窓が開けられない病室に自然のゆらぎを提供
宇宙
風のない宇宙空間で、バイオリズムを守るために地球の風データを転送
オフィス・リモートワーク
窓のない会議室や閉鎖的なリモートワーク環境でも思考を解放的にするため、風によってナチュラルな空間を演出
住宅・商業施設
マンションの高層階やビルの地下空間など、窓が開けられない環境に自然のゆらぎを提供
コミュニケーション
遠距離で暮らす家族の部屋から室内の空気のゆらぎを転送し、感覚をリアルタイムに共有

知財情報

主な知財ホルダー: パナソニック株式会社

TOUは自己拡張(Augmentation)をテーマとした研究開発組織「Aug Lab」にて、パナソニックとKonelの共同研究プロジェクトとして制作されました。
詳しくはAug Labの公式サイトをご参照ください。

知財ハンター

荒井 亮 Ryo Arai
Producer / Konel Inc.

1977年東京都荒川区生まれ。立教大学社会学部産業関係学科卒。クリエイティブ会社にてライブ配信事業のプロデューサーとして番組の企画制作、各種アライアンスやチームビルディングを担当。その後、Konelに所属し「日本橋地下実験場」を中心としたプロジェクトに関わる。聴覚を拡張するプロダクト『PlayEar』の開発や、インターネット世代のポップカルチャー、メディアアート、ペットテック領域に関心がある。