No. 200 化粧の常識を塗り替える、一本の糸で紡がれた「人工皮膚」形成技術

ファインファイバー技術 (Fine Fiber Technology)

ファインファイバー技術は、非常に細い繊維(ファインファイバー、極細繊維)を肌に直接吹き付けることで、層状に積み重なった薄膜を肌表面に作る「人工皮膚」形成技術。花王の培った不織布の極細紡糸技術を応用して開発された。従来の不織布より通気性に優れ、化粧水などの液体を吸い取って保持したり、膜全体に液体を均一に広げたりする特長が強化されている。将来的にはスキンケアだけでなく創傷治癒、傷を隠すカバーメイキング、壊死組織再生など形成外科医療への応用も期待されている。

ファインファイバーを吹き付けて薄い人工皮膚を作る様子。もとは1本の糸が極細繊維となって積み重なる。

なぜできるのか?

蚕が繭を紡ぐように膜を作る「エレクトロスピニング法」

「エレクトロスピニング法」は、プラスに帯電した材料(主にポリマー溶液)をマイナスに帯電した対象物表面に向けて噴射し、ナノファイバー形状へ紡糸する技術。ポリマー溶液はノズルを通して糸状に引き伸ばされながら勢いよく噴き出し、対象物表面で何層にも重なりあっていく。こうして1マイクロメートル以下の極細繊維の膜が形成される。この膜は、膜の縁に向かって薄くなるので肌表面との段差は極めて小さい。そのため剥がれにくく、肌との境目が見えないほど自然に馴染む。

液体をしっかりと染み渡らせる「毛管力」

「毛管力」とは、細い管(毛細管)に液体が浸透して上昇(あるいは下降)する物理現象「毛細管現象」における、管が液体を吸い込む力のこと。
本知財では、繊維同士の隙間が管のような役割を果たすため、重力や上下左右に関係なく液体が均一に行き渡る。化粧品製剤は保持されながらも、繊維同士の隙間からの通気で蒸れが逃がされるので、肌が閉塞しにくい。

相性のいい分野

ファッション
傷跡や入れ墨を隠す人工皮膚
エンターテインメント
皮膚を傷つけるリスクの低い、映画・舞台での役作りや特殊メイキング
医療
薬剤による創傷治癒に伴って皮膚再生が促されるケミカルピーリング
ロボティクス
アンドロイドが身につけられる皮膚

知財情報

主な知財ホルダー:花王株式会社

特開2020-90487:皮膚用被膜

この知財は様々な特許や要素技術が関連しています。
詳細な情報をお求めの場合は、お問い合わせください。

知財ハンター

加藤 なつみ KatoNatsumi
Assistant Producer / Konel Inc.

群馬県富岡市出身。信州大学感性工学科主席卒業、イノベーション教育プログラムi.school修了生。人が持っている感性や想像力を引き出すものづくりを志し、プロダクトからサービスデザインまで、幅広く仲間と活動中。日本文化や美意識、感覚拡張、自然界の仕組みに高い関心がある。


知財ライティング: 都淳朗